ビジネスわかったランド (総務・庶務)

担保、保証、債権回収

回収の見込みのない債務者への対処方法は?

分割返済で債権回収を図る
負債額が膨らんでくると、やがて債務者は支払不能に追い込まれていきます。このような状況でも、一括返済にこだわってばかりいると、かえって債務者を追い詰めてしまいます。結局、倒産や破産ということになってしまい、元も子もなくなってしまいます。こんな場合には、分割返済してもらうことを考えてみましょう。
ただし、分割返済にしても、本当に債務者に返済能力があるのかどうかは慎重に調査・検討する必要があります。債務者の事情を十分に聞いて、お互いに納得のできる期間と金額を決定すべきです。こちらの主張を通すことばかり急いで、ムリな返済計画を押しつけてしまうと、結局は債務者が破たんしてしまいます。話し合いが感情的になりそうであれば、裁判所を通した民事調停を申し立ててみるのもよいでしょう。
債務額や債権者・債務者の双方の事情にもよりますから一般的なことはいえませんが、6か月から1年、長くても2年程度の分割返済が限度というところでしょうか。ただ、諸般の事情を総合的に考慮して決めるべきです。この場合には、分割返済についての新たな契約書を作っておくべきです。期限の利益喪失約款(一度でも支払を怠ったら直ちに金額を返済するという約束)を入れた公正証書にして、保証人を立ててもらうと確実です。

債務者が自己破産するといったら
債務者が自己破産の申立てをしてしまえば、債権者としてはこれを止める手立てはありません。破産手続開始決定がなされると、原則として債権の取立てはできなくなります。破産手続きが進み、最終的に免責許可決定が出されれば、債務者は債務から解放されます。つまり、回収すべき債権は消滅してしまいます。免責が不許可になれば、引き続き債権回収を行なうことは可能ですが、破産者の9割以上が免責許可を受けている現状では、実際に回収することはむずかしいでしょう。
また、破産者からの免責申立てに対しては、債権者側から意見の申立てをすることができます。つまり、債権者が、裁判所に、債務者の債務はギャンブルなどによってでできたものなので、免責を認めないでほしいと訴えるわけです。ギャンブルなどで債務を負ったり、債務者が自分の財産を隠したりした場合などが、免責不許可事由に該当し、免責を認められません。ただ、免責不許可事由があったとしても、裁判所は、債務者の事情を総合的に判断して免責を許可することができます。そのため、たとえ裁判所に免責不許可事由を訴えたとしても、裁判所の裁量により免責が認められ、債権を回収することができない場合があります。


著者
芥川 基
2012年6月末現在の法令等に基づいています。