ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

株主総会の開催日時や場所は?
 定時株主総会は、毎回の事業年度終了ごとに開かれるものであり、時期も事業年度終了後3か月以内とされている。

定時総会は、計算書類の報告・承認のための株主総会であるが、通常、取締役については2年ごとに、監査役については4年ごとに任期が満了するため、役員改選も議題となる。
一方、臨時総会は必要に応じて随時開かれるものであり、回数や時期については定時総会のように定められてはいない。ただ、時期が定められていないといっても、招集手続きとして総会の日の2週間前(非公開会社の場合は1週間前)に招集通知を発送することになっているので、開催の時期は自ずと制約を受けることになる。

●本店所在地かその近隣で開く
株主総会を招集し開催するには、具体的な日時と場所を決めて通知しなければならない。定時株主総会のように開催の時期が一応決められている場合でも、具体的な日時の決定は必要である。

また、株主総会の場所については、会社法は定款に定めのある場合以外は、とくに制約を設けていない。旧商法では、会社の本店所在地かこれに隣接する地とされていたが、このような制約がなくなったので、法律上はどこで開いてもかまわないが、株主の出席の便宜を考慮すべきである。
したがって、会社の本店または近くのホテルというのが無難な決め方であろう。

●出席の便宜を図った時間帯に
株主総会の具体的な日時と場所についてまでは、会社法はとくに定めていない。ただ、株主の出席の便宜を第一に考えて決定すべきであり、一部の株主の出席を事実上困難にするような決め方をすべきではない。
大会社の場合は、平日の午前10時にホテル等の会議室で開催することが多いが、株主が少数の小会社の場合、何が株主の出席の便宜に適うかというのは一律ではない。

たとえば、平日の午後6時という日時は、仕事をもっている株主が就業時間を終えて出席できる点では、株主の出席の便宜に適うであろう。
しかしこれが深夜・早朝の開催となると、仕事をもっている株主の就業時間外であっても、出席の便宜を図ったものとはいえない。
日曜・祝日の開催も同様に、株主の出席の便宜に適うこともあれば、逆に出席を妨げるためとみられることもあろう。

開催の場所についても、同様である。たとえばゴルフ場で開催するというのは、株主全員が当日のゴルフの予定があり、それに合わせて株主総会を開くというのであれば、株主の出席の便宜を考えたといえるが、社長だけの都合でゴルフ場で総会を開くのは、他の株主の出席を妨げるものといえよう。
もっとも、全株主が出席し、株主総会の開催に同意したときは、「全員出席総会」として有効に株主総会を開くことができるので、一見不適切な日時・場所であっても「全員出席総会」の開催は可能である(たとえば社長の別荘に夜間株主全員が集まった場合など)。

●利益供与に要注意
要するに、株主総会の具体的な日時・場所は、株主の便宜を考えて、出席の負担をできるだけ少なくしなければならないということであるが、どのように定めても株主のある程度の負担(時間とか交通費)は避けられない。
それであれば、出席する株主の負担を会社で補填すればよいのではないか、という考えがあり得る。たとえば、先の例で、社長だけの都合でゴルフ場で総会を開くのに、出席してくれる株主には会社の費用でゴルフもしてもらい、車代も支給すれば株主の負担はなくなるであろう。

しかし、ここまでくると株主に対する利益供与の問題が生ずる。会社法は、株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与することを禁止している。
一般には、いわゆる総会屋に対する現金等の供与を禁止した規定だが、禁止の対象は総会屋に限定されているわけではない。
出席した株主に交通費の実費を支給する程度であれば、利益の供与にはならないが、会社の費用でゴルフをするとなると利益供与となり、総会の効力が問題となるだけでなく、損害賠償や株主の権利の行使に関する利益供与の罪による処罰の問題も生ずる。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。