ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

総会の議題・議案と株主の提案権とはどんなものか
 株主総会では、「議題」と「議案」が問題になる。通常あまり区別しないが、会社法では両者を区別している(法律上「株主総会の目的である事項」というのが議題である)。大まかにいえば、議題とは総会で審議の対象となる事項であり、議案とは具体的な賛否の対象・決議の対象となる事項である。
具体的には「取締役選任の件」というのは議題であり、「Aを取締役に選任する件」というのが議案である。また「定款変更の件」は議題であり、「定款第○条を下記の内容に変更する件」は議案である。このように議題とはより広く抽象的なもの、議案はより狭く具体的なものであるが、たとえば「会社解散の件」というのは内容が法律上決まっており、議題であるとともに議案でもある。

●議題と議案は扱いが違う
招集通知に記載するのは、この議題であり議案まで記載する必要はない。ただし一定の重要事項を決議するために招集する場合には、議案の概要を記載することが必要とされている。定款変更、事業譲渡などである。
また定時総会では、計算書類の承認が議題となるが、計算書類を招集通知に添付することになっており、議案が示されているのと同じことになる。

このように議題と議案は、次元の異なるものであり、その変更や追加についても扱いが異なることになる。
たとえば、株主総会の場で議題を変更ないし追加して決議することは、議題の記載のない招集通知により株主総会を開催したことと同じであり、決議取消しの訴えにより決議が取り消される可能性がある。

●議案は変更も追加も可
議案は、招集通知に記載すべき事項とされておらず、総会の場で変更ないし追加することも可能である。たとえば、「Aを取締役に選任する件」という議案を審理している過程で、議案を「Bを取締役に選任する件」に変更したり、またそのような議案を追加することができる。

●株主の議題・議案提案権とは
通常、総会の議題・議案は会社側から提案されるものだが、一定の要件(6か月前から引き続き全体の1%以上または300個以上の議決権。なお非公開会社の場合、6か月前からという要件は必要ない)をもつ少数株主にも議題・議案の提案権が認められている。
なお、取締役会を設置しない会社では、株主でさえあればこの提案権が認められている。

さらに株主は、株主が提案する議案の要領を招集通知に記載することを請求できる。
これらは、株主の議題・議案の提案権と呼ばれる。
たとえば、少数株主から取締役の増員を議題とするよう請求があると、議題であるので当然、招集通知に記載されることになる。具体的な議案(増員される取締役候補者の氏名)は、総会の場で提案することでも差し支えないが、株主は招集通知に具体的な議案も記載することを求めることができるのである。

このような少数株主提案の議題・議案が総会で可決される可能性は小さいが、議題・議案の提案権自体は法律で認められており、可決の可能性がないからといって、このような提案を無視することはできない。
したがって、総会の招集通知に議題・議案を記載するだけでなく、総会の場においても、提案理由の説明等の機会を与えるべきである。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。