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株主・株式・役員事項

株主総会の決議事項と決議の方法は
 株主総会の決議事項は、会社の基本的な事項に限られる。具体的には、決算書類の承認など会社の計算等に関する事項、取締役・監査役の選任や解任など役員に関する事項、定款の変更や営業譲渡など会社の基本に関する事項、新株発行など定款所定の権限に関する事項などがある。
決議の方法には、普通決議、特別決議などがある。普通決議とは、出席株主の議決権の過半数の賛成で成立する決議である。特別決議とは、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立する決議である。

<< 株主総会の決議事項 >>

株主総会は会社の基本的な事項について決定する
株主総会では、株主が持ち株数に応じた議決権を行使して、取締役の選任や解任などの会社の基本的な事項について決定する。

業務執行についての意思決定は取締役会の権限である
取締役会設置会社では、株主総会ができるのは、あくまでも会社の根幹に関する事項に限っての意思決定であり、具体的な業務執行についての意思決定は株主総会ではなく、取締役会の権限である。もっとも、取締役会や取締役は総会で決定されたことを守る義務がある。

株主総会で決めるべき事項は
取締役会設置会社では、株主総会で決めるべき事項は、会社法で定める事項や定款で総会の決議事項とされたものに限定されている。ただし、取締役会非設置会社では、すべての事項を決議できる。
では、どういう事項について株主総会で決議するかというと、次の表に掲げたような事項である。


株主総会の専決事項は他の機関に委ねられない
上の表の決議事項は、株主総会の専決事項であり、これを株主総会が会社の他の機関(取締役会とか代表取締役)に委ねたり、また会社の他の機関が株主総会の決議事項を制限することはできない。

<< 決議の方法 >>

決議成立の要件
1.定足数が満たされること
株主総会の決議は、株主が持ち株に応じた議決権を行使し、賛否の意思を表明することにより行なう。決議成立の要件としては、まず第1に定足数が満たされなければならない。定足数は、普通決議の場合は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席であるが、決議事項によって定款による排除・軽減の可否、限度が異なる。
また、特別決議の場合は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数または定款で定める割合(ただし、3分の1未満にすることはできない)を有する株主の出席である。
2.可決の要件が満たされること
定足数が議決権を行使できる株主の議決権数を基準にしているのに対し、可決の要件は、決議事項によって異なるが、いずれも次のように出席した株主の議決権数が基準となっている。

普通決議は過半数で決議
普通決議とは、出席株主の議決権の過半数の賛成で成立する決議である。法律や定款に特別の定めがない場合には、この方法で決議する。

特別決議は3分の2以上で決議
特別決議とは、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立する決議である。定款の変更や資本金の額の減少など重要な事項については、この決議方法による。

決議を得る方法については、総会自体で選択すればよい
株主総会は会議体であるから、会社側の提案について十分な説明と質疑が行なわれた後では、最終意思を確定しなければならない。これが採決といわれるものであるが、株主総会における採決の方法に関しては、商法に特別の定めは設けられていない。したがって、どのような方法によって決議を得るかは、総会自体で選択すればよいのである。
なお、取締役会が認めれば、総会に出席しない株主が総会の前日までにインターネットを通じて電子投票をすることも可能である。

採決方法は投票、起立、挙手、拍手など何でもよい
会議体における採決の方法としては、書面による投票、起立、挙手、拍手など、参加者の意思が明確に確認できる方法であれば何でもよい。
採決の方法は、最終的には株主総会の選択によって決定される。議長は総会の意思に反することのない方法によって採択すればよいのである。

議長は「採決に入る」ことを宣言し、採決の方法も告げる
議長は、質疑が十分に尽くされたと判断したら、まず採決に入ることの可否を総会にはかるべきで、総会の承認を得たうえで採決を行なう必要がある。議長は「採決に入る」ことが議場で明確に認識されるように宣言し、採決の方法も告げなければならない。

議長は採決の結果および決議の成否についても宣言する
そして、採決の結果および決議の成否についても宣言することを要する。採決の方法が拍手による場合には、賛否の詳細が明確性に欠けるので、「満場一致」とか「絶対多数」といった表現は避けるべきである。

賛否が接近しているときは書面による投票を実施する
議案に対する賛否が接近しているときには、拍手、挙手といった不明確な採決方法によらず、あらかじめ用紙を用意しておき、書面による投票を実施して疑義の起きないように運営すべきである。

<< 委任状(議決権行使書)の取扱い方 >>

法人株主が議決権を行使する場合は委任状によって行なう
会社などの法人株主が書面投票制度により議決権を行使し、または委任状勧誘に応ずる場合には、その法人の代表者名義の議決権行使書面または委任状によって行なわれる。

書面への記名捺印の印鑑は、代表者の届出印鑑を用いる
これらの書面への記名捺印の印鑑は、代表者の届出印鑑を用いるが、印影を照合することによって書面の真正な成立が肯定される。

用紙に記名捺印があれば、議決権を行使させても会社に責任はない
株主が多数でその移動も激しい会社では、開催日の直前に送られてきた多量の委任状や議決権行使書面について短期間のうちに届出印と照合することは困難である。
そのため会社が送付した用紙に株主の記名捺印があれば、一応、株主が真正に作成したものとして取り扱っているのが実情である。印鑑照合を行なうことが現実に困難である以上、委任状の真否につきとくに疑わしい事情がない限り、このような取り扱いによって議決権を行使させても、会社に責任はない。

法人株主がその従業員を代理人とする場合は委任状が必要
法人株主がその従業員を代理人として議決権を行使させる場合には、原則として株主である法人代表者名義の当該従業員を代理人とする旨の委任状を必要とする。

総務部長等の場合は委任状を必要としない
ただし、会社の支配人および総務部長等のように商業使用人として特定の範囲内での一般代理権を認められる者は、その権限に基づいて法人の有する株式につき議決権を行使することができ、代表者名義の委任状を必要としない。

従業員が総会に出席する場合は「職務代行通知書」を提出する
実際に従業員が総会に出席する場合には、委任状の代わりに、「職務代行通知書」とか「権限授与通知書」といった書面が提出されている。これは、法人株主の従業員による議決権行使は、議決権の代理行使ではなく、法人代表者の議決権行使を代行するという考え方に基づくものである。

株主総会終了後は、株主に決議通知を送付する
株主総会が終了すると、株主に決議通知を送付するのが一般的な慣行となっている。これは法律上の義務とはなっていないが、上場会社では慣例化している。

報告事項と決議事項に区分して、決議の結果を知らせる
通知の方法については、法律で定められているわけではないので、各社が自由に決定してよいのだが、当日の議事に関し報告事項と決議事項に区分し、その内容と決議の結果を知らせるとともに、配当案内を行なうのが通例である。

委任状は総会終結の日から3か月間備え置き、株主の閲覧に供する
総会終結の日から3か月間、総会に提出された議決権行使書および委任状を本店に備え置かなければならない。これは決議取消しの訴えを提起しようとする株主が、定足数が確保されていたか、賛否の認定は適正であったかを調査できるように、との趣旨で認められている。
株主は営業時間内であれば、いつでも閲覧・謄写を求めることができる。

著者
堀越 董(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。