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会社法

取締役・代表取締役の役割とは?
取締役の役割

 株式会社は、1人または2人以上の取締役を置かなければなりません。所有と経営の分離がなされている株式会社において、経営(業務執行)を担う者として、株主総会において選任されるのが取締役です。任期は、原則2年です。取締役の具体的な役割は会社の類型などによって異なりますが、代表取締役などが定められない場合は、株式会社を代表します。
 ちなみに、法人や成年被後見人などは、取締役にはなれません。禁錮以上の刑に処せられた犯罪者なども、取締役とはなれません。一定の犯罪においては、執行が終わって2年を経過しなければ取締役となることができないものもあります。
 なお、未成年者でも取締役となれますし、会社法制定前には欠格者とされていた破産手続開始の決定を受けて復権しない者も、会社法では欠格者とはされていません。

取締役会の有無によって取締役の役割は異なる

 会社法では、取締役会を置く会社と置かない会社があり、それぞれの会社で取締役の役割が異なります。
 取締役会を置かない会社では、取締役が自ら株式会社の業務を執行します。取締役が2人以上いる場合には、取締役の過半数をもって業務の執行を決定します。この場合、各自が、株式会社を代表することになります。取締役会を置かない会社における取締役の役割は、業務執行なのです。
 取締役会設置会社では、取締役は、3人以上でなければなりません。そして、取締役会(委員会設置会社を除く)は、業務執行を行なう代表取締役を、取締役の中から選定します。業務執行の決定を取締役会が行ない、その決定を代表取締役が執行することになります。取締役会設置会社における取締役の役割は、取締役会の構成員としての役割であると考えられます。
 委員会設置会社も取締役会設置会社であることから、取締役の役割は、取締役会の構成員としての役割であると考えられます。ただし、委員会設置会社における取締役会は、経営方針の決定や執行役の選任・解任などを行なうだけで、多くの業務執行の決定を執行役に委任することが考えられるため、その役割は限定的なものとなります。なお、委員会設置会社の取締役は、会社の業務を執行することができません。

代表取締役の役割

 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持っています。
 その選定は、取締役会を置かない会社においては、定款、定款の定めに基づく取締役相互の互選または株主総会の決議によって、取締役の中から定めることができます。取締役会設置会社(委員会設置会社を除く)においては、取締役会において、取締役の中から選定します。
 取締役会設置会社(委員会設置会社を除く)における代表取締役は、3か月に1回以上、自己の業務の執行状況を取締役会に報告し、取締役会による監督を受けます。



表見代表取締役

 代表取締役でない者に、会社を代表する権限があると認められる名称を付すことがあります。わかりやすくいえば、社長という名称が付されている取締役が、代表取締役ではない場合です。
 このように表向きには代表取締役に見えることを、表見代表取締役といいます。このような名称が付されている取締役がした行為については、株式会社は、代表権がないことを知らない第三者(善意の第三者)に対して責任を負うことになります。


著者
水野 賢一(弁護士)
2011年1月現在の法令等にもとづいています。