ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

株主総会の決議方法は?
 株主総会の決議は、株主が持ち株に応じた議決権を行使し、賛否の意思を表明することにより行なう。

●決議要件と可決要件を満たす
決議成立の要件としては、まず第一に定足数が満たされなければならない。
定足数は、原則として議決権を有する株主の議決権の過半数を有する株主の出席であるが、決議事項によって定款による排除・軽減の可否、限度が異なる。
第二は、可決の要件が満たされなければならない。可決の要件は、決議事項によって異なるが、いずれも出席した株主の議決権数が基準となっている。

●普通決議は議決権の過半数、特別決議は三分の二以上で決議
まず、普通決議とは、出席株主の議決権の過半数の賛成で成立する決議である。
会社法で特別決議を要すると定めている事項以外は、普通決議によることになる。
この可決の要件については、定款で別の定めをすることができる。しかし別の定めといっても、過半数という要件を、たとえば三分の二以上というように加重することができるだけである。過半数という要件を軽減すると、相反する決議が成立する可能性があるため、認められない。
次に、特別決議とは、出席株主の議決権の三分の二以上の賛成で成立する決議である。
特別決議を要する事項は、定款変更・合併・事業譲渡・解散などのように会社の根幹に係わる基本的な事項であるため、定款でこの可決の要件を軽減することは認められていない。

●議決権行使は本人か代理人の出席で
株主は、株主総会に出席して議決権を行使するが、必ずしも株主本人が出席する必要はなく、代理人が出席し議決権を行使できる。代理人が出席する場合には、委任状が必要となる。
また、法人が株主である場合は、法人自体の出席ということは考えられない。
この場合は、原則的には代表取締役が法人を代表して出席することになるが、従業員が委任状をもって出席することも可能である。
なお大会社の場合は、議決権行使書という書面によって株主が議決権を行使する方法が認められていたが、中小会社の場合も、株主が総会に出席せずに、書面で議決権を行使する方法が認められるようになった。

●中小会社でも総会は開くこと
株主が少数の中小会社で、社長や親族で過半数の株式を保有し、株主全員の考えがわかっているとしても、総会は開かなければならない。
また総会を開いても、採決もしないで結論を決めてしまうのは違法である。
さらに身内であるからといって、委任状もないのに代理人と称して議決権を行使するのも違法である。
中小会社の場合、えてして決議の方法についても、会社法の規定を無視したやり方が行なわれることがあるが、決議方法が違法な場合は、後日決議取消しの訴えによりその決議が取り消されることがある。

●違法決議に必ずしも取消しの訴えが起こるとは限らないが
社長ないしその親族で過半数の株式を保有している場合、裁判で決議を取り消されても、再度正規の手続きを経て決議をすれば、裁判で決議を取り消した意味はなくなる。
したがって、決議方法が違法な場合でも、必ず決議取消しの訴えが起こされるというものでもない。
また、たとえ違法な手続きがあっても、それが軽微でかつ結論にも影響がないときは、裁判所の裁量で決議の取消しを認めないこともある。
ただ、中小会社において決議取消しの訴えが起こされるのは、役員ないし株主間にいわゆる内紛が生じている場合である。したがって、裁判の結論よりも、会社の信用がどうなるかを考えなければならない。経営者としては、そのような訴え自体がないよう心掛けることが第一である。


著者
矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。