ビジネスわかったランド (総務・庶務)

登記・登録事項

登録とは。登録制度があるのは
 登録とは、定められた機関に届け出て公的な帳簿に記載することであり、その登録によって初めて権利が発生する制度を登録制度という。知的財産権に関する登録制度であり、その内容は次のようになっている。

知的財産権の代表は産業財産権
ビジネスのうえで重要な知的財産権として産業財産権がある。かつては工業所有権と呼ばれていたが、2002年7月から産業財産権と改称された。産業財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つがある。
1.特許権
特許権は「発明」を保護する権利である。ここでいう発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいう。
特許庁に発明を出願し、要件を備えていると判断されると、登録することができる。登録すれば、出願の日から20年間、その技術を独占することができる。
2.実用新案権
実用新案権は「考案」を保護する権利である。考案とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」のことで、発明に比べて、それほど技術思想の高さが要求されない。また、実用新案権で保護されるのは、物品の形状、構造また組合せに関する考案に限られる。
実用新案も、特許と同じく特許庁に登録願書を提出する。保護の期間は出願の日から10年と、特許に比べて短いが、その代わり実用新案は、実体審査を経ることなく早期に権利化できるので、ライフサイクルが短く早期に権利化が必要な商品には最適である。
3.意匠権
意匠とは、物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であり、視覚を通して美感を起こさせるもの。発明や考案が自然法則を利用した技術的思想の創作であるのに対し、意匠は物品の美的な創作といえる。
意匠も、特許庁に登録願書を提出する。意匠権の保護期間は、設定登録の日から15年間である。
4.商標権
商標は、商品やサービスを提供する者が、自己の商品やサービスであることを示す標識で、文字、図形、記号、立体形状、これらの結合、色彩などからなる。この商標には、他人の商品との識別機能、出所を表示する機能、品質保証機能、宣伝広告機能がある。
商標も特許庁に登録願書を提出し、審査に通り、登録すると商標権を得ることができる。保護の期間は設定登録の日から10年であるが、更新することができる。
商標権を得ると、日本全国で商標の使用について、誰からも邪魔されることなく独占的に使用することができる。また、第三者が登録商標と同一または類似の商標を使用することを差し止めたり、無断で使用した場合に損害賠償を請求することができる。

半導体回路配置利用権
半導体回路配置利用権は、半導体集積回路の回路配置に関する知的財産権で、経済産業大臣が指定した財団法人ソフトウェア情報センターに登録することによって、権利が発生する。

植物新品種
この植物新品種に関する権利は、種苗法によって保護され、農林水産省に登録することによって、権利が発生する。保護の期間は品種登録の日から25年(永年性植物は30年)である。

著作権
著作権とは、思想または感情を創作的に表現したものであり、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものをいう。
著作者が著作物を創作すると著作権が成立するので、権利の設定に何らの登録を要しない。
しかし、誰がいつ創作したかなどの証明は容易ではないので、著作者の実名や発行の年月日、創作年月日、権利関係を、文化庁に登録することができる。なお、著作権などを移転した場合には、移転の登録がなければ第三者に対抗することはできない。
保護の期間は原則として著作者の死後50年(団体名義のものは公表後50年)、映画は公表後70年である。

プログラム著作権
コンピュータプログラムも、プログラムを創作すると何らの登録も要さずに権利が発生する。権利の対象となるプログラムを特定したり、創作年月日の立証を容易にするために、創作後6か月以内に、財団法人ソフトウェア情報センターにおいて、創作年月日などを登録することができる。権利を移転した場合は、移転の登録がなければ第三者に対抗することができない。

営業秘密
不正競争防止法が規定する要件を満たしていれば、特段の登録手続きなどを行なわなくても、営業秘密として保護される。不正競争防止法が定める要件は次のとおり。
1.秘密として管理されていること
2.事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること
3.公然と知られていないこと

著名商品等表示・周知商品等表示
不正競争防止法が規定する以下の要件を満たしていれば、特段の登録手続きなどを行なわなくても、著名商品等表示・周知商品等表示として保護される。
1.商品や営業を示す表示であること
2.著名(または周知)であること
3.表示が類似すること
4.混同が生じること(周知表示の場合)

商品形態
不正競争防止法が規定する以下の要件を満たしていれば、意匠登録などの特段の登録を行なわなくても、商品形態に関する権利が保護される。
1.当該商品の機能を確保するために不可欠な形態でないこと
2.日本国内において販売開始後3年を経過していないこと
また、これらの要件を満たさなくても、著名商品等表示・周知商品等表示による保護の余地もある。意匠登録していれば、意匠法によって保護される。商品形態が高度の芸術性を有する場合には、応用美術として著作権法による保護の可能性もある。
商品の模倣についてデッドコピーなど違法性が高い場合には、一般法である民法の不法行為に基づき損害賠償を認めた裁判例もある。

商号
商号を商業登記すると、商法に基づいて排他的権利を得ることができる。不正競争防止法が定める周知商品等表示・著名商品等表示の要件を満たしていれば、未登記であっても営業を示す表示として保護される。
これらをまとめると次の表のようになる。


著者
日野 修男(弁護士・弁理士)
2010年2月末現在の法令等に基づいています。