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株主・株式・役員事項

取締役会の決議事項と決議の方法は
 取締役会は、業務執行に関するすべての事項を決定するとともに、株主総会の招集等、会社法で定められた事項を決議する。
また、取締役会の決議方法は、取締役の過半数が出席し(定足数)、出席した取締役の過半数が賛成した場合に成立する。

<< 取締役会の決議事項 >>

業務執行に関する事項はすべて取締役会で決定するのが原則
取締役会は、会社の業務執行を決定する機関であるから、法律や定款で株主総会の権限とされている事項を除いて、業務執行に関する事項はすべて取締役会で決定するのが原則である。

取締役会の決議事項は会社法で決められている
しかし、日々の経営の細部は代表取締役に委任しているので、その限度内で代表取締役に決定を委ねている。そこで、代表取締役に委任しても差支えない事項と取締役会自らが決定すべき事項との限界が問題とされるが、次の表に掲げる事項については、必ず取締役会に諮って決定しなければならないとされている。


<< 取締役会の決議方法 >>

取締役会の決議の方法は
取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し(定足数)、出席した取締役の過半数が賛成した場合に成立する。
議決権の数は、各取締役平等で、1人1票で採決される。定款または取締役会規則で「可否同数のときは議長の決するところによる」と定めているケースが見受けられるが、議長が2票を行使することはできないから、これは無効である。

特別利害関係を有する取締役は、決議に参加することができない
決議事項について特別利害関係のある取締役は、定足数を割り出すための取締役の数にも加えず、議決権の行使もできない。

代理人による出席は認められない
では、取締役が取締役会に代理人を出席させたり、自分の意見を書面で取締役会に伝えた場合、出席者と認めることはできるか。取締役会は、取締役それぞれの知識・経験を結集させることが期待されているので、信任を受けた取締役自身が討議に参加することが必要であり、代理人による出席はできない。

書面の提出による会議参加も認められない
同様に、取締役が、出席に代えて自分の意見を記載した書面を提出しても、討議を尽くしたとはいえないから、取締役会に出席したことにはならない。

持回り決議は認められない
議案を各取締役のもとに順次回覧させることにより、賛否の意見を集約する方法を、いわゆる持回り決議という。緊急を要するような場合に、このような方法による決議ができるならば便利ではあろう。
しかし、代表取締役が行方不明になった緊急事態のもとで、特定の取締役に代表権を与えることを他の全取締役が持回り決議の方法で承認した場合に、有効な決議とは認められないとの最高裁の判決が出ている。
要するに、取締役会は、あくまで「会議体」として機能するものとされ、その本質を満たさない形式では、有効な取締役会とは認められないのである。

書面、電磁的記録による決議がOKのケース
基本的には上記のとおりであるが、会社法では、取締役会の決議の目的である事項について、取締役の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときには、(監査役が当該提案に異議を述べたときを除く)当該提案を可決する旨の取締役会決議があったものとみなす旨を定款で定めることができるという規定を設けている。したがって、そうした定款の規定を新設すれば現実に取締役会を開催せずに、決議を得ることができるようになっている。

テレビ電話による会議の可否
テレビ会議システムによる取締役会については、法務省が「取締役間の協議と意見の交換が自由にでき、相手方の反応がよくわかるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みになっていれば、テレビを利用して取締役会議を開くことも可能である」との見解を発表して、厳格な要件のもとで有効に成立する余地のあることを示している。
しかし、このような技術水準に達した設備を設けることができる会社は限られるので、現在のところ許されないと理解しておくほうが無難である。

著者
堀越 董(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。