ビジネスわかったランド (総務・庶務)

担保、保証、債権回収

根抵当権と抵当権の違いは
 抵当権は、特定の債権を担保するものなので、その債権が消滅すると抵当権も消滅する。継続的な取引によって発生する不特定の債権を担保する場合は、一定の限度額や被担保債権の範囲内であれば、取引が終了するまで何回も担保することができる根抵当権を取ることが必要である。根抵当権には元本の確定制度があって、元本が確定するまでは付従性がないというのが大きな特徴である。

継続的取引に利用できる
今日の金融取引や売買取引は、1回限りのものより、長期間にわたって継続的に行なわれるケースが多い。ところが、抵当権は特定の債権を担保するだけであり、その債権が消滅すると抵当権は消滅し、継続的な取引の担保には利用できない。
そこで、反復繰り返される継続的な取引によって発生する不特定の債権を担保する必要が生じ、一定の限度額や被担保債権の範囲を設けて、その範囲内であれば取引が終了するまで何回も担保させようという制度が生まれた。それが根抵当権である。

抵当権との違い
根抵当権には、抵当権にはない種々の性質がある。とくに特徴的な点は付従性がないということである。前述のとおり抵当権は債権の存在が前提となり、債権の発生・変更・消滅と運命をともにする性質を持っているが、根抵当権は元本が確定するまでは付従性はない。
両者の違いは次表のとおり。


元本の確定とは
元本の確定とは、根抵当権によって担保される元本債権が具体的に特定し、それ以後に発生した新しい元本債権はその根抵当権で担保されないことをいう。
簡単にいえば、それまで発生・消滅を繰り返してきた売掛金や貸付金のうち、その(確定の)時点で特定している元本債権だけが担保されるということである。
したがって、元本が確定すればそれ以後の商取引は原則として打ち切るべきである。
「確定」という表現からは、元本債権が確定するかのような印象を受けるが、そうではない。
この場合、債権額そのものは確定することなく、利息・損害金が発生したり、一部弁済があったりして、債権額は増加・減少を繰り返していく。
確定後の根抵当権は普通の抵当権に似ているが、依然として極度額が残り、その範囲内において利息・損害金全額の優先弁済が認められている。
また、普通の抵当権にはない極度額の減額請求や根抵当権の消滅請求が認められていることが、普通の抵当権と違う点である。
元本は、取引が終了したとき、債務者または設定者が破産手続開始決定を受けたとき、根抵当権設定者が競売開始決定を受けたとき、設定者からの確定請求が根抵当権者に到達後2週間が経過したときなどの場合に確定する。
確定前と確定後を比較すると、次表のとおり。

なお、根抵当権の被担保債権の範囲の定め方の例を示すと、次のとおりである。


著者
森井 英雄(元横浜国立大学大学院教授)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。