使える!ビジネス文書・文例集

哀悼・弔慰状

個人的な立場から書く弔辞
 大山さん、今日ここにあなたのみ霊の前に立ち、こうしてお別れのことばを述べることになろうとは、誰が予想したことでしょうか。いつも慎重で注意深いあなたが、交通事故で亡くなるなどということはあるはずがない、というのが、悲報を受けた私たち誰もが思ったことでした。しかし、それは誤報ではありませんでした。
 大山さん、あなたと私の最初の出会いを覚えていますか。それは大学入試の試験場でした。私の右前の机に坐っていたあなたは、手早く答案をまとめた後、ゆうゆうと残り時間で見直していたのを、私は鮮明に記憶しています。そのとき名乗りあって、幸いに二人とも合格し入学してから今日まで、○○年余りの歳月が過ぎました。
 その間、あなたはいつも同期の者より一歩先にいたように思います。就職してからは、時代の波とともにいち早く流通革新に取り組み、近頃は高度情報通信システムのプロジェクトを推進していたと聞きました。そして、われわれの同期会の世話係を、卒業以来万年幹事でやってくれました。
 酒を愛し人と語ることの好きなあなたのお世話で、われわれの仲間はじつに多くの集まりを持ち心あたたまるおつき合いがありました。他の会合では口に出せないようなことを裏の裏までも、同期の心を許し合った仲間ならば安心して相談し、教えてもらえました。そんな交流を可能にしてくれたのが、あなたの他人には何でもないように見せながら、じつは周到な準備と気くばりの結果でした。
 集まれば大いに飲みました。議論もしました。そして歌うこともありました。そんなことをあなたと一緒にすることは、もうできません。みんなが集まれば、まず酒好きだったあなたに献杯して、あなたの思い出を語ることになるでしょう。そして大きな空白を感じて、いまさらのようにあなたの偉大な存在の事実に思いいたるでしょう。
 あなたが残された、たか子夫人と一郎君のことはどんなにか心残りのことでしょう。お二人のことは、われわれ同期の級友ができる限りのお守りをいたします。それがあなたの献身的な同期会への奉仕に対する、われわれのせめてものお礼と思っております。
 大山さんどうぞ安らかにお眠りください。あなたの面影は私たちの脳裡に、いつまでも鮮明に刻みこまれています。同期生を代表して心からお別れのことばを捧げます。

    年 月 日
○○○大学○学部○学科
     年卒業生代表 川 田  静
著者
矢嶋 弥四郎