ビジネスわかったランド (総務・庶務)

登記・登録事項

代理権限証明情報、印鑑証明書、住所証明情報が必要な理由
代理人に登記を頼むとき
 
登記の申請手続きは、当事者本人のほか、代理人が行なうこともできます。その際、代理人に、代理権限があるということを証明するために添付するのが「代理権限証明情報」です。会社の代表者事項証明書や委任状が該当します。

<会社の代表者事項証明書>


代理権限証明情報にもいくつか種類があり、「官公署が作成する場合」と「登記申請を委任する場合」の2つに分けることができます。
 
【官公署が作成する場合】
たとえば、会社が登記申請する場合、代表取締役が会社を代表して申請手続きを行ないますが、この申請には代表取締役の代理権限を証明するため、会社の代表者事項証明書か一部事項証明書を添付します。
また、未成年者が登記申請人である場合、法定代理人である親権者の代理権限を証明するために戸籍謄本を添付します。これらの官公署の作成した代理権限証明情報は、作成後3か月以内のものにかぎられますから、その点には注意が必要です。
 
【登記申請を委任する場合】
本人が申請する場合は必要ありませんが、登記権利者と登記義務者の共同申請で行なうケースで、登記権利者が登記義務者から委任状をもらい、本人と代理人の立場を兼ねて登記申請する場合には、代理権限証明情報が必要となります。
ここでは、一般の人が自分自身で登記申請する場合の申請書の記載例を載せていますが、この場合も、登記権利者が、登記義務者から委任状を預かって、本人の立場と登記義務者の代理人の立場を兼ねて申請する形にしてあります。そのほうが手続きがスムーズに運ぶからです。
委任状に記載する内容にも一定の決まりがあります。代理人とはいえ、登記申請書には登記原因証明情報が添付され、当事者がその登記申請の内容を了解しているわけですから、その記載を援用することができます。
つまり、「平成○年○月○日付登記原因証明情報記載のとおりの抵当権設定の登記申請手続きをなす件」等と記載すればよいことになっています。

<委任状>



委任状には有効期限の定めはないので、その点は注意する必要はありません。むしろ重要なのは、本人の署名をもらうことと、判は鮮明に押してもらうことです。
特に、所有権移転に関して登記義務者から委任状をもらうときは、実印を鮮明に押してもらい、印鑑証明書と印影を照合します。印が不鮮明だと、登記が受理されないおそれがあります。
 
印鑑証明書で本人の意思を確認する
 
印鑑証明書は、重要な取引には必ず要求される書類です。
印鑑証明書というのは、個人の場合は市区町村役場に、会社等の法人の場合は登記所に登録した印鑑の印影が、登記した本人のものに間違いがないことを証明する書類です。
市区町村役場、または登記所に届け出た印鑑を一般に「実印」といいます。実印で委任状や登記申請書に押印し、これと印鑑証明書を照合することによって、本人の印鑑が押されていることを確認できます。実印は通常、本人しか持参しませんし、印鑑証明書も原則的に本人しか入手することができません。

したがって、印鑑証明書を登記申請書に添付させることによって、申請者本人の登記申請の意思を確かめることができるわけです(電子商取引やオンライン申請では電子証明書を使用する)。
なお、申請人が法人の場合、登記申請する登記所と、その法人の登記がされている登記所が同じときは、原則として印鑑証明書の添付を省略することができます。その登記所に法人の印鑑が届けられているので、あえて印鑑証明書を添付しなくても照合できるからです。ただし、東京法務局の本局等、法務大臣の指定した登記所ではこの取扱いを受けることができないので、添付を省略できるかどうかは、事前に登記所に確認したほうがよいでしょう。
 
住所証明情報で実在する人物であることを証明する
 
所有権保存登記、所有権移転登記を申請する場合は、所有権を取得する人の住所証明情報を添付します。これは虚無人(実在しない人)名義の登記を防止するために要求されるものです。
住所証明情報に該当するのは、個人では住民票の写しか戸籍附票等、会社等の法人では登記事項証明書です。住民票の写しは住所地を管轄する市区町村役場で、戸籍の附票は本籍地のある市区町村役場で交付を受けることができます。
また、法人の登記事項証明書は印鑑証明書と同様、同一登記所に申請するときは、原則として添付を省略することができます。
個人の住所証明情報については、特に有効期間の制限はありませんが、登記申請書に添付するときは、できるかぎり新しいものを添付すべきでしょう。


古山 隆(司法書士)