ビジネスわかったランド (会社行事)

定例行事

仕事始め
<< 仕事始めの目的 >>

仕事始めとしての行事は、企業によって様々である。朝礼を少し新年らしく飾り付けて簡単に行う会社もあれば、大会議室を式場に整え、全社あげて盛大に行う会社もある。どちらにせよ、昨年からの続きという気持ちにけじめをつけ、新たな気持ちで仕事をスタートさせるためには必要な行事である。
以下が、仕事始めの主な目的である。
・新しい年を迎えたけじめをつける
・年の始めに会社内の全員が一堂に会し、結束を固める
・新年よりの経営方針を発表する
・本年の目標を確認する

<< 事前準備 >>

仕事始めの行事は、新年恒例なので会社の内規に従いながら準備を進めればよい。内規がとくにない場合は慣習を踏まえ、改善すべき点はないかを検討しながら準備する。

(1)準備委員会の設置
イ.準備委員会の役割
準備委員会は、新年を迎えてあわただしい中、スムーズに仕事始めの行事を行うための裏方としての役割をもつ。
ロ.準備委員の選出
会社によって異なるが、総務部から委員を選出する場合もあれば、各部署より1名ずつ選出する場合もある。
ハ.準備委員会のスタート
準備委員会は、1か月前にミーティングを開き、そこで各自の役割分担とスケジュールを決めておく。このとき、新年会の準備委員会との調整をとっておき、ロスのないように配慮する。できれば、年末年始行事実行委員会なるもので一本化すると、より効率のよい準備を進めることができる。

(2)内容の検討と決定
会社の内規や慣習を調べたうえで、検討し決定する。
イ.日程
その年に仕事を始める最初の日に行うのが普通である。
ロ.開始時刻
開始時刻は、通常の業務開始時刻に設定する場合と、それより少し遅めに設定する場合とがある。
ハ.所要時間
行事内容や規模によって異なるが、通常30分~1時間の間で設定する。仕事始めにおいて経営方針の発表をしたり、表彰式を兼ねたりすることがあるが、その場合は長めの時間を予定しておいたほうがよい。
ニ.会場
全社的に行う場合がほとんどだが、その場合、全社員が集合できる広い場所を選ぶ。たとえば、大会議場、講堂や体育館などである。なお、人数と会場の広さを考慮しながら立席にするか全員着席にするかを決める。
●ワンポイントアドバイス
大会議場や講堂がない場合
仕事始めの年始式は、宴会を開いて親睦を深める目的の新年会とは違って、会社の関係者が一同に会し、新年の仕事をスタートさせるに当たって、引き締まった気分を盛り上げることにある。したがって、大会議室がなければ、食堂のテーブルを寄せてスペースをつくってもよいし、それもなければ会社のロビーなど広い所を利用して全員が集まり、意思統一を図ればよい。
ホ.プログラム
社長の挨拶と乾杯だけのごく簡単なものにするか、昨年の成績発表や表彰式のような行事を盛り込むかを決める。
●ワンポイントアドバイス
仕事始めの年始式の規模は?
年始会は、新年会とは違う。式のあと通常の業務に入ることもあるので、あまりおおげさにはしない。乾杯はするが、それはあくまでも形式としての飲酒であり、式後の業務に差障りのないように注意する.また、会社の新年に当たっての経営方針や経営者の抱負を発表することはあっても、それ以外に余興をしたりアトラクションを催したりはしない。
ヘ.予算
会場を新年らしく整えるためにどのくらいの費用をかけるか。たとえば、盆栽の松を飾ったり豪華な花を活けたりすると、簡単な式でも費用がかかる。
また、仕事始めの式はあまり宴会の要素を伴わないのが通常だが、軽く乾杯をすることもあるので、その飲食費も予算に入れる必要がある。
ト.スタッフ
会場の設営などは、通常、仕事納めのときに同時に仕事始めの準備をしておいて新年を迎えるが、細かい飾付けや進行において、スタッフを決めておくことが不可欠。

(3)スケジュール表の作成と業務分担
イ.スケジュール表の作成
スケジュールを立てるときのポイントは、年始であるということを忘れず、年内にできる準備はできるだけ年内に済ませておくことである。また、年内に準備するにせよ年が明けてから準備するにせよ、誰もが忙しいから、協力を得るためには余裕をもったスケジュールを立てることである。
ロ.スケジュール表
スケジュール表のモデルとしては、次のようなものが考えられる。

ハ.役割分担
前日までに業務内容をピックアップし、分担を決める。そのためには、必ず以下のような役割分担表を作成し、前年中に段取りを細かく決めておく。


(4)予算設定のポイントと予算表
イ.予算設定のポイント
予算枠があらかじめ決められている場合は、その範囲内に抑えられるように検討する。必要項目をピックアップし、それぞれの数量と単価を細かく調べる。必ず参加者の人数を計算に入れながら予算を設定する。
ロ.予算表
予算表の作成に当たっては、予算と実績を対比して書き込めるものがよい。終了後の経理処理を円滑に進めることができるからである。

(5)関係者への連絡等とモデル案内文
仕事始めの年始式は、正月休みの休み明けの朝に行われるのが通常である。したがって、年始式に関する連絡等は、年内、正月休みに入る前までに全員に行きわたっていなければならない。
イ.連絡の方法
全社的な掲示板や各部署の連絡板に、年始式の案内を貼り出す。また、仕事納めのときに、口頭でも確認をする。
また、開始時刻について、念を押しておく。新年早々、会社の行事に遅刻してくるようでは、新しい年の始まりとしては情けないからである。とくに、通常の勤務開始時刻と異なる場合は注意する。
●ワンポイントアドバイス
遅刻の常習犯等に対する注意
平常の勤務態度において、遅刻や欠席の多い社員には、せめて仕事始めの日くらいは遅刻してくることのないよう、前もって注意しておく。
また、社長や幹部が遅刻することは、もってのほかである。社員に対して示しがつかないうえ、仕事始めとしてのけじめをつけにくくなる。
ロ.案内文の回付
仕事始めは、基本的に社内行事として行うことが多いので、案内文は部署単位の回覧にするのもよい。モデル案内文としては、次のようなものがある。


<< 当日の運営 >>

当日、準備スタッフは、始まる1時間前には会場に集合する。会場の設営は、年末の仕事納めの行事を行ったときに、ある程度は準備できているが、門松や生花のチェックをしなければならない。

(1)式次第と宴席のポイント
イ.式次第の例
・開式の辞
・社長訓示
・所信表明
・決意表明
・乾杯
・万歳三唱
・閉会の辞
ロ.宴席のポイント
・宴席は、場所に余裕があれば着席で、なければ起立の状態でもよい
・飲食物は、ごく簡単なものでよい
・乾杯は元気よく 
・開始時間、終了時間は厳守する
・後始末は手際よく
●ワンポイントアドバイス
当日の服装
一般的には、社長はじめ幹部は礼服で、社員は平服で、というケースが多い。統一できていれば、平服でも礼服でもよい。
女子社員が晴れ着を着て年始式に出席すれば、新年らしく華やかでよいが、これを強制すると、男女差別の問題にも発展しかねない。あくまで、希望者のみとするか、いっそのこと全社的に廃止する方向にもっていくのが望ましい。

(2)式、宴席の運営チェックリスト
イ.新年のスタートらしく厳粛なムードで行う。年始式は、新年会のような宴会中心の行事ではない。あくまで、年の初めに仕事をスタートさせるに当たり、気持ちを引き締め、新たにやる気を盛り立てるための行事である。あまり打ち解けたムードでは、けじめがつかない。
ロ.社長や専務の挨拶は、これから1年の経営方針を含め、社員の士気を高める内容であることが望ましい。ただし、あまり長くなり過ぎては、新年早々、社員が疲れてしまい式後の業務に差し支える。
□会場の設営は大丈夫か
□マイク、音響機器は手配済みか
□カメラマンとの打合せは万全か
□新年の経営方針スローガンは用意しているか
□式次第は用意しているか
□挨拶をお願いする人に依頼は済んでいるか
□乾杯の音頭をとる人は決まっているか
□万歳三唱をする人は決まっているか
□乾杯用飲み物、グラスは手配しているか

(3)会場レイアウトと飾付けモデル
新年会の会場は、華やかさのなかにもおごそかな雰囲気がおのずと感じられるものであることが望ましい。
また、正月を期して永年勤続などの表彰式を兼ねることもある。このような形式をとる場合、該当社員の位置や舞台の配置などにも気を配る。通常は、演卓の前で賞状を渡すことが多い。
仕事始め会場レイアウトモデル


<< 後始末とフォローアップ >>

(1)会場整理
会のために設営した幕、机や演台などをはずしたり移動して、元どおりに戻す。その日の午後より業務に入ることもあるので、業務に支障が生じないように整える。

(2)金銭処理
会の運営上支出した場合は、領収書を取りまとめ、費用の精算をする。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

年始式に当たって支出した費用総額の報告書を総括担当者に提出する。社内におけるセレモニーと社員に供与される飲食費は、福利厚生費に該当する。

著者
橋口 寿人(経営評論家)