ビジネスわかったランド (総務・庶務)

登記・登録事項

そのほかの添付情報が求められるとき
第三者の許可等があることを証明する必要があるとき
 
株式会社の代表取締役個人の債務を担保するために、社有地に抵当権を設定することがあります。この場合、会社と代表取締役との間に利害が対立する関係が生じますから、取締役会設置会社であれば取締役会の承認を得ることが会社法上で要求されています。そして、この取締役会の承認を得たことが明記されている取締役会議事録を、抵当権設定登記申請書に添付する必要があります。この場合、取締役会の承認がなければ、抵当権設定契約は効力を生じません。取締役会議事録を添付させることによって、抵当権設定が有効になされたことを審査するわけです。

このように、登記原因について第三者の許可、同意、承諾を必要とする場合には、それを証する書類を添付することが要求されています。第三者の許可、同意、承諾を証する書類は、いま説明した取締役会議事録のほか、農地について所有権移転、地上権設定登記を申請する場合の都道府県知事や農業委員会の許可書、未成年者が所有権移転の当事者になる場合の法定代理人の同意書等があります。
これらの書類を登記申請書に添付する場合は、その書類の真正を確保するために、書類には実印を押し、印鑑証明書を添付する必要があります。
 
利害関係人の承諾書が必要なとき
 
「第三者の承諾書」と「利害関係人の承諾書」はまったく別のものです。利害関係人の承諾書というのは、その登記申請が行なわれると、なんらかの損害を被ることが形式的に登記簿上で明らかな人が、その登記申請を承諾するという内容の書類です。
たとえば、抵当権が1番と2番で設定されている場合に、1番抵当権の利息を上げれば、2番抵当権者は不利益を受けることになります。ですから、この変更登記申請には、2番抵当権者の承諾書を添付します。
また、所有権の仮登記を本登記にする場合、仮登記後に登記された抵当権等の登記は抹消する必要があるので、抵当権者等の承諾書を添付します。
この承諾書にも、作成者の印鑑証明書を添付する必要があります。
少しむずかしくなりましたが、承諾書にも2種類あって、添付書面に含まれているということを覚えておいてください。
 
戸籍謄本、除籍謄本が必要なとき
 
相続登記では、登記申請書の作成自体は特別むずかしくはないのですが、被相続人(亡くなった人)、相続人の戸籍謄本や除籍謄本をすべてそろえるのに多少手間がかかります。
被相続人が、出生から死亡するまでに一度も転籍をしたことがないというケースはほとんどなく、普通、数回は転籍をしているようです。古い戸籍簿は記載自体が不鮮明で、内容を読み取るのにも骨が折れますし、戦災で焼失したり、欠けていたりして戸籍が連続しないこともあります。役所に戸籍簿自体がないため戸籍謄本をそろえられないときには、実務上、ほかに相続人がいない旨の「上申書」を添付しますが、事前に登記所に相談したほうがよいでしょう。

戸籍謄本が必要なケースには、相続登記のほか、未成年者の法定代理人である親権者が登記を申請する場合、婚姻、養子縁組、離婚等で、登記名義人の氏名が変わり、その変更登記を申請する場合等が挙げられます。
戸籍謄本等の有効期間は、親権者の代理権限証明情報として使う場合は、作成後3か月以内という制限があります。しかし、その他の場合は特に制限はありません。
戸籍謄本、除籍謄本は、本籍のある市区町村役場で交付してくれますが、プライバシーの観点から、本人か、家族以外の者には交付されません。ほかの人に取得してもらうためには委任状が必要になります。
 
固定資産評価証明書が必要なとき
 
登記申請に際しては、原則として求める登記の内容に従って一定の登録免許税を納めなければなりません。固定資産評価証明書は、この登録免許税を計算する資料として添付します。
固定資産評価証明書というのは、不動産の固定資産課税台帳の写しのことで、その不動産の価格が記載されています。不動産の価格を基礎に登録免許税が課税される場合は、この価格を不動産の価格として計算することになっています。したがって、固定資産評価証明書を添付するのは、不動産の価格が登録免許税の基準になる所有権移転、地上権設定、賃借権設定、信託の登記等の場合です。

固定資産評価証明書は、東京都は都税事務所で、その他の地域では市町村役場で交付を受けることができますが、原則としてプライバシー保護の観点から、本人以外は委任状がないと交付してくれません。誰かに頼む場合は、委任状と受任者の身分を証明するものを用意したほうがよいでしょう。


古山 隆(司法書士)