ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

取締役の義務と責任は
 取締役の義務には、善管義務、忠実義務、監視義務の3つがある。また、取締役は、その任務を怠って会社に損害を与えた場合、その損害額を賠償する責任を負うことになっている。

<< 取締役の「善管義務」 >>

取締役は会社と委任の関係にあり、「善管義務」を負う
取締役と会社との関係は委任に関する規定に従うとされ、委任契約においては、受任者(取締役)は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負うとされる。これが善管義務である。

取締役は経営の専門家としてかなり高度な注意義務を負う
この善管義務というのは、受任者の職業、その属する社会的・経済的地位などにおいて一般に要求される程度の注意義務を意味する。すなわち、取締役は株主総会によってその能力が会社の経営者にふさわしいと評価され、大きな信頼を受けて選任され、自分自身もその能力があると自らを高く位置づけて取締役就任を受諾したものであるから、その地位に見合った重い義務を負わされるのは当然のことである。経営の専門家としてかなり高度な注意義務を負うことになる。

善管義務に違反すると、会社に対し損害賠償責任を負う
もし、取締役がこの善管義務に違反して、会社に損害を与えるような事態になれば、会社に対し損害賠償責任を負う。委任契約における債務不履行責任が生ずるのである。

<< 取締役の「忠実義務」 >>

「忠実義務」とは
取締役は法令および定款の定めならびに総会の決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を遂行しなければならないとされ、これを忠実義務という。

会社の利益を犠牲にし、個人の利益を図れば損害賠償の対象
もし会社の利益と取締役個人の利益が相反するような事態に至ったら、取締役としては当然に会社の利益を優先して対処しなければならない。取締役が会社の利益を犠牲にし、個人の利益を図ったとすれば、当然のこととして会社の受けた損害を賠償しなければならない。

<< 取締役の「監視義務」 >>

取締役は会社の規定や財産の状況を正しく把握する義務を負う
取締役が善管義務や忠実義務を尽くすためには、会社の定款、株主総会議事録、取締役会議事録、貸借対照表、損益計算書、事業報告書等を精査し、会社の規定や業務、財産の状況を正しく把握すべき義務を負う。

取締役は他の取締役の職務執行を監視する職責がある
そして、取締役は取締役会の構成員として、会社の業務執行の決定や他の取締役の職務執行を監視する職責がある。その職責を果たすためには、取締役として日頃から会社の現状をよく理解しておかなければならない。

監視義務についての裁判所の見解は
この点についての裁判所の見解として「代表権のない取締役は取締役会の構成員として、代表取締役の業務執行全般を監視する義務があるから、まず取締役会に出席し、必要とあれば取締役会の招集を求め、会社の営業および財務の状況につきその報告を求めて重要な情報を把握し、場合によっては会社の業務、財産を調査する権限を行使すべきものであって、それらについて疑念をさしはさむべき事項があるときはこれを確認し、チェックする義務を負う」との判断を示している。

監視義務を怠り、会社に損害を与えた場合は損害賠償責任を負う
このチェックすべき義務のことを監視義務といい、これに違反して会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うことになる。

著者
堀越 董(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。