ビジネスわかったランド (会社行事)

社内啓発

小集団活動発表会
<< 小集団活動発表会の目的 >>

(1)小集団活動とは
社内の様々な小組織が、会社という大集団を成り立たせるための活動を日常的に展開している。特定の事業目的を完遂するために業務命令で組織された各種委員会やプロジェクト・チームなども、それに当たるものであろう。ただ、一般的に「小集団」という場合、その構成メンバーのモラールアップ(士気向上)を期し、それによって業務に何らかの貢献をするような、自発的・自律的な社員の目的集団を意味している。
業務命令ではなく、自発的かつ自律的な活動とはいっても、効果的に日常業務に即しての改善・向上を主目的としてモチベーション(動機づけ)が喚起される以上、会社側としてその努力を多とし、大いに支援して当然である。
スポーツやレクリエーション、趣味といったグループは、ここでいう「小集団」には含めない。それらは福利厚生施策の対象にはなり得ても、業務への直接的貢献につながるとは解釈しがたいからである。

(2)QC、TQC活動の意味
モラールの高い企業の社内では、しばしば自発的な小集団として私的研究グループや自己啓発のサークルなどが発生する。これらも何らかの形で業務への貢献につながることを考えれば、広義には「小集団」活動に含めていいかもしれない。
しかし、最も一般的で、よく実施されている小集団活動といえば、QC活動である。アメリカから入ってきた Quality Control(品質管理)の考え方と手法は、わが国固有の雇用制度と企業内組合の存在や社員の資質の高さと人間関係の潤沢さという企業状況・風土のなかで、今日すっかり「QCサークル活動」として定着した。具体的には、製品品質、作業能率、生産コスト、安全衛生、モラール、職場環境など職場の身近なテーマについて、自分たちの力で問題解決に取り組み、その改善、向上を目指すというものである。
当初、多くは「よい物を早く安くつくろう」のスローガンのもとで、メーカー、生産部門の現場社員によって熱心なQCサークル活動が展開されたが、やがて企画・設計、購買、販売、営業、事務などの業務改善にも有効と認められ、非メーカー・非生産部門でも、QCサークル活動が取り入れられるようになった。
今日では、高度な技術力や機械化により生産性・品質のレベルが高まって、品質管理(QC)というより、広く工程管理から原料・資材仕入、マーケティング、営業などの管理も含めた経営方針・管理目的にのっとった全社的(トータル)なQC、つまりTQCの発想が新しく登場している。
現場での「不良品を出さない」品質管理に対し、TQCは方針管理ともいわれ、仕事の進め方のうえで「もっとよい業務管理の仕方はないか」を追求する。もっとも、活動に携わる当事者レベルが職制、管理職中心に移行しただけで、運営手法そのものはQCサークルと大差ない。
いずれにしても、「自分たちのテーマを、自分たちの力で問題解決する」取組みであることが小集団活動のポイントである。立ち上がりは、会社側からの動機づけ、働きかけでスタートする場合もあろうが、その本分は、自発性、自律性を喚起し、自主性に依拠する性質の活動であることを忘れてはならない。

(3)成果を発表することのねらい
社内のどこか特定の職場・部署で行われている小集団活動、とりわけQC、TQC活動による業務改善の努力についての情報(活動ぶり)を全社的に知らせる場をもち、しかるべく評価する機会を設けることは、大いに有意義なことである。
まず、発表する当人にとって、次のようなモラールアップが期待できる。
イ.普段から地道に、しかし着実に行っている努力が脚光を浴びることで、晴れ舞台で認められたという自己確信につながる。
ロ.多くの人に理解してもらうために、改めて普段の活動を整理してまとめ、表現方法・内容を考えることで、自ずと能力の向上とコミュニケーション技術を磨くことにつながる。
ハ.曲がりなりにも他人(上司、幹部)の評価を受けることで、仕事、能力、努力が認められるという自己実現にもつながる。
また、他の社員にとっても啓発されるところが多く、全社的な波及効果も大きい。たとえば、次のような活性化効果をもたらす。
イ.他の成功事例を見聞きすることで自らの活動と照らし合わせ、その運営のやり方、ポイント、コツを習得する好機となる。
ロ.翻って、自分たちの活動を推進するための士気を改めて鼓舞する機会ともなる。
ハ.発表する側、見聞きする側、双方が比較検討し、自己反省もして、その相乗効果によって、小集団活動そのものが次なるステップへとレベルアップする節目となる。
ニ.もちろん会社にとっても、業務・職場の改善、人材発見・能力啓発、そして業績向上の効果が期待できる。
ただ、この発表大会は、会社側の行事として一切を仕切る姿勢で臨んではならない。また、恩着せがましく代行してやる、という態度も避けるべきだ。それをやれば会社側の覚えがメデタイから小集団活動をやる、というムードを醸成することとなり、多くの社員にとって「会社に管理されている」との反発を招きこそすれ、やる気を鼓舞することにはつながらないからである。
あくまでも自発的、自律的にやっていることを歓迎し、その自主性を尊重、激励するのがねらいであるから、会社としてその全社的発表大会の機会を保証し、黒子として(実質的には、さておき)実務をお手伝いしましょう、という立場でなければならない。

<< 事前準備 >>

(1)規模と参加対象
QCサークルは、「全社的品質管理活動の一環として、自己啓発・相互啓発をしながら、QC手法を活用して、職場の管理・改善を、継続的に、全員参加で行う(自主的な小グループ)」(財団法人日本科学技術連盟)と定義されている。
そうであるならば、その発表の場には、実際に発表する立場であれ、あいにく選抜されず今回は聴衆としてであれ、基本的に全社員が参加するのが好ましい。単なる私的な活動ではなく、全社的に認知された活動であることを示す証しとなるからだ。
「現場クラスの活動、業務でしかない」と会社幹部が出席を渋るようではいけない。「会社の業務の原点であるから……」と、むしろ社長自ら率先して発表大会に臨席してこそ、活性化につながる。
そうした位置づけで、以下のように日程、内容、運営等の検討をする。

(2)事務局としての総務部(課)
自発的なはずの私的研究グループや自己啓発サークルでも、事の性格上、人事・教育担当の部署がそれらを積極的にサポートする。では、ここでいう小集団活動のような場合はどうか。
どんな集団でも、会議やコミュニケーションの場でリーダーシップを発揮する人物が自ずと生まれる。ただ、問題は、活動を縁の下で支え、事務的にスムーズに遂行させる人がいるかどうかだ。全員参加を旨とする活動であっても、やはりその役目を誰かが担わなければならない。普通は、職場の長ないしその補佐役が買って出るか、または現場長の指名で現場社員の誰かが事務を担当することになる。
ところが、全社的にQC、TQC活動が広がりをみせてくると、目先の作業に追われがちな現場長クラスの近視眼的な目ではなく、大所高所からの判断なり方向づけの必要が出てくる。ここに「品質管理(小集団活動)担当者」が必要になってきた理由がある。会社の幹部クラスが責任者となり、そのもとで専任者をおく企業も少なくない。
その小集団活動担当者は、まさに総務的な機能を有し、普段の活動に当たって、もちろん現場の小集団・サークルのリーダーやメンバーとも相談しながら庶務・事務を肩代わりする。つまり総務部は、小集団活動、QC活動の事務局でもあり得る。それも、縁の下とはいえ、節目節目での重要な舵取り役を担う。とくに全社的に展開する発表大会のような機会には、前面に出て切り盛りすべきだろう。むしろ、会社をあげて支援する姿勢を明確に社員に伝える好機でもある。
発表大会を行うに当たっては、小集団活動担当者かまたは総務部(事務局)が、準備委員会の役割を果たすことになる。現場の小集団・サークルのリーダーの意向を尊重しつつ、しかし会社側の熱意を示す意味でも、準備委員会の仕事は総務部主導のほうが得策であろう。
ただし、この点は会社と現場との関係しだいで臨機応変に、準備委員会に現場クラスの人間を加えるなどの配慮が必要な場合もあろう。

(3)スケジュールの決定
小集団活動(QCサークル活動)の全社的な発表大会については、少なくとも半年ぐらい前から日程を決定し、その開催の全社的な周知徹底を図るとともに、準備をしておくべきである。その理由は、以下のとおりである。
イ.あらかじめ発表大会という目標を掲げ、ゴールに向けての活動推進をそれとなく働きかけることで、小集団・サークルの活動そのもののインセンティブにもなる。
ロ.全社的な発表大会にもっていく前に各事業場でその予選発表会をもつのなら、現場業務の都合を勘案しながら随時に実施し、かつその段階での審査・選別を行うための期間をみておきたい。
ハ.多用な社長以下トップの日程を、場合によっては強く説得してでも必ず空けてもらうために、しかるべき余裕をみたい。
小集団活動発表会のスケジュールモデル


(4)実施内容の検討と告知
イ.開催日の決定と告知
他の会社行事とも調整をして全社発表大会の開催日が決定したら、さかのぼって各事業場発表会の実施の是非と開催日を事業場担当長・職場長と打ち合わせ、各小集団・サークルに実施要領を通知する。その場合は、職制を通じ、激励とともに会社として全面的にバックアップする旨を伝える。
併せて、社内にポスターを掲示して全社的に告知する。告知内容は、次のとおり。
・開催行事名
・発表大会の開催日時および会場
・参加資格(発表応募者および大会参列者に分けて)
・審査の基準
・表彰規定
・各事業場発表会の実施期間
当初の告知では、最低限何らかのキャッチフレーズを冠した「QCサークル全社発表大会開催」といった行事名と開催日時、審査基準を明記し、審査・表彰する旨と、各事業場発表会の開催要旨を併記して、追って詳細を告知することにしてもよい。
ロ.参加資格
小集団活動は、会社としても、すべての社員が自発的に行ってくれることを期待し、推奨しているものである。つまり、全社員に参加の門戸が開かれている。しかしながら発表大会では、現実に全活動についての報告を聞く時間的余裕がない。
そこで、次のようなある程度の枠を設けざるを得ない。
a.少なくとも会社として認知した(登録した)サークルで、現在も活動中であること
b.その活動はメンバー全員によって営まれていること
これだけでは、健全に営まれるサークルすべてに合致するかもしれない。その場合には、次のような枠を加える。
c.今回の発表者は、過去に発表した経験のない者、ないしは経験の少ない者であること
このc.は、人前で自分の意見を発表することに長けた常連を起用することを避け、小集団活動本来の全員参加、機会均等という趣旨を徹底するためである。
同様にb.は、特定の人による活動ではなく、メンバー全員が納得して選んだテーマに、一致協力して取り組んだものであることをねらったものだ。
ハ.審査基準
発表大会というのは、単に発表の機会を与える場というだけではない。やはり評価を伴って、社員の仕事に取り組むレベルを高揚させることが主眼である。問題は何を評価するかである。考え方としては、内容本位の評価、発表技術(方法・態度)の評価、活動の進め方の評価という、3段階の評価がある。
・内容の評価……もちろん評価の主要な対象は、その発表内容にある。テーマの選定、取組み(調査→解析→対策)の工夫、成果といったそれぞれの面から評価点を下す。実際には、その企業が置かれている状況、直面している課題次第で評価度に軽重が生じるのは仕方がない。発表大会のために設置する評価委員会に上申する参考程度に留まるものもあろう。なお、各事業場で予選発表会を実施する場合、本大会と同一の基準で審査するのはもちろんである。
・発表技術の評価……よく「発表の巧拙は問わない。内容次第だ」という考え方がある。しかし、自分たちの活動内容を多くの人たちに理解させるために、言葉・用語や文章構成等の表現方法を考え、表現技術を工夫するのは、大いに評価してよい(図表などの視覚表現のためにパネル、スライド、OHP、ビデオなどの準備をするなど)。小集団活動の重要な柱であるメンバーの能力アップ、モラールアップの点で多大な成果を生んでいることにほかならないからだ。
そこで、こうした表現に工夫の跡がみられ、また持ち時間をうまく利用して、熱意あふれる発表をした場合には、「特別賞」といった表彰があっていい。
・活動の進め方の評価……メンバー全員が一致協力し、分担し合い、ともに苦労を乗り切って小集団・サークル活動に励んだ様子がうかがえる場合にも、「努力賞」を与えたい。
評価対象となる項目

ニ.評価委員会の設置
もちろん「審査員」の長には、社長に就いてもらうのがベストである。以下、小集団活動の推進を職掌とする経営幹部(担当役員、総務部長など)や、各事業場長などにその任に当たってもらう。審査の公平を期すために、事業場・部門からは、平均的かつ横断的に人選する。審査員の人数は、当日の審査の迅速性からみて5人くらい、多くて7人程度までが好ましい。
外部の有識者を招請して権威づけをするケースを見かけるが、仮に会社の業務や事情・実態に精通している人であっても、あまり好ましいことではない。社員たちは、「自分たちの(会社の)仕事について関心をもって改善テーマを定め、自分たちのやり方で」やってきたことに、直接の利害を共有する立場の上司やトップから評価されることを期待しているのである。
ホ.表彰規定
小集団活動は、何といっても会社にとっての社員の貢献を意味する。したがって、その努力に対してはぜひ表彰したい。会社としての謝意を表わす意味から、多くなく少なくない金銭で報いたほうがよい。もちろんグループに対しての表彰であり、たとえば慰労会や祝賀の宴の一部に当てるようにしてメンバー全員が享受できるだけの金額にする。
いうまでもなく社員個々の栄誉を讃えて賞品を与えるという性質のものではない。個人的な記念品を考えるよりも、むしろ表彰状と、上位グループにカップ、トロフィー、楯などを授与し、それを職場に飾って、次のチャンスまでのモラールの支えとし、励みにしてもらったほうがよい。参加件数が多ければ敢闘賞、奨励賞などを設けるなどして、表彰機会を増やす。
表彰規定モデル

ヘ.各事業場発表会
全社的な発表大会で社内の全活動を網羅する時間的余裕がない場合はもちろん、できるだけ多くの社員たちの小集団活動への参加を促す意味でも、事前に各事業場において予選発表会をもつことで直接参加の機会を増やすのが好ましい。
その各事業場発表会での評価・審査は、当該事業場長と各部門長に、できれば総務部長、人事部長クラスが加わって行うのが望ましい。経営トップが出るまでもない。
ただし、参加資格や審査基準、そして以下のような発表要領は、本大会と同一とする。

(5)発表の要領
最初の告知の段階ですでに発表の要領を伝達できればそれに越したことはないが、その詳細については、たとえば以下のように取り決め、追って別途文書にして通知し周知徹底させるほうが有効であろう。
なお、この発表の要領は、本大会、各事業場発表会とも共通のものとしなければならない。
イ.発表事項
a.案件名、サークル名、発表者名
b.案件(テーマ)を取り上げた理由、動機
c.現状の調査・把握
d.問題の分析・解析
e.改善の対策・処方
f.改善の効果・成果
g.今後の課題・計画
ロ.発表方法と手段
とくにc、d、e、fについては、工程図記号・表、特性要因図などを大いに使って、掛け図やスライド、OHP、ビデオなどの手段を自由に利用してよい、とすすめる。
ハ.発表時間
発表件数にもよるが、1案件につき発表15分、質疑応答5分の目安で、計20分程度が適当であろう。そのように取り決め、予行演習して時間厳守を励行するように強く指導する。
実際の発表会では、発表時間の経過(残り5分、3分など)を合図するものとしておく。

(6)直前準備と案内
イ.発表案件の概要整理
全社規模での発表大会となると、他の部署・現場の社員には親しみにくいテーマの発表もあるに違いない。そこで事前に発表者またはグループから、案件名(テーマ)とともに、その発表内容の概要を400字詰原稿用紙2枚程度にまとめて提出させる。できれば、当該事業場長からの推薦ポイントを添えてもらったほうがよい。
大会当日、冒頭でこれをもとに事務局から聴衆に発表の概略を説明するのが親切である。また、社内に大会開催の詳細を案内する際にも、発表のテーマとポイントを簡潔に紹介できる。
ロ.会場の確保
原則として全社員出席を前提にするので、社員規模にもよるが、講堂、体育館、大会議室などを確保する。
ハ.発表大会への参集呼びかけ
趣旨からして全社員参加を前提とした行事だが、発表の機会を与えられたグループのメンバーならいざしらず、聴衆として、テーマに関心の薄い場合は参加に気のすすまない社員もいよう。
そこで、開催の時間帯を通常の就業時間内にする一方、職制を通して積極的に働きかけ、非常要員を除く全社員の参加を呼びかける必要がある。
また、早くから社内報、ポスター、看板・掲示板でしばしば案内し、当日近くなったら業務通達文書にも付記し、当日には社内放送で案内するなど、あらゆる機会と手段を利用して参加を促すようにする。
ニ.プログラム作成


<< 当日の運営 >>

(1)会場設営と備品用意
以下に、会場レイアウトモデルをあげておく。
小集団活動発表会会場レイアウトモデル

(注)発表会終了後、OHPを片付け、発表台を中央に置いて、審査結果の発表、講評および表彰式の際の演台とする。
会場設営のポイントは、次のような点である。
イ.パネル、スライド・OHPスクリーン、黒板、ビデオ画面等がそれぞれ聴衆から見やすいように十分注意する。発表台も、聴衆の視線を遮ることのない位置とし、かつ発表者がいずれをも見渡せる場所を設定すること。
ロ.発表者以外に、補足説明者や視覚表現手段・装置等の操作者の席も、演壇のしかるべき位置に複数個を用意しておく。必要なら、発表者のマイク以外に補足説明用のコードレス・マイクを、司会者用以外にも備えておく。
ハ.次回の発表者席を前列隅に用意する。念のために、発表準備のための別室を用意しておくのもよい。
ニ.審査員席は、会社幹部クラスだからといってまるで主役のように前列を占めてしまうようには設けない。真ん中に集め、最前列端の席にまで聴衆が入ることができるようにする。社員の参加意識を高める演出である。なお、審査員席はデスク付きとし、評点記入用紙とメモ用紙、筆記具を備えておく。
ホ.聴衆用の席は、予想される数よりいくらか少なめに用意する。空席があるのはよくない。少々あふれたら補助椅子で対応し、多くなれば立ち見としたほうが、むしろ盛り上がった雰囲気になる。なお、業務の都合上どうしても入退場があると思われるので、出入口を後部に設営する。
ヘ.その他、発表に必要な用具を事前に発表者のグループと打ち合わせて、疎漏のないようにする。電源等の設備についても十分にチェックしておく。

(2)大会の進行
司会進行の腕の見せどころは、発表時間を厳守させることである。そのためには、事前に発表者へ時間厳守が最優先すべきことを十分に伝え、時間内(たとえば15分)に発表が終わるようリハーサルを重ねておいてもらう。時間を大幅にオーバーするのは評点に影響する旨を伝えておくのも便法。
本番で、仮に予定しておいた質疑応答時間にまで発表が食い込んだら、質疑応答なしに、次の発表へと進行する。質疑応答時間は、そうしたアローワンスのための時間でもある。質疑応答を含めた発表者の持ち時間が超過しそうだったら、「せっかくですが…」と割り込んで打切りにするのも司会の役目である。

(3)審査および評点集計
あまり克明に記入しなくて済むよう、わかりやすいフォーマットで採点用紙を作成しておく。また、その集計のための用紙も同様にあらかじめ作成しておく。なお、最終審査を別室で行う場合には、評点の集計用紙は壁などに貼って各審査員の評点をマジックペンなどで大きく記入して集計できるような大きさとする。
発表の数が多くて大会の時間が長い場合には、どうしても時間によって評点にバラツキが出るので、中間の休憩時間や最終段階で調整をする時間を確保するようにし、配点のバランスをとる。

(4)審査結果の発表
大会は、審査の時間をはさんで結果の発表まで続く。審査結果は、小集団活動担当の役員・幹部から発表してもらう。決して余興のコンクールというわけではないが、やはり「ワクワク、ドキドキ…」というぐらいの演出があっていい。すなわち、下位表彰から順に最後に最優秀賞を発表する。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)アンケートの実施
発表大会の出席者(聴衆および発表者グループ)には、必ず、感想、問題点、課題を問うアンケート調査を実施し、今後の発表大会運営の参考資料にするとともに、各小集団・サークル活動のための指針とする。

(2)社内への広報
現実には、発表大会に出席できなかった社員がいるのは致し方ない。その参加できなかった社員に、キメ細かく発表会の様子を伝えることは、発表会実施と同等程度に重要な事務局の仕事である。単に結果をポスター、掲示板等で表示するだけでは物足りない。社内報などは格好のバックアップの場だ。
その場合、発表内容に加えて、その集団・サークルの日頃の活動状況やメンバーの取組みぶりなど、時間の限られた発表会では舌足らずになった部分の情報を紹介する。

(3)よりモラールアップを期して
発表会そのものは社内の行事である。しかし、その優秀な活動について社外にも知らせることは、社内の活動をより活性化するのに役立つ。
すなわち、他社の事例を調ベ、その情報を社内の小集団・サークルに提供し、一方、自社事情を他に流して交流を促すことにより、社内のグループのインセンティブを促進することができる。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

QC、TQCなどをはじめとする小集団活動発表大会などに支出した費用は、その開催された場所や会場が妥当なものであれば、交際費等とされることはなく、会議費として損金処理することができる。
なお、小集団活動で成果をあげたグループに対して金一封を支給した場合、会社は雑費として損金処理ができ、支給を受けたグループ員各自の一時所得となる。したがって、会社としては、源泉徴収の必要はない。

著者
橋口 寿人(経営評論家)