ビジネスわかったランド (総務・庶務)

登記・登録事項

自分で登記の申請をするときは
どうする?
折衝がなく、時間を争わない登記は自分でできる

登記の申請は本来、当事者が行なうのが建て前です。代理人に依頼しなければならないという決まりや制限は一切ありません。ですから、裁判所の嘱託や、登記官の職権による登記以外は、すべて当事者が自分で申請することができます。
そうはいっても、一般の人が現実にどのような登記でも申請できるかといえば、それは別問題です。もちろん、登記や法律の知識があって、自分でむずかしい登記を申請する人もいると思います。そうした人は、大いに自分自身で申請するとよいでしょう。
そうした一部の人以外は、まず、基本的な登記申請から始めるのがよいと思います。たとえば、銀行から借りた住宅ローンを返し終わったときの抵当権抹消の登記、建物を新築した場合の所有権保存の登記、不動産を相続したときの所有権移転の登記、住所が変わった場合の所有権登記名義人住所変更登記など、自分のペースでじっくりと、参考書等を調べながら手続きを進めることができます。

これらの登記申請手続きは、基本的に先方との折衝とか、時間を争うといった部分がありませんから、自分で申請するのに最適です。
もちろん、売買による所有権移転登記や抵当権設定登記等も、相手方から委任状や必要書類を預かって自分で申請することができます。ただし、失敗したときのリスクが大きいので、あまり知識のない人は申請書を提出する前に専門家に見てもらったり、登記所で相談するといった配慮が必要です。
 
登記申請の方法は選ぶことができる
 
平成17年3月の改正不動産登記法の施行により、インターネットによる登記申請ができるようになりました。これは、行政手続きの迅速化、安全性の確保等、政府のEジャパン構想のもとに進められたもので、自宅や会社に居ながら、全国各地の不動産の登記申請ができるものです。
インターネットによる登記申請は、一般には「オンライン申請」と呼ばれ、法務大臣によってオンライン申請できる登記所(オンライン指定庁)が順次、定められていましたが現在、全国の登記所がオンライン指定庁になっています。
オンライン申請の概略については次項で触れますが、登記の申請方法には、従来どおりの「書面による申請」と「オンライン申請」の2通りがあり、そのどちらかを選択できるということを覚えておいてください。
一般の人が登記申請をするときは、ほとんどの場合、書面申請になると思うので、ここでは書面による申請を中心に説明しましょう。
 
申請書をつくり、添付書面(情報)をそろえる必要がある
 
登記申請をするために必要になるのは、申請書を作成すること、添付書面(情報)をそろえることの2つです。登記申請がどんなに複雑でも、この2つは変わりません。司法書士も毎日、この申請書の作成(ほとんどパソコンを使用)と、添付書面(情報)のチェックを中心的な業務にしています。
先ほど説明したように、登記申請は書面主義を採用しているので、必ず「登記申請書」で行なわなければなりません。登記所では毎日、たくさんの登記申請を受け付けており、その迅速、正確な処理のため、申請書の記載内容にも一定の決まりがあります。この決まりを知り、それに則した申請書を作成することが大切です。

申請書の記載に誤りがあると、誤った登記が行なわれたり、補正や場合によっては、取下げといったことにもなりますから、作成するときは十分に注意してください。また、登記申請書には、その申請が、間違いなく申請人の意思で行なわれたということを確かめるために、一定の書面(正式には「添付情報」という)を添付することが求められます。
申請人から提出された申請書と添付書面は、登記官が審査し、その内容や形式に問題がなければ登記が行なわれます。この登記官が行なう審査は、原則的に提出された書面で行なう形式審査で、それだけに厳格で、多少でも不備があると申請は通してもらえません。
登記申請に必要なことは、間違いのない申請書を作成し、必要な添付書面を用意すること、これがすべてといっていいでしょう。
 
申請書用紙や筆記用具はどんなものを使えばよい?
 
申請書の用紙は、特に法律等で決められているということはありません。ただ、申請書は長期間にわたって保存するため、保存に耐える強靱なものを用いるべきですし、大きさも実務上は日本工業規格A列4番(いわゆるA4判)が使われています。法令様式を売っている大きな文房具店には、基本的な事項が印刷された申請書の用紙が置いてありますから、これを利用してもよいでしょう。
筆記用具は、墨、あるいは印刷インク等にかぎられていて、手書きの場合は黒カーボン紙を敷いてボールペンで書くとよいでしょう。なお、パソコンで申請書や添付書面をつくると文字の修正が容易にできます。
インターネットを利用できる人は、法務省のホームページに登記申請書の様式と見本が掲載されていますから、これを利用すると便利です。
 
文字についての決まりと訂正の仕方
 
申請書は、登記簿に記録される元となる文書ですから、文字は字画を明瞭にしなければなりません。従来は、金銭その他の物の数量等を記載する場合、「壱、弐、参、拾」等の多画文字を使用しなければなりませんでしたが、平成17年の改正不動産登記法の施行によって「1、2、3」等の算用数字を使用できることになりました。
申請書に記載した文字に誤りがあって、訂正、加入、削除をしたときは、その字数を欄外に記載し、または文字の前後にカッコをつけ、これに捺印し、その削除した文字はなお読めるようにしておきます。間違えたからといって、黒く塗りつぶしたりしてはいけません。

<文字の修正をするなら>


自分で申請するときの留意点
 
申請書は、ここまでに説明したことを予備知識として頭の片隅においてから作成にとりかかったほうがよいでしょう。
申請書を作成する際に大切なのは、まず、どのような内容の登記をするかということを十分に確認することです。次に、その登記を申請するために必要な添付書面をそろえ、それをチェックすることです。
そして、登記をしようとする不動産の登記事項要約書や登記事項証明書を取得することです。できれば最新の登記事項証明書をとりましょう。
そろった添付書面や登記事項証明書を手許において、書式を見ながら申請書を作成します。申請書ができたら、これを添付書面とセットにして登記所に提出します。


古山 隆(司法書士)