ビジネスわかったランド (会社行事)

社内啓発

社内提案制度発表会
<< 社内提案制度発表会の目的 >>

(1)提案制度とは
提案制度とは、社内から業務の改善提案を募る制度であり、社員の自主的な業務改善意欲を促す制度である。
業務に貢献する改善提案を期待するという点では、小集団活動と大差ない。しかし、提案制度は、社員の自発的、自律的なグループ活動で相互に啓発し合うことを前提にした小集団活動と違って、会社が社員個々に直接呼びかけるところに特徴がある。そして、会社の一員であるという立場から業務のあり方を改善提案していこうとの意識を喚起する制度である。

(2)改善提案の受け皿
提案制度が会社の呼びかけで行われる以上、その評価の受け皿を明確に用意しておかなければならない。小集団活動と同様、この提案制度も、わが国固有の雇用制度による社員の会社への帰属意識と彼らの資質とモラールの高さに依拠したものである。
社員の会社への信頼ないしは忠誠に確実に応えるためには、「提案→受付→評価・表彰」というルールが確立していなければならない。提案しても、梨のつぶてであったり、また会社側の応対が不十分であったりすると、やがて社員がそっぽを向き、提案が尻すぼみになるのは自明の理である。たとえば、目安箱の制度にならって提案を常時受け付ける体制になっているのが理想的である。その意味で、「提案箱」を常設している例も少なくない。
しかし、いつでも受け付ける体制というのは、現実問題として、日常のルーティン業務を縫っての処理事務が非常に煩雑になる。そこで、定期的に提案を受け付けるような規定を設ける。その告知を通して提案制度そのものを社内に周知徹底できるというメリットもある。
好ましいのは、提案制度にのっとった応募提案を経営陣が評価・審査して、その結果を定期的に発表・表彰する機会を設けることである。つまり、社員の提案には厚く報いる会社側の姿勢を明確にするわけである。
毎月1回、あらかじめ1日とか15日というふうに決めて「発表会」の機会をもち、定期的に提案を受理する体制をつくるべきであろう。

(3)発表会を開催するメリット
社員(従業員、臨時社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイト)すべてからの、いかなる改善提案についても門戸を開放しているのが、この制度である。応募(参加)資格も応募規格も一切なく、個人または複数でも提案できる。管理職以上を除くかどうかはその企業の事情による。
実際には、社員レベルでの提案が中心となろう。発表会を開催し表彰することで、次のような効果が期待できる。
イ.発表会に取り上げられ、表彰されれば、本人の満足感も大きく、業務の改善や向上を目指す気になり、モラールが高まる。
ロ.アイデア程度のような提案でも会社に受け付けてもらえる受け皿のあることが確認でき、自分も出してみようかという気持ちを起こさせる。
ハ.内容次第では評価され、晴れ舞台で褒められることを目の当たりにして、「自分も」という機運が盛り上がり、全体として士気が高揚する。
ニ.会社にとって、思わぬ社員の能力やセンスが発見でき、また人材発掘のチャンスともなり、併せて社内の活性化と業務の改善・向上を促す好機ともなる。

<< 事前準備 >>

(1)提案推進組織・事務局
組織図モデル

イ.推進組織と構成員
提案制度は、会社をあげての活動であり、その推進のための最高責任者は当然、社長ないしはそれに準じた経営幹部である。そのもとで提案活動推進委員会を設ける。この委員会は、実際には職制とかなり重なる場合もあろうが、機能としては別個の組織とする。
ロ.現場世話役
提案活動を積極的に推進する現場の人間を委員会のメンバーとし、現場での世話役ないしは推進リーダーとしておくことも大切である。この役は、もちろん率先垂範できる者が最適だが、モラールの高い人間を育てる意味から、1年ごとに交替で新たなやる気のある社員を当てる方法もよい。
ハ.審査委員会との関連
提案活動推進委員会は、受理した提案を評価する審査委員会とオーバーラップするものとなる。
ニ.事務局
日常のルーティン業務に時間が割かれることの多い委員に代わって提案活動推進委員会の実務を担当する事務局を設ける必要があるが、これは実質的に総務部が担うことになろう。
その仕事は、実際には提案制度の計画・立案、実施・運営、収集・集計、審査、発表会開催、表彰、事後処理など多岐にわたることになる。しかし、あくまでも裏方としての役を務める。

(2)改善提案の募集
イ.どのような内容でも受け付ける
基本的には「会社のいかなる業務についても」「その改善・向上を念頭に置いた」提案なら、どのような内容でも受け付けることを原則とする。
単なる苦情、批判、希望ないしは抽象的な意見のようなものについては、本来は建設的でないと敬遠したいところであるが、個人的な誹謗中傷や労働協約ないしは組合活動にかかわる問題以外なら、門戸を開放しておくような度量をもちたい。
最初から提案事項・要領に枠をはめ過ぎると、提案しようかという気持ちをそいでしまうことにもなりかねないからである。
ロ.メモ提案でよい
当初はメモ提案であってもかまわない。「気軽に提案する」ことに意味がある。提案慣れするに従って上級提案へと導く手立てを用意し、指導する心づもりさえしておけばよい。
ハ.改善提案書
メモ程度の提案であってもよいとするなら、件名と提案者名・所属、骨子メモを、会社のレターペーパーかレポート用紙に記して提出するのでもよい。
しかし、定型の改善提案書をあらかじめ作成し、現場の推進委員に渡しておき、誰でもその用紙をもらって記入できるようにしておけば、統一したサイズで提案を集めることができ、整理がしやすい。
改善提案書モデル

ニ.上級の提案
上級の提案用については、別に用紙を作成しておくのもよい。もしくは、改善提案書を表紙として、あとは同じサイズのレポート用紙や添付資料をつける形にすればよい。
ホ.提案箱の設置
制度としては定期的に発表会を開催し、それに合わせて募集するようになっていても、前述したように提案はいつでも受け付ける体制が望ましい。所属長または職場の推進委員に提出するか、あるいは「提案箱」に投函するようにしてもよい。
提案箱を設置する場合、提案促進のためのポスターの下に、目立つように置く。もちろん、数多くの提案用紙が入る十分な大きさでなければならない。
ヘ.提案活動のPR
a.経営トップは、年度の初めや会社の中心的な記念行事の場で提案制度の導入を会社の年度方針として強く打ち出す。その際に、提案制度発表会準備委員(事務局)から、推進に当たっての具体的な実施要領や仕組みを詳しく説明する。
b.そのうえで、まず提案活動についての標語を社員から公募する。ポスター案を募集するのも1つの方法である。決定したら標語付きのポスターを社内の目立つ場所に数多く掲示する。
c.社内報などでしばしば提案の募集を呼びかける。また、漫画やイラスト入りの提案手引書やパンフレットを作成して、ときどき社員に配付し、提案の仕方を指導するとともに、制度をPRし、参加を呼びかける。

(3)提案の評価・審査
イ.提案の受理
建前は定期的に受理するものであるが、所属長、現場の推進リーダーは社員からの提案をいつでも受け付けるべきである。また、提案箱にはいつでも投函できるようにしておく。
それらを所属長が目を通して、現場段階での初期評価を加えておく。発表会間際にまとめて評価するのでは、煩雑で、評価自体も雑になりかねないからである。
現場長の評価のフィルターを通してもらった提案を、次は事務局として整理する。その際に「提案台帳」をつけることを忘れないように。
ロ.評価期間
“提案は熱いうちに審査する”に限る。せっかくの社員のやる気をいつまでも眠らせて、冷水をかけるようではいけない。事務局段階で正式に受理してから2、3週間で評価を終わらせるようにしたい。遅くとも1か月以内を限度とする。
ハ.評価の目安
提案は、多岐にわたるものと思われる。もちろん、全社的に共通する職場改善や企業組織にかかわる普遍的な問題提起もあるだろうが、多くは所属する職場固有の課題に対する提案に偏りがちになる。なかには、鋭い指摘もあれば、ほんの小さな現場レベルで工夫すれば導入できるアイデアもあろう。
しかし、個別・固有の提案だからといって、軽んずることなく、提案があった事実は疎漏なく事務局に報告してもらうようにし、提案台帳に個人別に記録しておいて、内容の審査とは別に提案の多さも評価の対象に加える。
ただ、提案内容の評価については、共通性、普遍性の如何、波及効果の期待可能性などが判断の目安となるので、まず現場長の段階で、全社的なレベルにもち上げるに足りるかどうかの評価を加える。
なお、現場長として提案を受け付ける際に、採用の是非を評価する以前に受理できない提案もある。それは、労働協約や組合レベルの内容であったり、誹謗中傷の類いである。また受理しても、全社レベルにもち上げられない提案も多々あろう。
事務局に上奏しないケースでも、現場レベルで即対応できるものは「採用」であり、採用案件については必ず委員会(事務局)に報告して報奨の対象とする。
問題は門前払い同然に不採用とせざるを得ないケースや、全社レベルにもち上げずに不採用とする提案である。これら採用しなかった案件の処理については後述する。
●ワンポイントアドバイス
現場長の評価の基準は?
全社レベルに持ち上げる提案かどうかは、次のような点から判断する。
・それが業務の効率化につながるか
・それを何らかの形で実現することにより、業績アップが期待できそうか
・社内・職場内の活性化につながりそうか
ニ.審査と発表
各事業場の長による評価を経て事務局に上がってきた案件について、審査委員会で書類審査をする。小集団活動の発表会と違って改善提案の発表会は、だいたい月1回のペースで催されることになるので、毎回、候補案件のすべての内容を発表してもらうのは時間的にムリがある。
発表会は、事前に書類審査してクローズアップされた優秀な提案についてのPRの場と位置づける。
ホ.審査基準
提案制度を極めて重視し、その評価を重要な経営課題として、社長以下、経営幹部・管理職が詳細に審査・採点する会社も少なくない。しかし、ここでは、とりあえず簡便な方法で審査し慎重な検討・研究が必要と思われる案件については、別途に対応することにする。
毎月の審査は、複雑にせず、単純明快なものにする。まずは、以下のような項目で即断即決する。
・目のつけどころが新規(独創的)であるか
・他の職場・部署に応用(流用、参考)できるか
・実行に移して効果が期待できそうか
・改善に必要な労力や費用と成果のバランスがとれそうか
なお、即断即決できそうもなく、たとえば実効性や経済性についてさらに深くデータを測定し、改めて再検討のうえ慎重な再審査が必要と思われる案件があった場合には、当該月の等級表彰の対象からは外し、提案者を加えたプロジェクト・チームを結成するなどしてフォローアップ課題とする。本人には、そのような処理をすることを了解してもらうか、あるいは当該月の審査で「特別賞」とし、評価の区切りをつけておいてもよい。
また、その内容が評価の対象にいま一歩届かないような提案でも、その提案頻度が高ければ報奨の対象とする。たとえば、1年間を通して累積数が多い者を特別表彰する。
審査採点用紙モデル(該当欄に○印記入)

ヘ.表彰規定
提案制度は、社員にとって身近なものでなければならない。したがって、定例で提案の受理、発表・表彰を行うわけであるが、その趣旨からして受賞者は多ければ多いほどよい。
報奨は、ことさら大げさにすることはないが、方法は様々なものが考えられる。
・表彰状と賞金を与える
・表彰状と記念品を与える
・感謝状と金一封を与える
これらのスタイルの違いは、いわば会社として提案制度をどうみているかの差である。つまり、提案制度を通して会社に貢献してくれていることを感謝するなら、上位表彰者は社長室に招き入れるなり、その家族ともども昼食会やホームパーティーに招待して、感謝状と金一封を渡すという考え方もある。また、提案制度も業務の一環と位置づけるなら、表彰状だけ、ないしは上位者には若干の記念品を添えるだけ、という考え方もできる。
一般的には、なにがしかの金銭での報奨が喜ばれるようだ。あるいはランクによって金額レベルを決めておき、現金か品物かを選ばせる方法もある。上位表彰者には一定の賞金を出し、下位表彰者には図書券や文具券のような金券を支給する方法、あるいはスタンプ制にして、数多く提案してそれがたまれば賞品と交換できるという方式もある。また、表彰状は、ランクによりその大きさを変えるのもよい。市販の表彰状でもよいが、心のこもった文面にする。


(4)発表会直前の準備
イ.会場の準備
全社員の前で盛大に優秀提案の発表と表彰を行うのは、当人の名誉の点からも、また他の社員の提案制度に向けての積極的な気持ちを喚起する意味でも好ましい。しかし、毎月全社員を一堂に集めるのは、その段取り・手配・マンネリ化の点からもムリがある。
そこで、提案採用者の全員か、またはそれがムリならば参加賞より上の褒賞該当者のみで発表会を行うようにし、その規模に応じた広さの会場にする。とくに優秀な提案を発表する場合は、全社員の前で盛大に行うようにしたい。
ロ.参加の呼びかけ
もちろんできるだけ多くの社員の参加が好ましい。そこで発表会の数日前から、上位表彰案件の提案件名ないしは内容概略を列挙した案内ポスターを社内随所に掲示し、また各事業場の朝礼などで職制を通して口頭で参加を呼びかける。
ハ.発表者との打合せ
書類審査ですでに上位表彰者が確定しているので、その旨を事前に通知しておくことになる。その通知をする際、発表会での発表時間枠を定めておく。たとえば1人15分で、発表そのものが10分、質疑応答のための時間を最大5分まで確保することを伝え、リハーサルをしておくよう依頼する。また、できるだけ掛け図やパネルに要点を記し、それを口頭で補足説明するような形式で進める。
ニ.式次第の作成
以下に式次第モデルを示す。
・開会の辞(提案制度担当者=事務局)
・提案状況および審査結果報告(提案制度担当責任者)
・優秀提案発表
・表彰(社長賞は社長より授与)
(社長賞以下の表彰は担当役員より授与。事業場長賞は各事業場にて)
・講評(挨拶を兼ねて社長より)
・閉会の辞(担当者)

<< 当日の運営 >>

(1)会場の設営
イ.出席者の規模に応じて会場を設定するが、大または小会議室か社員食堂などを会場とし、隣接して小宴ができる程度のパーティー会場を用意する。
ロ.必要ならば、OHPなど視覚に訴える装置・用具を用意しておく。また、そうした機器・装置の操作者を確保しておく。できるだけ職場の協力者を手配したいが、不可能なら事務局(総務部)の社員を充当することになる。
ハ.改善提案の発表では、発表者が主役である。発表者の席は、会場の前方に設ける。発表者以外の提案採用者=表彰者の席は、発表者の席の後ろに並ベ、待機させる。幹部および管理職の席は、発表者および提案採用者のすぐ隣に配置するのがよい。
提案制度発表会(パーティー)会場レイアウトモデル


(2)発表会の進行
イ.開会挨拶
開会の冒頭に提案制度担当部長から、今期(月)の総提案件数、うち採用に至らなかったものを除く表彰対象件数、なかでも業務効率化に役立ちそうな提案何件、業績アップにつながりそうな提案何件かについてそれぞれ全社的な審査の結果、優秀な提案内容を発表してもらい、それ以外の各賞も含め表彰する旨、概略を紹介してもらう。
ロ.司会の役目
発表・進行をスムーズに行うには、発表者の発表時間を予定どおり区切るようにする必要がある。提案発表は比較的短時間に設定しているので、たとえば10分枠のうち中間の5分、そして残り3分、1分と、あらかじめ打ち合わせたメモや呼び鈴で発表者に知らせる。質疑応答時間の5分に食い込んだら、適宜、質疑応答を省略するなり短縮して、時間の帳尻を合わせる。

(3)表彰の仕方
上位表彰者は、事前のポスターや発表などにより、すでに聴衆には明らかになっているので、直ちに表彰に移る。
イ.最優秀者(社長賞)から順に上位→下位へと表彰すればよい。
ロ.もちろん、社長自ら発表会に出席して賞状等を授与するのがベストである。あらかじめスケジュールを空けてもらうよう働きかけておく。やむを得ず欠席するのは仕方ないが、その際には、社長に準じた経営幹部の出席を確保し、表彰を代行してもらう。
ハ.当日発表した上位表彰者以下の各賞の表彰は、次席の役員等に交替して行ってもらう。
ニ.各事業場および各職場ごとの賞については、当該の長が代表して表彰を受ける。
ホ.参加賞の数が多い場合は、表彰式での授与は省略する。時間的に余裕があれば司会者がその名前をすべて紹介したいが、件数が多ければ印刷物にして出席者に渡し、所属長を通じて職場の全員を前に賞品等を授与する。

(4)懇親の場をもつ
表彰後には社長(または幹部)から講評を加えてもらうが、表彰式の後に、ぜひとも受賞者との懇親パーティーを開きたい。この場にも、社長以下の幹部が出席して、社員との懇談の機会をもつ。
受賞者と会社トップとのコミュニケーションを深める意味から人数を限定する方向で臨む。したがって、パーティー出席者から、参加賞該当者は除く。できれば適量のアルコール類も供することのできる軽い夕食パーティーにする。
会場のレイアウトや運営は、ことさら形式的にすることはない。立食パーティーによるざっくばらんなもので、短時間でよい。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)社内への広報
発表提案と表彰の概要は、すでにポスターなどで告知済みである。しかし、優秀提案の内容を重ねて社員に知らせ、かつ優秀賞以外の各賞の詳細を全社員に公表することは、もちろん当人たちにとって名誉なことで励みになるとともに他の社員にとっても制度への参加に取り残されないようにしようという気運を醸成する効果がある。今後の提案制度推進を促すために欠かせないことである。
広報の方法としては、社内報を積極的に利用すると同時に、数が多ければ「○月の提案集」という形で簡単な小冊子を刊行し、配付するのもよい。その場合には、もちろん審査員や管理職の講評を付記する。評価を知らせるのは、今後の提案をする際の指針となることをねらってである。

(2)フォローアップ
提案制度は、その発表と表彰をすれば事足れり、という性質のものではない。社員が何らかの提案をするというのは、もちろん実際に改善・向上を期待しての行為である。仕事の実際の場面に自分たちの提案が反映されなければ、そのうち誰も見向きしなくなる。
提案をその場限りのものにせず、確実に経営課題として実施に移されるよう、制度の実行事務局として経営トップ以下、関係各部署に常に具申していく責任がある。

(3)事後処理
提案が直ちに実施できるものばかりとは限らない。時間もかかるだろうし、また目には見えない迂遠な形での反映ということもあって、なかなか提案に即応するというふうには社員の目に映らない場合もある。その点を、職制を通してよく社員に理解してもらうよう努めるとともに、提案制度推進委員会事務局としても、一方で「にもかかわらず提案をし続ける」という気持ちに社員を仕向けていく必要がある。
また、提案台帳に表彰案件を特記し、講評メモを備考に加え、事業場・職場ごとの提案数(推移を含む)の集計データを添えてフィードバックしておく。そうすることによって、各事業場・職場の提案制度へのモラールを高めることになる。
ただし、その場合、提案の数を競う、つまり、ただ参加賞のみを目指すように仕向ける愚は避けるべきである。

(4)不採用提案の処理
提案制度の推進に当たっては、いったん萌芽した社員の意欲を摘まないよう、細心の配慮をしなければならない。その意味では、現場長の段階で門前払いをした不採用の提案や、全社レベルにまで上げなかった提案の、提案者への説明をどうするか考えておかねばならない。否定的な用語は避け、相手が納得する説明をしてもらう。
つまり、「これこれこうだったからダメだった」ではなく、「この点をこうしたら、君の言いたいことが伝わり、役に立つ提案になるんだが……」という言い方である。相手の励みになるニュアンスを伝えて労をねぎらう気持ちで接することが大切である。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

社員提案制度に基づき支払われる賞金・品は社員への給与等となり、次の所得区分に応じて所得税が課せられる。
イ.給与所得となるもの……その提案等がその者の通常職務の範囲内のものであるとき
ロ.一時所得となるもの……その提案等がその者の通常職務の範囲外のものであるとき
ハ.雑所得になるもの……通常職務外の提案等の実施後の業績に応じて継続的に支払われるものであるとき
なお、一時所得の所得金額は、総収入金額から支出経費を差し引き、さらに一時所得の特別控除額を差し引いて算出する。この総所得金額は、一時所得の金額の2分の1に相当する金額を、他の所得と総合することになる。
雑所得も収入金額から必要経費を差し引いて総合課税されるが、1か所からの給与等の金額が1,500万円以下で給与所得以外の雑所得等が20万円以下の人は、確定申告の必要がない。

著者
橋口 寿人(経営評論家)