ビジネスわかったランド (総務・庶務)

担保、保証、債権回収

貸金等根保証契約とその留意点は
 「貸金等根保証契約」とは、根保証の被保証債務の中に「貸金等債務」が含まれており、根保証人が個人のときの契約をいう。この契約には、極度額の定めが必要である。また、元本確定期日を定めることができるが、その期日は根保証契約から5年以内である。

貸金等根保証契約というのは
民法は、根保証に関する条項として、民法の「第三編 第一章 第三節 第四款保証債務」の中に「第二目 貸金等根保証契約」を設けている。
保証契約の要式性については、「保証契約は、書面でしなければその効力を生じない」と定め、すべての保証契約に要式性(書面による保証契約の締結)を要求している。
それを受けて、「貸金等根保証契約」について触れているのだが、まず、「貸金等根保証契約」とはどんな契約か、検討しよう。
民法は、根保証契約とは「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」とし、その被保証債務(保証の対象となる債務)の範囲に「金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務」(以下、貸金等債務という)を含む場合が、貸金等根保証債務である。
つまり、銀行とか信用金庫、信用組合またはいわゆる金融業者等との借入取引(金銭消費貸借契約)や手形割引取引等によって生じた債務についての保証が新法の対象となる根保証契約となるのである。
したがって、売買取引とか請負取引等によって負担した買掛金債務とか請負代金債務などの保証は対象とならない。

根保証人は個人だけが対象
民法の適用を受ける根保証人は、個人に限られる。根保証人が法人のときは適用されない。

極度額の定めが必要
貸金等根保証契約では、書面による極度額の定めが必要である。
根保証契約を締結する場合、元本・利息・遅延損害金を含めた総額として極度額を定め、書面に記載しなければその根保証契約は無効となる。
極度額を定めることにより、青天井の包括根保証をストップさせることができる。

元本確定期日は5年以内に
貸金等保証契約では、元本確定期日を定めることができる。
元本の確定とは、根抵当権にもある制度で、根保証によって保証される元本債務が具体的に特定し、それ以後に発生した新しい元本はその根保証で保証されないことをいう。
簡単にいえば、それまで発生・消滅を繰り返してきた借入金等のうち、その(確定の)時点で特定している債務だけが保証の対象となるということである。
元本確定期日は、根保証契約から5年以内という制約があり、5年を超えた日を元本確定期日と定めても無効である。
また、元本確定期日を定めないとき、または元本確定期日が無効のときは、根保証契約から3年後の日に元本は確定する。
したがって、債権者は、元本確定後の貸付は無保証の状態になることを知っておかなければならない。

こんなときも元本は確定する
元本確定期日前であっても、次の(1)~(3)の事由が発生したときは、元本が確定する。
(1)債権者が主債務者または保証人の財産について、金銭の支払いを目的とする債権についての強制執行または担保権の実行を申し立て、それらの開始決定があったとき
(2)主債務者または保証人が破産手続開始決定を受けたとき
(3)主債務者または保証人が死亡したとき
なお、民法附則4条により、平成17年4月1日より前に締結された根保証契約の元本は、遅くとも平成22年4月1日に確定する。


著者
森井 英雄(元横浜国立大学大学院教授)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。