ビジネスわかったランド (総務・庶務)

担保、保証、債権回収

相殺できないケースにはどのようなものがあるのか

相殺は回収できる債権額の予想がたてやすく、時間的・経済的な簡便性という点で債権者にとってメリットの多い債権回収方法ですが、法律上相殺が禁止されているケースもあります。まず、法律上差し押さえることが禁止されている差押禁止債権というものがあります。たとえば、給料、賃金、退職年金、賞与についてはその4分の3に相当する額が差押禁止とされています。この差押禁止債権を受働債権(相殺される側がもっている債権のこと)として相殺することは禁止されています。同様に支払いの差止めを受けた債権や交通事故によって生じた損害賠償請求権を受働債権とする相殺も禁止されています。また、債務者に破産や民事再生、会社更生といった手続きが開始した場合、債権者全員で債権を公平に分配する必要があるため、抜け駆け的な相殺を禁止する規定が置かれています。たとえば、破産手続開始後に債権者が破産者から買掛金債務を負担し、相殺するような行為は禁止されています。債権者としては、相殺が禁止される具体的なケースをあらかじめ理解しておく必要があるといえるでしょう。


著者
芥川 基
2012年6月末現在の法令等に基づいています。