ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

総会を開かずに作成した議事録の問題点は?
株主総会を開かずに議事録を作成するのは、中小会社にはよくあることである。役員の変更など登記を必要とする事項については、登記申請の添付書類として株主総会の議事録が必要とされるため、登記のためにだけ議事録が作成されることが珍しくない。

株主が社長とその身内だけというような会社では、株主総会を開いて意見を交換する必要がないということだろうが、たとえ身内であっても対立が生ずるような事態となると、この議事録の効力が争われることになる。
法的には株主総会を開いていない以上、議事録は無効であるが、前述のとおり通常は議事録を添付書類として登記がなされているため、そのような登記事項を争う方法として、総会決議不存在確認の訴えという裁判が認められている。

●訴えが通った場合の影響は大
総会決議不存在確認の訴えとは、文字どおり株主総会の決議が法的に存在していないことの確認を求める訴えであり、株主総会を開かないで議事録だけが作成されている場合は、このような訴えが提起される典型的なケースとなる。
いったん、訴訟が提起されると、株主総会を開いていない以上、敗訴は必至である。決議不存在確認の訴えが認められた場合の影響は非常に大きい。

取締役選任の決議を例にとると、議事録を利用してなされた取締役就任登記は抹消され、またそれまで取締役として行なった行為の効力も問題となる。さらに議事録の作成・登記の申請という行為が絡んでいるため、文書偽造(出席取締役の記名捺印を無断でしている場合)や公正証書等原本不実記載といった刑事問題にまで発展することがある。
株主・役員間に何の争いもなければ、総会を開かない議事録について争われることはないが、それはそのような議事録が有効であるということではない。取締役としては、争われる可能性を考えておかねばならない。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。