ビジネスわかったランド (総務・庶務)

登記・登録事項

専門家に依頼するときに注意すべきポイント
こんなときは専門家に依頼するほうがベター
 
ひと口に、登記といってもバラエティーに富んでいます。内容自体が複雑な場合、当事者がたくさんいて同時に何件もの登記を申請しなければならない場合、相続でも複雑な場合等々。こんなときは、やはり専門家の力を借りたほうが賢明です。
たとえば、不動産売買が行なわれた際の所有権移転の登記は、通常、当事者だけでも4人(売主、売主に融資していた金融機関の担当者、買主、買主に融資する金融機関の担当者)以上、登記の件数でも3件(抵当権抹消、所有権移転、抵当権設定)から10件以上の申請を、迅速・確実に処理しなければなりません。そのような登記申請を間違いなく行なうためには、やはり、確実な知識と経験が不可欠です。そうかといって、一連の登記手続きの一部だけを自分で行なうというわけにもいきません。

また、相続登記のような場合でも、二代、三代にもわたると、相続人を確定するだけでも容易ではないうえ、戸籍謄本や除籍謄本を集めることも困難です。さらに、遺産分割協議をして、取得者の名義で相続登記をしたいという場合に、もし、相続人のなかに未成年者や行方不明者がいると、家庭裁判所に特別代理人や不在者の財産管理人の申立てをする必要があります。このようなケースでもやはり、実際には専門家に依頼したほうがよいでしょう。
それでは、実際に自分で登記申請する場合と、専門家に依頼する場合の区分けはどこかとなると、画一的に決めることはできません。あくまで、ケースバイケースで、登記の内容と当事者から総合的に判断するほかありません。
しかし、専門家に依頼するにしろ、登記についての基本的な知識だけはぜひ身につけておきたいものです。その知識があれば反対に、どこまでは自分でできる登記で、どこから専門家に任せる登記かの判断も自ずとできるのではないかと思います。
 
登記の専門家とは?
 
登記申請のあらましはわかったけれど、どうも自分で手続きをする自信がないという場合、また、申請書を書いたり、登記所に提出に行く時間がないという場合には、専門家に依頼するのもよいでしょう。
登記の専門家とは、司法書士と土地家屋調査士です。登記所の前には、普通、司法書士や土地家屋調査士の事務所がズラリと並んでいます。

<登記の専門家>


前述したように土地家屋調査士は、建物を新築したときに行なう表題登記、土地を分筆、合筆したときに行なう登記等、不動産の「表示に関する登記」(表示の登記)を主に扱います。司法書士は、不動産を買ったとき、相続したときに行なう所有権移転の登記や、金融機関から融資を受けたときに行なう抵当権設定登記等、不動産の「権利に関する登記」(権利の登記)を主に扱います。
ただ、この区別も一般の人にはわかりにくいと思うので、とにかく、司法書士か土地家屋調査士の事務所に入ってみてください。司法書士と土地家屋調査士両方の仕事を同じ事務所で取り扱っていることもありますし、そうでない場合でも、普通はお互いに提携して仕事をしています。表示の登記も、権利の登記も、1つの事務所で引き受けてくれるはずです。
 
こちらの要望をはっきり伝える
 
知り合いに司法書士や土地家屋調査士がいれば好都合ですが、そうでない人がほとんどでしょう。でも心配は無用です。登記をする予定の不動産所在地を管轄する登記所の前にある事務所に頼めばよいのです。
事務所はいくつかありますが、どこの事務所でも基本的には変わりはありません。司法書士も土地家屋調査士も、国家資格をもって仕事をしており、不正なことをすれば登録の取消処分等を受けるので、安心して登記を依頼することができます。また、登記の依頼を受けたとき、正当な理由がなければ依頼を断われないことになっています。

登記の依頼をするときに大切なのは、どのような登記をするかということを確実に伝えることです。特に、不動産が2つ以上ある場合で、そのうちの一部について登記を依頼するときは、そのことを明確にしておく必要があります。加えて、できるかぎり必要な書類をそろえておくことです。1回で必要な書類がそろわないこともあると思いますが、その場合には、不足書類をはっきりと聞いてメモしておくとよいでしょう。登記に必要な添付書面については後で説明しますから、そちらを参考にしてください。
登記を依頼するときは、できるだけ本人が行くべきですし、その際には、なるべく実印を持参したほうがよいでしょう。


古山 隆(司法書士)