ビジネスわかったランド (総務・庶務)

登記・登録事項

登記申請に添付情報(添付書面)
が必要な理由
申請書にある権利の変動を裏付ける
 
不動産をめぐる犯罪の多くで、偽造された添付情報(添付書面)が使われています。権利証に押されている登記済の判を偽造して、偽の権利証をつくったり、所有者本人の知らない間に改印届を出し、印鑑証明書を取得したりして、不動産を売買するといったケースもあります。
誤ってこのような物件を買ってしまうと、登記をしても、もちろん不動産を自分のものにすることはできません。支払った売買代金を取り戻すことも至難のわざといってもよいでしょう。
そこで、申請書によって求めている権利変動等が存在することを裏付けようというのが、添付情報(添付書面)が求められる主な理由です。

売買による所有権移転登記であれば、真実、売主と買主間で売買が行なわれ、当事者双方に移転登記をする意思があるということを確認するために、添付情報は要求されます。実際に申請どおりの権利変動が当事者間に存在し、申請人に登記申請の意思があるかどうかは、登記官が当事者に直接確認したり、売買契約書等の関係書類の調査をすることによっても確かめることができます。これを「実質審査」といい、不動産の表示に関する登記で行なわれていますが、そのためには、多数の登記担当者や設備が必要になり、現実には困難です。
そこで、当事者に一定の書類を提出させ、その書類によって権利変動の有無や内容を調査することにしました。これを「形式審査」といい、不動産の権利に関する登記は、基本的に形式審査によっています。
ちなみに、平成17年3月の不動産登記法の改正施行で多少見直しが行なわれました。つまり、申請人以外の者が申請している疑いがあるときは、登記官はその者の出頭を求めて質問したり、文書の提示を求める等の方法で、申請権限があるかどうかを調査することができるようになりました。
 
必要とされる添付情報(添付書面)
 
登記申請に必要な書類は、その登記の目的によって異なり、基本的なものは下表のとおりです。
 
<主な添付書面(添付情報)とその目的>
添付情報の名称 添付する目的 入手方法
登記原因証明情報 登記すべき物権変動の原因である法律行為またはその他の法律事実の成立を証するため 申請人(登記義務者)が作成
登記義務者の権利に
関する「登記済証」
登記義務者の申請意思を確認するため (登記義務者が保有)
登記識別情報 登記義務者の申請意思を確認するため(オンライン指定庁において登記完了後に登記権利者に通知される暗証番号のこと) (登記義務者が保有)
印鑑証明書 登記義務者の申請意思を確認するため 市区町村役場
住所証明情報 所有権保存登記、所有権移転登記等の際、虚無人名義の登記を防止するため 市区町村役場
代理権限証明情報 登記申請を委任されたことを証明するため。
会社等の法人が登記申請する場合は「代表者事項証明書」等、司法書士等の代理人に登記を依頼した場合や本人が相手方の代理人となって申請する場合には「委任状」
代表者事項証明書は法務局
委任状は委任する人が作成
第三者の同意・承諾書 たとえば、取締役が会社所有不動産を購入するときには取締役会議事録、また、農地について売買を原因として所有権移転登記を申請する場合には、都道府県知事等の許可書等 該当者が作成
 

登記申請書は、登記所に対しどのような内容の登記を求めるのかを明らかにするもので、すべての登記に必要です。
平成17年3月からオンライン申請ができるようになったため、従前の原因証書を初めからつくらなかったり、つくったけれど提出できない場合に必要とされた「申請書副本」は廃止されました。
また、権利証(登記済証)の代わりとして、オンライン指定庁で登記完了後に通知される登記識別情報という暗証番号が使われます。
 
添付情報(添付書面)の有効期間
 
添付書面のなかにも、有効期間の制限があるものと、ないものがあります。印鑑証明書と代理権限証書は、作成後3か月以内という制限があるケースがあります。
 
(1) 印鑑証明書
次のような場合に必要な印鑑証明書は、作成後3か月以内のものという制約があるので注意してください。
・所有権の登記名義人が登記義務者として登記申請する場合
・所有権以外の権利の登記名義人が登記義務者として事前通知制度、あるいは本人確認情報提供制度により登記申請する場合
・所有権の登記名義人が不動産の合筆、合併の登記を申請する場合
 
(2) 代理権限証明情報
代理権限証明情報が、官公署の作成による場合、たとえば、会社の資格証明書、親権者の戸籍謄本等には、作成後3か月以内の制限があります。ただし、普通の委任状には有効期間の制限はありません。
 
添付情報(添付書面)はどこでそろえればいい?
 
添付書面には、当事者が保有するもの、当事者が作成するもの、他の官公署で発行するもの、の3種類があります。
 
(1) 当事者が保有するもの
登記済証、登記識別情報は、登記義務者がもっているはずです。もし、もっていなければ事前通知制度、あるいは本人確認情報提供の準備をしなければなりません。
 
(2) 当事者が作成するもの
登記申請書、登記原因証明情報、承諾書等は当事者が作成します。
 
(3) 他の官公署で発行するもの
印鑑証明書と住民票は、本人の住所地を管轄する市区町村役場で発行してくれます。また、相続登記についての登記原因証明情報として必要となる戸籍謄本や除籍謄本は、該当者の本籍地の市区町村役場で発行してくれます。代理権限証明情報として、未成年者の親権者の戸籍謄本が必要になる場合もありますが、この場合も、親権者の本籍地の市区町村役場で交付を受けることができます。
そのほか、法定の添付書面ではないのですが、所有権移転登記等には、固定資産評価証明書を添付する必要があります。この書類は、東京都では、その不動産所在地の都税事務所、地方では市区町村役場で発行してもらいます。

これらの書類のうち、住民票と戸籍・除籍謄本は、手数料と返信用の封筒に切手を貼ったものを同封すれば、郵送で交付を受けることができます。手数料は、住民票は普通、1通300円、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円です。郵送で申請するときは、これらの手数料は、郵便局の定額小為替を利用して納めます。実際に郵送で取得される人は、手数料などについて申請先の市区町村役場にご確認ください。
以上で説明した書類は、原則として本人以外の人が請求できないので、もし、他の人が受け取りに行く場合には、本人から受け取りに行く人に対する委任状を用意したほうがいいでしょう。ただし、印鑑登録証を発行している市区町村では、それを持参すれば、印鑑証明書は、特に委任状がなくても交付してくれるようです。
 
必要なときは申請して返してもらう(原本還付)
 
添付書面のうち、登記識別情報は通常、その写しを添付しますから還付の問題は生じませんが、登記済証は、登記が終わると申請人に返還されます。しかし、それ以外の登記原因証明情報、印鑑証明書、住民票、委任状等は原則として返還されません。そこで、これらの書類が別の登記申請に必要な場合等は、一定の手続きをすれば、返還を受けることができます。
この手続きを「原本還付」といいます。原本還付の手続きをするためには原本をコピーし、これに登記所の受付に置いてある「原本還付」の判を押し、「上記は原本と相違ありません」と記載し、申請人が記名押印してこれを申請書に添付し、登記所に提出します。この場合、コピーのほうを申請書にホッチキスでとじ、原本のほうは申請書にクリップでとめておきます。登記が完了すると原本を返してもらえます。

なお、登記が完了した後で原本が必要となっても、原本還付は請求できません

原本還付請求のできる書類は、売買契約書、抵当権設定契約書等の登記原因証明情報、住民票、委任状、承諾書等です。注意が必要なのは、登記原因証明情報として法務局宛名義で作成し、その登記申請にのみ使うものは、原本還付できないということです。売買契約書や抵当権設定契約書は、当事者が保管する必要があるものなので原本還付が認められています。なお、従来、認められていた印鑑証明書の原本還付は、原則として認められなくなりました。
相続登記についての登記原因証明情報の原本還付は、他の書類の原本還付の手続きと多少違います。この手続きは、「相続関係説明図」という書類を作成し、戸籍謄本、除籍謄本等の相続を証明する書類と一緒に提出します(登記が終わると、戸籍謄本等は還付される)。

<原本還付を希望するとき>



古山 隆(司法書士)