ビジネスわかったランド (総務・庶務)

危機管理事項

公害問題での地域住民とのトラブル防止法は
 公害環境トラブルには多くの種類がある。たとえば、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、日照・通風・電波障害、風害、眺望阻害、原子力発電、文化財保護との関係など、実に多くの種類がある。
公害環境トラブルは、多くの場合1対1の個別の関係ではなく、影響を受ける地域住民との集団的関係であり、その意味で、住民とのトラブルをどう解決したらよいかがポイントとなる。
そのポイントの第1は、まず都道府県の窓口で条例に定められた基準値を調べること、第2はその基準値を守ること、第3は住民に誠意をもって説明し、納得してもらうこと、第4は損害賠償なども検討しておくことである。

<< 大気汚染・水質汚濁問題への対策 >>

大気汚染防止法や水質汚濁防止法等の法令により規制されている
大気汚染は、ばい煙の排出、水質汚濁は汚水・廃液の排水による環境汚染である。
ばい煙の排出基準、汚水等の排水基準は、大気汚染防止法や水質汚濁防止法等の法令により規制されている。

基準は都道府県の公害担当課で確認する
基準は、地域の特性に応じ都道府県条例による定めもできるので、具体的な規制内容は、工場等の所在地の都道府県の公害担当課で確認しなければならない。
規制に違反した場合は、都道府県知事による改善命令や、操業の一時停止命令を受けることがあるし、刑事罰の定めもある。

規制に違反していてはトラブルを有利に解決する方法などない
規制を守っていることがトラブル回避の大前提である。万一、地域住民から指摘を受けても、違反がない事実を証明できれば、住民側がそれ以上の有効な法的手続きをとることが容易でないからである。
逆に規制違反を犯していながら、トラブルを有利に解決する方法などないと心得ておくべきである。

<< 騒音、振動問題への対策 >>

騒音規制法、振動規制法によって規制されている
騒音については騒音規制法、振動については振動規制法が、工場・建設工事、道路の騒音や振動の規制をしている。規制違反に対しては改善命令や刑事罰の定めがある。したがって工場での操業は、法令による規制を遵守することが必要である。

生活騒音は条例で基準値を定めている
騒音は、工場騒音だけではなく、日常生活上においてもトラブルの原因になっている。次に、裁判になった生活騒音のケースを図表に掲げた。

飲食店や遊戯施設での騒音については、多くの都市で条例による規制があり、他の生活騒音も、条例で基準値を定めている場合がある。

規制値が守られていれば、受忍限度論により免責されるが
騒音の受取り方には個性があり、人によっては軽い騒音でも心身に障害を起こすこともある。規制値が守られていれば、多くの場合、受忍限度論により免責される。

加害者側の誠実性が問題にされる
しかし、現に健康被害が発生している場合は、形式的に処理されるわけではない。騒音防止措置をとったか、代替の方法の有無、騒音発生の時間等の事情、とりわけ加害者側の誠実性が問題にされる。被害者の苦情に対して、どれだけ誠実に対応したのかが問われるのであるから、当社は規制を守っておりますといった、紋切型の通り一遍の対応は許されない。

<< 日照・通風・電波障害などの対策 >>

日照問題は、行政法上は適法でも、民事上は違法とされるケースも
日照の規制は主として建築基準法によりなされている。建築確認がおりた以上は、日照規制に適合した適法な建築物になるはずである。
しかし、行政規制と民事上の問題は別次元の問題であり、行政法上は適法であっても、民事上は違法とされる場合がある。

事前の住民説明会で誠意をもって説明し、納得を得る
日照紛争では、被害者が建築禁止仮処分の申立てをしてくると、厄介である。仮処分申立てがあると、工事が大幅に遅延する。事前の住民説明会で誠意をもって説明し、納得を得るよう努めると同時に、損失補償を含めた金銭的解決も考えるべきである。

近隣住民の被害緩和にどの程度意を用いたかが重要
建築の必要性、日照被害緩和策の有無(たとえば建築位置の移動や設計変更と被害の改善の程度)などの諸事情のなかで、近隣住民の被害緩和にどの程度意を用いたかは、仮処分の審理でも重視される。

風害被害も重要
風害問題は、高層ビルやマンションを建築する場合に、地域住民から指摘されることがある。風害のメカニズムも科学的に解明されつつあり、裁判所もこれを認める傾向にある。
したがって、今後は、風害による工事差止めも考慮に入れる必要がある。

電波障害問題は事前に確実に対応することが必要
電波障害は、しばしば起こる問題である。事前予測が可能であり、容易に防止措置をとることができるので、確実に対応することが必要である。

不当妨害行為への対策
住民の反対運動は、時折エスカレートして、法律上許された自力救済の範囲を超える場合がある。
不当な実力行使によって工事が遅延したり、工場の操業に大きな支障をきたす場合は、積極的に妨害禁止の仮処分申請を考えるべきである。損害賠償請求も、効果的な場合がある。

著者
華学 昭博(弁護士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。