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人事関係

成績優秀社員表彰
<< 成績優秀社員表彰の目的 >>

成績優秀社員表彰とは、会社業務に関連して顕著な功績を上げた社員を表彰するものである。優秀な人材を適宜表彰することで社員に励みを与え、一層の労働意欲の増進を図るのが目的である。表彰の対象となるのは、勤務成績優秀者だけでなく、発明などにより会社の業績向上に著しく貢献した者、あるいは業務に関連した技能コンテストに参加して優秀な成績を収めた者なども含まれる。災害発生時に優れた処理を行った者も同様である。
表彰は、定期的に行われるものと、不定期にそのつど行うものとがある。このうち不定期に行うものは事前に予測できない災害処理時の貢献などで、時機を逸しないためにもスピーディな表彰が必要になる。定期表彰は年1度の創立記念日に行われるのが一般的で、勤務成績優秀者などを表彰する。
社員表彰は、上手に運用すればさらに社員のやる気を引き出すことができるが、その際に気をつけることは、明確な表彰基準をつくっておくことである。これがないと、人選の段になって選ぶ側の主観が入り込むのではないかと、社員に余計な疑念を抱かせ、社内に悪い影響を及ぼさないとも限らない。公平感を出すためにも、表彰規定をぜひ作成しておくべきである。

<< 事前準備 >>

(1)表彰委員会の設置
まず、表彰委員会を設置する。表彰委員会とは総務・人事セクションの部長クラス数人によって構成されるもので、社長が任命する。表彰に該当すると判断した場合、まず所属長が表彰申請書に必要事項を書き込み、参考資料とともに総務部長に提出する。申請を受け取った総務部長は関係者と意見調整を行い、表彰に適当な場合、表彰委員会へ稟議書を回す。表彰委員会で表彰が可決されると、最終的に社長のところに書類が回り、決定となる。

(2)規模・内容の検討と決定
成績優秀社員表彰の対象となるのは社員全員または事業場単位で、
イ.事業上有益な発明、考案、改良または工夫などにより、業績の発展に大きく寄与した場合
ロ.国家的、社会的に優れた功績、善行を行い、会社の名誉を高めた場合
ハ.市場開拓、売上大幅アップなどにより業績の発展に著しく貢献した場合
ニ.災害、事故、盗難などの発生を未然に防ぎ、また、損害を最小限度に抑える功績があった場合
ホ.業務に関連した技能コンテストに参加し、優れた成績を収めた場合
ヘ.勤務成績が優秀で他の社員の模範となるにふさわしい場合
などが、表彰規定に盛り込まれる一般的な表彰の理由である。しかし、ここに当てはまらないものでも功労があった場合には臨機応変に表彰すべきである。
また表彰は、社長賞と部長・議長賞とに分かれる。部長・議長賞は、業務・社会・安全衛生関係で顕著な功績を残した社員に部長・議長名で贈られる。社長賞とは、きわめて顕著な功績を残した社員に社長名で贈られるものである。
部長・議長賞には、次のようなものがある。
・業績貢献部長賞
・提案審査会議議長賞
・工業所有権評価会議議長褒賞
・社会的篤行部長賞
・中央安全衛生会議議長賞
社長賞には、個人賞として、次のようなものがある。
・業績貢献社長賞
・社会的篤行社長賞
・特別功労賞
・永年勤続社員表彰(5.永年勤続社員表彰参照)
なお、事業場対象の賞として、次のようなものがある。
・提案優良事業場社長賞
・安全衛生管理優良事業場社長賞
・技能コンテスト成績優秀事業場社長賞
●ワンポイントアドバイス
表彰規定・基準とは?
表彰規定・基準は、あらかじめ明文化されたものをつくっておく。そうすることで受賞の基準がはっきりし、あとでトラブルにならずに済む。規定・基準は、作成したら必ず社員に公表して周知徹底を図っておく。
表彰規定に盛込む項目は、(1)表彰の目的、(2)表彰の対象範囲、(1)表彰日、(1)表彰の理由、(1)表彰の方法、(1)表彰規定の発効日などである。

成績優秀社員表彰の種類


表彰までの手続きの流れ

(注)表彰委員会は、賞罰委員会と兼任になる。

(3)表彰スケジュール
表彰は、随時実施するものと、特定の日に実施するものとに分かれる。特定の日とは、創立記念日、○○の日などである。一般的には、提案賞やQC活動賞などは随時、毎朝の朝礼時などに行うケースが多く見受けられ、発明賞は発明の日、安全関連の賞は安全週間、衛生週間など特定日に表彰することが多いようである。
また、創立記念日に表彰されるものは原則的に社長表彰となるが、これは永年勤続社員表彰)、成績優秀社員賞、部長・議長表彰のなかでもとくに顕著なものが該当する。たとえば、社員がある発明をして、その貢献が会社の業績に大きくプラスとなった場合、部長表彰のほかに社長表彰で取り上げることになる。
社長表彰になるまでの経過は、部長・議長表彰に選ばれたもののうちからとくに顕著なものが部長会議にかけられ可決されたものが、最終段階の表彰委員会で最終決定を受けるという流れになる。

(4)予算設定のポイント
表彰とともに記念の金品が支給されるが、現金のみとしているところも多い。表彰の種類などによっても違うが、おおむね3社に2社は現金を贈っているようである。額は全員一律のところと、業績を加味して幅をつけているところの2通りがある。
また、現金に記念品をプラスしたり、旅行をプレゼントしたりする企業もある。このような表彰の副賞は年々デラックスになっている。
ここでは、表彰の中心となる提案、功労、発明に対する報奨金の相場についてみてみることにする。
・提案……製造業での実施が高い表彰だが、多くの実施企業では、金額にランク付けをしている。業務効率化を重視するためか、提案表彰に対する金額は高く、最高ランクで20万~30万円を支給している企業もある。反面、低ランクの表彰ではガクンと落ち、数百円というところもある。平均では最高ランク5万円弱、最低ランク2,000円弱というのが相場となっているようである。また、一律支給の企業ではだいたい1万~2万円というところである。
・功労……比較的現金の支給が少ない表彰で、記念品のみを与える企業も多い。現金を支給する場合でも一律支給の企業がほとんどで、その場合、平均額は1万円前後。ランク付けする企業では、上の平均が5万円、下が1万5,000円といったところである。
・発明……提案と同じく製造業での実施率が高い。現金支給する会社も多く、金額も大きい。特許、実用新案などに分類して金額を決めているケースもみられ、感謝というより報奨金としての意味合いが強いようである。支給額は1万~7万円といったところである。

<< 当日の運営 >>

(1)式次第
表彰式は、創立記念式典など祝賀行事の際に一緒に行われることが多いので、表彰式そのものは簡潔な進行にする。
式次第のモデルは、次のとおり。
・開会の言葉
・社長挨拶
・表彰状・記念品授与
・役員(または社員代表)祝辞
・受賞者代表挨拶
・閉会の言葉(続いて懇親パーティーへ)

(2)会場の設営
社員のみで行う表彰式ならば、当然社内で挙行するが、社外の人を招待する場合は、ホテルや商工会議所など外部の会場を借りて行うのが望ましい。
表彰式会場レイアウトモデル

事前に準備しておくものは、次のとおり。
□表彰式の横看板 
□社旗
□テーブルクロス
□盆栽(もしくは生花)
□式次第
□表彰者用リボン
□表彰状・記念品
□黒漆塗盆
□白手袋
□丸筒
□記念撮影機材
□BGM・放送設備(マイク、アンプなど)



<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

(1)業務に関する改善提案を行った社員に、表彰状を贈り、併せて金一封を支給した場合
原則として所得扱いになる。ただし区分が若干違ってくる。提案が通常職務の範囲内であれば給与所得に、範囲外であれば一時所得になる。所得である以上、所得税が課税される。ただし、一時所得の場合、最高50万円までの特別控除が受けられる。職務の範囲内かそれとも範囲外かを分けるポイントは対象の範囲で、業務の部署を超え、広く社員を対象にする場合には範囲外とみなされる。逆に、ある部署だけを対象に改善提案事項を募った場合は、給与所得課税が適用される。
なお証拠書類として、提案制度の規定、提案内容記録、対象者選定の資料、職務範囲外を証明するもの、受領書、確定申告書の写しなどが必要となる。

(2)社外で篤行を行った社員を会社で表彰し、金一封を贈った場合
篤行や善行といったものは、業務とは別に行われたことなので基本的に給与でなく一時所得として扱われる。そのため、所得税課税については特別控除が受けられる。同じような例として、災害時の功績を表彰して現金を支給する際も、その功績が職務範囲外であれば一時所得扱い、範囲内であれば給与所得とみなされる。証拠書類としては、篤行表彰規定、表彰状の写し、受領書、篤行を証明する書類などが必要である。

(3)販売促進期間内に優秀な売上を記録した社員に対して賞金を支給した場合
ある一定の労働への対価として支払われる性格であるため、給与とみなされ課税される。一般的に、役務提供の対価として社員などが、業務に関連した項目で報酬を受ければ給与所得とみなす。個人ではなくグループに報酬があった場合でも個人への配分額を基に課税される。たとえ、報酬を現金でなく旅行招待のようなものにした場合でも、それが経済的利益に結び付けば、支給額の価格から評価額を割り出し課税されることになる。
ただし、旅行でも全社員を対象とした慰安旅行であれば福利厚生費として扱う。また、販売成績の順位を参考にしながら福利厚生の行事を行うときでも、その中身次第では福利厚生費となる場合もある。
この場合の証拠書類としては、福利厚生行事計画表、通常費用で行事を行ったことを証明する資料、特定の社員だけが対象となっていないことを表す資料、などが必要となる。

(4)発明や提案表彰の際の報奨金、記念金の取扱い
発明の末、特許などを受け、その特許を使うことにより払う代価金額は雑所得扱いになる。
また、特許権、実用新案権、意匠権などを社員が承継して、権利実施の末、対価として支払われるものは譲渡所得扱いになる。
特許登録など以外の社内的な提案・発明に対して報奨金を支払う場合は、職務範囲のものであったかどうかがポイントとなる。通常の職務範囲であれば給与所得となり、職務範囲外であれば一時所得扱いとなる。

著者
橋口 寿人(経営評論家)