ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

株主総会の議事運営と留意点は?
 議事運営の手順は次のとおりである。
株主総会の議事運営については、とくに規定はないものの、次のような手順で進めるのが一般的である。

(1)定足数、出席株主の議決権等の確認
株主総会の成立のためには、まず定足数を満たしていることが必要であり、定款で定足数を排除している場合以外は、出席した株主・代理人の議決権数を確認し、定足数に達していることを確認する必要がある。

(2)議長の選任
総会を開くにあたっては、議長を選任しなければならない。総会の議長は、定款で定めておくことができ、通常は取締役社長を議長と定めている。定款で議長を定めていないときは、総会で選任する。
なお総会で議長を選任するまでの仮議長は、社長が務める。
議長は、総会の秩序を維持するとともに、議事を整理する権限があり総会の秩序を乱す者に対しては退場を命じることもできる。もっとも、総会で必要な程度を超えて反対意見を述べたり、修正議案を提案する株主に対しては、発言時間や順序を制限するなどの議事整理の権限で対応すべきであり、軽々しく退場を命じるべきではない。

(3)議案の説明と質問に対する回答
招集通知に記載することが要求されているのは、議題であり、株主には具体的な議案はわかっていない。
このため、具体的な議案について説明することは、議案提案者としての当然の義務だが、会社法では取締役としての説明義務を定めている。これは、株主からの質問に対して説明をすべき義務を定めたものだが、次の場合には、説明をしなくてもよいことになっている。

(1)質問事項が総会の目的である事項に関係のないとき
(2)説明することにより株主共同の利益を著しく害するとき
(3)説明のために調査を要するとき(ただし、株主が会日の相当前に書面によって説明を求める事項を通知した場合には、説明のために調査を要するという理由で説明を拒むことはできない)
(4)説明をすることにより会社その他の者の権利を侵害することになるとき
(5)実質的に同一のことについて繰り返して説明を求めるとき
(6)その他正当な理由があるとき

このような場合、説明をすべきでないこともあり得る(たとえば、質問が会社の企業秘密に関する場合)ので、注意を要する。
説明義務があるのは取締役だが、取締役自らが説明しなければならないということではなく、顧問の公認会計士等に出席してもらい、専門的な事項は代わって説明してもらっても差し支えない。
株主からの質問に対してどの程度説明をすべきかは、一概にはいえないが、現実的には、程度の問題ではなく時間の問題であることが多い。
単に総会の時間を引き延ばすこと、会社の非をあげつらうことを目的とした質問は、いくら時間をかけて説明しても際限がなく、また決議の結果に影響があるわけでもない。
したがって、長くても数時間程度で質問全体を打ち切るというのが、現実的な対応であろう。

(4)修正議案の提案等
招集通知に記載された議題について、通常会社側から具体的な議案が提案されるが、株主も別の議案を提案することができる。
このような修正議案の提案があった場合は、無視してしまうことはできない。その趣旨説明までは認めるべきだが、質問の場合と同様、時間を区切る必要があろう。

(5)採決
審議が尽くされた段階で採決をする。採決の方法は、拍手・挙手・起立・投票等適宜の方法で差し支えないが、賛否の数が争いになる可能性があるときは、拍手のような曖昧な方法は避けるべきである。
会社提案の議案に対し株主から修正議案の提案があったときは、採決の対象が二つあることになる。
この場合、会社提案の議案が可決されれば、理論上は自動的に修正議案は否決されたことになるが、そのようなやり方ではなく、まず修正議案の採決をして否決を明確にしたうえで、会社提案の議案の採決を行なうのが実務的なやり方である。

●総会の決議で翌日以降に延長するすることも可
以上で総会の議事は終了するが、どうしても当日に採決できないような事情がある場合、総会の決議により延期ないし続行をすることができる。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。