ビジネスわかったランド (総務・庶務)

株主・株式・役員事項

株主総会の招集権者は?
 株主総会の招集の決定に従って招集通知を発するのは代表取締役である。

通常は、定款で社長を招集権者と定めているが、このような定款の定めがなくても、取締役会ないし取締役の決議に基づき株主総会を招集するのは会社の業務の執行行為であり、代表取締役の権限で行なうことができる。
したがって、正式に株主総会の招集が決定されても、代表取締役以外の取締役が株主総会を招集した場合は、違法な招集手続きということになる(株主総会招集の決議がありながら、招集権者でない者が招集をする場合というのは、何らかの紛争がある場合に限られるであろう)。

●万一に備え、定款で代行者を
ただし、招集権者である代表取締役が病気や事故の場合には、現実問題として代表取締役が招集手続きを取れないということが起きる。
具体的な招集手続きは、招集通知の作成とその発送という事務的なことであるため、病気や事故の場合であっても、代表取締役の指示に基づいてこれらの事務がなされるときは、担当者が代表取締役名で招集手続きを行なうことは差し支えない。

しかし病気や事故が重大な場合、さらには代表取締役が死亡した場合は、代表取締役の指示に基づくことができない。
このような場合は、一般的には後任の代表取締役の選定という手続きにより対処しなければならないが、株主総会だけに限っていえば、次のように定款で代行者を予め決めておくことにより対処できる。

(1)株主総会は、社長がこれを招集し、かつ議長となる。
(2)社長に事故があるときは、取締役会で定めた順位により他の取締役がこれに代わる。

●少数株主が裁判所の許可のもとに招集する場合の招集権者
少数株主には、一定の要件のもとに株主総会の招集請求権が認められているが、株主の請求を受け入れて会社が招集する場合の招集権者は、やはり代表取締役である。一方、株主からの請求があっても、会社が招集しないため株主が裁判所の許可を取って招集する場合は、その株主自身が招集権者となる。

代表取締役が招集権者であるといっても、取締役会ないし取締役の決議に基づいて招集をするのであり、その決議を経ないで代表取締役が独断で招集手続きを行なうのは違法である。
代表取締役の独断で株主に招集通知が送られ、たとえ総会が開かれ決議がなされても、後日決議取消しの訴えによりその決議が取り消されることがある。
取締役会の決議もなく、招集権者でないものが株主総会を招集しても、通知を受けた株主は不信を抱き、出席もしないであろう。
招集通知は株主に出席の機会を与えるための重要な手続きであり、たとえ一部の株主が集まったとしても、それは株主総会とはいえず、決議をしたとしても総会決議不存在確認の訴えが起こされることになる。

●取締役会の決議なしでも株主総会が成立する場合とは
しかし、代表取締役が取締役会ないし取締役の決議を経ないで株主総会を招集した場合、また招集権者でないものが株主総会を招集した場合でも、株主全員が出席し、株主総会を開催することに同意したときはどうか。
株主がごく少数の会社では、このようなケースが起こり得るが、株主総会の招集手続きに関する会社法の規定は、株主の保護のために設けられているものであり、株主全員が同意している場合は、会社法で定める招集手続きは省略できる。

このように株主全員が出席し、株主総会を開くことに同意する場合は、「全員出席総会」としてその効力が認められている。
したがって「全員出席総会」の効力が認められているので、株主全員が出席している場で株主総会を開くことを提案し、株主全員が同意した場合は「全員出席総会」を開催できるが、代表取締役が取締役会ないし取締役の決議を経ないで招集してもよいとか、招集権者でない者が招集してもよいということではない。
この場合は、違法な招集手続きであっても、結果として株主全員が出席し、株主総会の開催に同意すれば、招集手続きの不備が問われなくなるということであり、初めから有効な手続きではないことに注意しなければならない。

矢野眞之(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。