ビジネスわかったランド (会社行事)

人事関係

新卒学生のための会社説明会
<< 会社説明会の目的 >>

企業は毎年、膨大な費用と時間をかけて、新卒者の採用を行っている。その最大の狙いは、毎年若い人を採用することによって、各年代層に常に先輩後輩がいるという状況をつくり出し、健全な企業体質の維持を図ることにある。
景気のいいときには多数採用し、景気の悪いときには採用を中止するといったことでは、将来的にみた場合、組織がいびつなものとなり、健全な発展は期待できない。したがって、一定数の新卒採用は、好不況にかかわらず続ける必要がある。
企業が行う会社説明会には、学校側が企業を呼んで行うものや公共職業安定所が企業を集めて行うものなどがあるが、ここでは、企業が独自で自社あるいは会場等を借りて行う「会社説明会」について述べる。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
人事担当者を中心に、役員、各部門の責任者を加えて、新卒者のための「会社説明会準備委員会」を設置する。

(2)採用計画を決定し、募集要項を作成
各部門の長から、業務計画に基づく増員・補充人員の要求を提出させ、採用職種と採用人員を決定する。そして、次の項目を確定して、募集要項を作成する。
・勤務条件(基本給、諸手当、勤務時間、休日、賞与、昇給、その他)
・応募・選考要項(会社説明会の日時、応募書類、受付期間、選考方法、選考日時、その他)
・求人数(文科・理科系別、学部別)
その際、とくに留意しなければならないのは、男女雇用機会均等法(均等法)に抵触しないことである。
ちなみに、均等法はその第7条(募集および採用)で、「事業主は、労働者の募集及び採用について、女子に対して男子と均等な機会を与えるように努めなければならない」と規定している。
セールスと技術者は男子に限って採用するといった企業も散見されるが、女子であるという理由だけで採用しないのは、均等法の下では好ましくない。したがって、次の2点に留意する必要がある。
イ.募集・採用区分ごとに女子を排除しないこと
たとえば、次のような点がこれに該当する。
・一定の職種について男子のみを募集・採用する
・大卒社員について男子のみを募集・採用する
・募集・採用に当たって男子を表わす職種の名称を使う
ロ.同一の募集・採用区分の男子と比較して、女子に不利な条件をつけないこと
たとえば、次のような点がこれに該当する。
・応募できる年齢を男女で差をつける
・女子についてのみ未婚を条件にする
・女子についてのみ自宅通勤を条件とする
・一定の事情にある女子を不利に取り扱う表現を使う

(3)求人対象校の選定
採用計画および過去の実績に基づき、求人の対象とする学校を決める。同時に、一般公募か学校推薦か、研究室推薦かなども明確にする。

(4)求人票の提出
学校側が求人申込みの受理を開始する期日と、その求人票を学生に対して掲示する期日を確認し、期限までに求人票を提出する。

(5)学校訪問の実施
前年の就職活動に対するお礼をかねて、本年の就職活動の依頼に大学の就職部を訪問する。
一般的な訪問時期は4月~6月だが、この期間はラッシュ状態となる。したがって、就職部の人とよく話し合いたいという場合には、それとは別に、前年の就職活動が終了した11月、12月、1月、2月といった時期に、足を運んでおくことである。
また、人事担当者だけでなく、ここ2~3年の間に入社した若手社員を各自の出身大学へ挨拶に行かせるとともに、企業情報等を伝えさせるのも効果的である。

(6)会社説明会の規模・内容の決定
イ.内容の検討
内容の検討に際しては、下記の就職協定協議会の規程(企業等主催の説明会実施方法)を遵守する。
a.説明会は、個別企業、経済団体、業種団体等の主催または複数企業の共催とする
b.説明会は、説明および質疑応答形式を基本とする
c.学生の職業選択の機会均等の趣旨に沿うよう、平等・公平な取扱いをする
・自由入場方式とする
・説明会の日時・場所等を公表する
d.個別面接、名簿の提出等の採用にわたる行為は一切行わない
e.主催者は、学生の自由な就職活動の機会を妨害するような拘束をしない
ロ.日時の検討
会社説明会の日取りは、前年までの結果や競合各社の状況を勘案して、学生が最も集まりやすい日時を選ぶ必要がある。
学生側の緊張を和らげ、ゆったりと説明会を開催するには、平日よりも土・日曜日のほうが効果的である。
開催時間は、就職協定によって2時間以内と決められている。したがって、開始時刻は、午前10時あるいは午後1時とするのが一般的である。
ハ.会場の検討
会場は、できれば自社の施設で行ったほうがよい。学生に自社をアピールする好機だからである。
自社の施設に収容できないほどの来場が見込める場合は、交通の便がよく、なるべく自社に近い会場を確保する。
ニ.話す内容の検討
学生は、各種の就職情報誌などを通じて、資本金、従業員数、売上高といったことについては事前に勉強してきている。したがって説明会では、同業他社と比較しながら自社の特色をアピールする方向で、話すべき内容を検討する。
また、社外から著名なコンサルタント等を招き、「よい会社の選び方」といったテーマで講演を行うのも、学生を集めるうえで効果的である。
ホ.ビデオ、映画・スライドの製作
昨今の若者に対しては、仕事の内容や会社の雰囲気、福利厚生施設等について映像で紹介したほうが理解されやすい。したがって、何らかの形で映像による説明を取り入れるようにしたい。
ヘ.飾付けの検討
“映像人間”“視覚人間”などと称される若者たちにアピールするよう、製品サンプルや製造工程のパネル、執務風景や社内行事などの写真、社内報などを展示したり、コンピュータによる簡単な性格診断テストを実施するなど、学生が興味をもつような演出を心掛ける。
ト.配付物の検討
何を手渡すか検討し、少なくとも以下のようなものを揃えて角封筒か紙袋に入れて、あらかじめ学生の座る机の上に置いておく。
・会社案内
・自社製品のサンプル
・募集要項
・会社説明会以降の採用選考から採用決定までのスケジュール表
チ.分科会の実施 
全体説明の後、職種別に分科会を開く。また、個別面談が禁止されていることを考慮して、小人数(4~5名)のグループに分けて質問を受ける「質問コーナー」を設けるのも1つの方法である。
この場合、会場を確保しておくことと各分科会の責任者を決めておくことが不可欠である。
また、各分科会や質問コーナーでの話に食違いや不公平が生じないように考慮しなければならない。
リ.アンケートの実施
出席者に対するフォローと今後の採用活動の資料とするために、出席者に次のような内容のアンケートを実施する。
・この説明会は、どのようにして知りましたか?
・説明会には、誰と来ましたか?
・説明会でよかったことは、どんなことですか?
・説明会でよくなかったことは、どんなことですか?
・当社について、どう思いましたか?
・選考試験は、受験しますか?
アンケートの際、氏名、年齢、住所、学校・学部名を書かせる。
ヌ.告知方法の検討
会社説明会を開催する旨を広告する方法(新聞にするか雑誌にするか、新聞にするならどの新聞にするか、雑誌にするならどの雑誌がよいか等)を検討し、決定する。

(7)当日のスケジュール表の作成と業務分担
会社説明会当日のスケジュールを決め、それぞれの業務分担を確認して、一覧表にしておくとよい。
各社それぞれの事情によって内容が異なるのは当然だが、一般的な例を示すと次のようになる。


(8)会社説明会予算の設定
設定項目は次のとおり。
・会場に関する費用
・配付物に関する費用
・外部の講師や司会者に関する費用
・接待(コーヒー代、弁当代)に関する費用
・説明者出張費(本社・支社からの出張)
・広告費(新聞、雑誌等)

<< 当日の運営 >>

(1)会社説明会プログラムと説明内容の決定
説明会当日のプログラムを作成し、何を説明するかを決める。
イ.会社説明会プログラムモデル
・受付
・開会の言葉
・役員または人事部長の挨拶
・映像による会社案内
・会社概要の説明
・募集要項の説明
・質疑応答
・分科会、グループ質問コーナー
・アンケートの記入・回収
・閉会の言葉
ロ.説明内容のモデル
・会社の業務内容、職種
・会社のポリシー・展望と将来性
・当社ではどういう人物を望んでいるか
・保養施設等の福利厚生と各種社内制度
・休日・休暇
・残業、賃金の上昇率
・初任給の内訳、賞与の実績
・ここ数年の採用実績と配属部署
・本年の採用予定人員と勤務地
・選考の方法と日時
・選考から採用決定までのスケジュール
・質疑応答

(2)説明会運営のチェックリスト
□説明会の案内(求人票、新聞広告)はできているか
□会場は手配済みか
□ビデオ、映画・スライド等の準備はできているか
□配付物の準備はできているか
□社外司会者・講師の手配は済んでいるか
□社内の説明担当者の手配は済んでいるか
□会場の準備・運営のための人員の手配はできているか
□アンケートの手配はできているか
口会場の準備は万全か
□受付・接待の担当者は決まっているか
□緊急時の対策は決まっているか
□社外司会者・講師の接待に粗相はないか
□会場の後片付けは万全か

(3)会場レイアウトと飾付けモデル
説明会会場レイアウトモデル


<< 説明会後のフォロー >>

(1)検討会の開催
説明会に携わった担当者全員による検討会議を開き、参加者の反応や質疑応答の傾向と要点、参加態度等を分析する。

(2)説明会後のチェックリスト
主なチェック項目は次のとおり。
□参加者を大学・学部別に集計したか
□参加者の在籍している大学就職部への礼状を発送したか
□アンケート等の分析により、事前にアタックする人物を決めたか
□参加者全員に礼状を発送したか
□他社の説明会の状況を確認したか

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

(1)会社説明会に関する支出費用項目
・説明会資料の作成料
・会場賃借料
・新聞広告費
・社外の人を講師や司会者として招いた場合の謝礼金
・説明会出席者へのコーヒー代
・担当者出張費

(2)上記項目の経理処理と税務取扱い
イ.説明会資料の作成料
説明会のスケジュールや内容等を書いた資料代、案内状代は「通信費」。
ロ.会場賃借料
会場として、ホテルや貸ホール、貸会議室等を借りたときは「会場・会議費」。
ハ.新聞広告費(新聞や一般雑誌、求人雑誌への求人広告掲載料)
一般的には「求人宣伝費」または「広告宣伝費」として処理する。ただし、求人雑誌の場合、申込み時に半額を支払ったり、全額を支払ったりしても、学生へ配付するのが翌期になることもある。こうしたときは、当期は前払い計上をし、翌期に広告宣伝費へ振り替える。
ニ.社外の人を講師や司会者として招いた場合の謝礼金
「報酬謝礼」として取り扱い、10%の源泉徴収が必要。講演は案内状に明記しておき、講師・司会者から領収証をもらう。なお、昼食やコーヒーを出した場合は、参加者の人数に含めて問題はない。
ホ.説明会出席者へのコーヒー代
コーヒー代程度なら、人数を明記した領収証で「会議費」として処理。
ヘ.担当者出張費
業務として出張した社員には、就業規則に規定しているような実績相当額であれば給与として課税されず、「採用関連費」扱いとする。

著者
橋口 寿人(経営評論家)