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株主・株式・役員事項

株主総会議事録のつくり方と保管期間は?
株主総会の議事については、議事録を作成しなければならない。議事録には議事の経過の要領とその結果を記載する。
議事の経過の要領とは、審議・議決の経過等を要約したものであり、速記録のような詳細なものである必要はない。

<< 議事録の作成義務者は代表取締役 >>

議長および出席取締役の署名(記名捺印)の義務は会社法上はないものの、議事録が登記申請の添付書類となるため、署名(記名押印)はしておくべきである。
議事録の作成義務者は、代表取締役である。議事録作成の時期について定めはないが、総会終了後、速やかに作成すべきである。

なぜなら、株主総会の決議事項は、登記すべき事項であることが多く、この場合、登記申請の添付書類として議事録が要求されている。
たとえば、取締役の選任を決議したときは、その議事録を添付書類として取締役就任の登記を申請しなければならない。
したがって、議事録の作成を怠ると、必要な登記もできないことになるからである。

<< 議事録に記載すべき事項 >>

議事録に記載すべき事項は、次のとおりである。

(1)タイトル
株主総会の議事録であることを示すタイトルをまず付けるべきであり、定時総会か臨時総会か、また定時総会の場合は何期の定時総会かがわかるような記載をする。

(2)日時・場所
招集通知に記載された日時・場所で開催されているということを確認するという意味で、議事録にも日時・場所を記載する。

(3)株主・株式数等
株主総会には、法律上定足数の定めがあり、また定款で法律上の定足数を軽減することにも制限がある。
したがって、株主総会が定足数を満たして有効に成立したことを記録しておくために、株主の総数・発行済株式総数と出席した株主の総数・株式数を記載する。

(4)議案ごとの議事の経過の要領
これについては、前述のとおり速記録のような詳細なものである必要はなく、また賛否の具体的な数まで議事録に記載する必要はない。

しかし、採決の結果として過半数(普通決議)なり三分の二(特別決議)の多数で可決したことはわかるように記載しなければならない。
たとえば、満場一致で可決したというのであれば問題はないが、特別決議の議事録において「賛成多数で可決した」という記載は、三分の二という法定の可決要件を満たしていたのか不明であり、適当でない。
また可決された案件だけでなく、否決された案件についても記載しておくべきである。株主総会で否決されたことが意味をもつ場合として、少数株主による取締役解任の訴え、少数株主の議案提案権などがある。

(5)議長および出席取締役の署名か記名押印
議事録に署名(記名押印でも可)するのは、議長(通常は代表取締役社長)および出席した取締役であり、監査役は署名の必要はない。
総会で取締役が交代した場合(たとえば任期満了で退任し、後任の取締役が選任された場合)、議事録に署名すべき取締役とは株主総会の時点での取締役、すなわち前任の取締役である。

<< 議事録は永久保存を心掛ける >>

議事録は、登記申請の添付書類として必要になるだけでなく、株主総会の記録として必要なものである。
したがって、会社の本店では10年間、支店では五年間議事録を備え置き、株主や債権者が閲覧・謄写できるようにしておかなければならない。

この10年とか5年という期間は、あくまで株主や債権者の閲覧・謄写に供する期間であり、保存期間とは別である。
議事録の保存期間について規定はないが、大部のものではなく、また会社の記録として重要なので、永久保存を心掛けるべきであろう。
10年以上も前のことが問題になることはないが、議事録を永久保存していると、いろいろと便利なこともある。たとえば、役員の退職金を計算する場合に在職期間が問題となるが、議事録を永久保存していると在職期間を確認する資料となる。また2種類の定款があり、どちらが変更前でどちらが変更後かわからなくなった場合、定款変更決議の議事録を調べることにより確認できる。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。