ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

株主総会の招集通知の仕方は?
 株主総会の招集通知をする際には、以下のような点に注意する必要がある。

●招集通知は書面で
株主総会の招集は、株主に書面の招集通知を発送して行なう(ただし取締役会を設置しない会社では、書面でなくてもよい)。
通常は郵送だが、株主が少数である場合は、FAXによる方法、手渡しによる方法も可能だろう。

なお株主の承諾があれば、電子メールによる招集通知も可能である。
招集通知の内容さえ正確に伝えられれば、口頭(たとえば電話)でもよいのではないかとも考えられるが、後日紛争となったときに通知の内容や時期について疑義が生じるため、口頭による招集通知は判例でも有効とは認められていない(ただし、結果として株主全員が出席し、株主総会の開催に同意したときは、「全員出席総会」として株主総会は有効に成立する)。

●いつ、誰に送るか
招集通知を送る時期については、総会の日の2週間(非公開会社の場合は1週間)前までに「発送」する必要がある。具体的には、招集通知を発送(たとえば郵便であれば投函)した日と総会の日を除いて、その間に2週間(非公開会社の場合は1週間)以上の期間を空けなければならないということである。
招集通知は、株主全員に発送すべきであることは当然であり、一部の株主に対する通知が欠けたときは、招集手続きは違法であり、通知を受けて出席した株主だけで決議がなされても、後日決議取消しの訴えによりその決議が取り消される可能性がある。
通知の宛て先は、株主名簿に記載された株主の住所である。会社法が定めているのは、招集通知の発送の時期だけであり、現実に株主の住所に届くかどうか、またいつ届くかということについては問題にしていない。

●会社が掴んでいる住所に発送
したがって、一部の株主について招集通知の届くのが遅れても、また何らかの事情で届かなくても、法的には招集通知は適法であり、決議の効力には影響はない(法律上は、株主名簿に記載された株主の住所に宛てた招集通知は、通常届くべきときに届いたものと見なすことになっている)。
もっとも、招集通知は総会の日の2週間(非公開会社の場合は1週間)前までに発送することになっているので、多少時間がかかっても、総会の日の相当前には届くのが普通であろう。

株主がその住所におらず、かつ転居先も不明のときは、招集通知は届くことがない。この場合でも、会社で掴んでいる住所に発送しておけばよく、また5年以上通知が届かない株主は、以後通知を発送する必要はないものとされている。
株主が何万・何千という大会社の場合、このように住所不明の株主が出てくることは避けられないが、中小会社の場合でも、株主が住所不明となってしまうことは珍しくない。
とくに会社の設立にあたり名義を借りた株主がいる場合、長年株主総会も開かずにいると、いざ株主総会を開くときに住所も消息もわからないことがあるので、注意を要する。

●関連資料を添付するのがベター
株主に対する招集通知に会議の目的が記載されているだけで何らの資料もない場合、株主が事前に賛否の態度を決められない。法律の建前としては、総会に出席して議題・議案の内容を聞き、質疑応答をして賛否を決するということだが、現実的ではない。
このため、大会社には、招集通知にさまざまな資料(計算書類・監査報告・改選役員の経歴等)を添付することが求められており、また事前に資料を添付することにより、委任状の勧誘や書面による議決権の行使を認めている。
この点、中小会社の場合は、資料の添付は必要とされていないが、定時総会については、計算書類、事業報告、監査報告を資料として招集通知に添付しなければならない。

また一定の重要事項を審議する場合(定款変更・合併・事業譲渡・新株の有利発行等)には、会議の目的だけなく、議案の概要も記載しなければならないものと定めている。
その他の議題を審議する場合でも、資料を添付することは有益である。とくに委任状の提出を促す場合には、株主に資料を添付して事前に賛否の態度を決めてもらう必要があろう。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。