３分以内を目標に、晴れ晴れとした印象を与えるように心がける。

祝辞は晴れ晴れとした印象を
祝辞でいちばん大切なのは、晴れ晴れとした印象を与えること。招待された式典にふさわしい調子で、明るいほめ言葉をちりばめながら、明確に表現するようにしたい。

祝辞の目安は３分以内
できるだけ避けたいのは、ただ堅苦しいだけの祝辞と、だらだらとした長談義。
あらかじめ祝辞の依頼を受けているのなら、前もって、だいたい３分以内くらいで要領よくおさまるように、準備しておく必要がある。

依頼がなくても一応の準備を
前もって祝辞を述べてくれという依頼がなくても、突然の指名ということも十分あり得る。そんなときにまごついてしまわないよう、ある程度の心の準備はしておいたほうがよい。
そうしないと、洗練された個性的な祝辞が話せないのはもちろんのこと、場所柄をわきまえない不用意な発言をしたり、忌み言葉を言ってしまったりして、とんだ悪印象を与えてしまうことにもなりかねない。
ここでは、創立記念式典での祝辞の例をあげておく。

祝辞例
本日、このようなおめでたい式典にお招きいただきましたうえ、晴ればれしくお祝いを申し上げる機会を得ましたことは誠にありがたく、身に余る光栄と、大変恐縮いたしております。
まずは、創立○○周年を迎えられまして、誠におめでとうございます。衷心よりお祝い申し上げます。
こちらさまの今日のご繁栄は、ご創業以来の社是「和をもって貴しとなし、斬新独創を重視する」を、全社に徹底した気風として築いてこられた賜であります。この気風は、社風の一面でもあります。
このことは日頃、訪問するたびに、こちらほど社内の和やかな雰囲気があふれているところはないのではないかと、いつも羨ましく思っておりました。
それでいながら業務では、部門が異なりますと、まるで競争会社同士のように、斬新独創の競合いが感じられ、それが業績向上に反映するといった具合で、敬服のほかありません。
通常、生産会社ですと営利追求が先になるものでありますが、こちらは目先の生産よりも、未来の宝を産み出す基礎研究に、他社が真似できないほど予算を重点投入し、人材も惜しまない姿勢を、一貫してこられたことが、結局は今日の盤石を築かれたものと推察いたしております。
こうしたことは、社長さんお一人のご方針というより、社員の皆さん全員のご同意とご協力があってのことであります。
まさに、「道に迷わず来た　不思議な日のきょうちくとう」であります。これは、俳人・高浜虚子の盟友にして生涯のライバルであった河東碧梧桐の句でありますが、こちらさまがいまの姿勢をもち続けられる限り、さらに繁栄が約束されるでありましょう。
「道に迷わず来た　不思議な日のきょうちくとう」、この句を披露し、心からお祝いを申し上げます。
一層の和の気風と斬新独創の力強い行進をお祈りして、創立○○周年おめでとうの言葉を結びます。

著者
伊藤　治男（作法研究会代表）