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登記・登録事項

登記申請が却下されるとき(登記の受付から完了まで(4))
登記申請が却下されることもある
 
登記申請が却下される主な場合として、以下に記載した事由が定められています。登記申請をするときには、これらの事由に気をつける必要があります。
 
(1) 登記申請がその登記所の管轄に属さないとき
同じ地区でも、登記所が2か所に分かれているところがあります。たとえば神奈川県川崎市の不動産は、川崎と麻生の2か所の登記所が管轄しています。物件が川崎市内だからといって、登記簿の内容を確認しないで川崎の登記所に出しても、申請物件を麻生の登記所が管轄している場合は、申請は却下されます。管轄は事前に調べておきましょう。

(2) 登記申請が登記すべきものでないとき
これには、不動産登記法自体の要請から登記が許されない場合と、実体法上、登記が許されない場合があります。たとえば、前者の例としては入会権や占有権の登記、後者の例としては、同じ不動産に二重に行なう所有権保存登記や地上権設定登記等を挙げることができます。

(3) 申請にかかる登記がすでに登記されているとき

(4) 申請の権限を有しない者の申請によるとき

(5) 申請書(申請情報)が方式に適合しないとき
申請書に、必要な記載事項が記載されていなかったり、申請人や代理人の押印がない場合等です。

(6)
申請書(申請情報)に掲げた不動産または登記の目的である権利の表示が登記簿(登記記録)と抵触するとき

(7)
申請書(申請情報)に掲げた登記義務者の表示が登記簿(登記記録)と符合しないとき
登記簿上の名義人と、登記義務者との表示は一致していなければなりません。これは実務上、重要な点で、住所移転等があって登記簿上の住所と現在の住所が異なるときは、登記を申請する前提として、登記名義人の表示変更・更正登記を行ないます。
ただし、これには例外があって、所有権以外の権利や、仮登記を抹消するときは、登記義務者の表示が登記簿上の表示と違っていても、その変更・更正を証明する書面(住民票等)を添付すれば、そのまま申請することができるものとされています。すぐに抹消する登記だからということで簡易な処理方法を認めたのです。

(8)
申請書(申請情報)に掲げた事項が登記原因証明情報と符合しないとき
登記申請は、登記原因証明情報に記載された事項を登記するために行なうのですから、申請書と登記原因証明情報の記載に食い違いがあれば、登記することができないのは当然です。
ただし、これにも例外があります。抵当権設定登記を申請する際、登記原因証明情報としての抵当権設定契約書に利息制限法所定の利率を超える利息が記載されている場合、これをそのまま登記することはできません。その場合、申請書には制限利率に直した利息を記載すれば、その申請は認められることになっています。

(9) 申請書(申請情報)に必要な添付情報が提供されないとき
登記申請には、登記の種類ごとに一定の添付情報が必要です。その必要な添付情報が提供されていないときは申請が却下されます。印鑑証明書等、有効期間の定めがある書類の期限が切れている場合も、定められた添付情報が提供されていないものとして取り扱われます。

(10) 登録免許税を納付しないとき
登録免許税をまったく納付しない場合はもちろん、税額が不足している場合もこれに該当します。

(11)
表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が、登記官の調査の結果と符合しないとき
これは、表示の登記に関することですが、申請内容と登記官の実地調査の結果が一致しないときは、申請は却下されます。

(12) 事前通知の手続きで所定の期間内に申出がないとき
登記済証や登記識別情報を紛失したため事前通知の手続きで登記申請が行なわれた場合に、通知を発してから国内では2週間、国外では4週間以内に、「登記申請が間違いない」という旨の申出がないときは、申請は却下されます。
 
却下処分に納得できないときは?
 
登記申請書を提出したけれども、申請が却下され、しかも、自分としては却下の理由に納得できないというときもあると思います。却下処分というのは、登記官が行なう行政処分ですから、その処分によって不利益を受けた当事者は、その救済を求めることができます。
却下処分のほか、登記官が行なう処分には、申請の受理、登記の実行等、登記申請手続きに関する処分、登記事項証明書の交付や閲覧等に関する処分もあります。こうした処分に不服な者は、その処分を争うことができます。その方法は以下のとおりです。
 
(1) 審査請求を行なう
審査請求ができる者は、登記官の処分によって、直接、不利益を受ける者にかぎられます。たとえば、登記申請が却下された申請人である登記権利者や、代位登記を申請した債権者は、その登記の却下処分について審査請求をすることができます。
審査請求の手続きは、監督法務局または地方法務局の長を名宛人として、審査請求書を、その処分をした登記官の属する登記所に提出して行ないます。つまり、審査請求書の宛名と提出先は異なるわけです。
審査請求書を受け取った登記官は、審査請求に理由がないと判断したときは、3日以内にその旨の意見をつけて、事件を監督法務局または地方法務局の長に送らなければなりません。反対に、審査請求に理由があると判断したときは、相当の処分をします。

たとえば、登記申請を却下した場合は、その申請どおりの登記を実行します。
もし、本来却下すべきなのに不当に登記をしてしまったというときには、登記官は自分では、その登記を抹消することはできません。このときは、その登記に審査請求がある旨を附記し、その旨を登記上の利害関係人に通知し、同時に審査請求書を受け取った日から3日以内に、監督法務局または地方法務局の長に事件を送付しなければなりません。
こうした手続きによって、審査請求事件の送付を受けた監督法務局または地方法務局の長が、その審査請求に理由があると判断したときは、登記官に相当の処分をすることを命じ、その旨を審査請求人と登記上の利害関係人に通知します。反対に、審査請求に理由がないと判断したなら、請求を棄却します。
 
(2) 行政訴訟を提起する
審査請求に理由がないとして棄却された場合は、その監督法務局または地方法務局の長を被告として、その処分の取消しを求める行政訴訟を提起することができます。行政訴訟は、審査請求の手続きをする前に直接提起することもできます。
登記官の不当処分によって不利益を受けた者は、こうした手続きで、その処分を争うことができるのです。
また、それとは別に、登記官の違法行為によって損害を被った者は、国家賠償法によって、国に対し損害の賠償を請求することもできます。

<登記に不服があるときの行政訴訟>


古山 隆(司法書士)