ビジネスわかったランド (総務・庶務)

取引先付合いの心得

弔辞はどんな点に注意したらよいか
 弔辞とは、葬儀・告別式で、参列者を代表して亡くなった方に言葉を捧げることである。心がこもっていることが何よりなのはいうまでもないが、そこには重ね言葉は使わないなど、次のようにいくつかの約束事が存在する。

口調はあくまでも深く、静かに
弔辞は、何といっても故人の霊を慰めるためにある。したがって、声を張り上げるのではなく、深く静かな口調を心掛けたい。できれば、会場に染み入るような感動の広がりを感じさせられればいうことはない。

故人の生前の功徳を誉めたたえる
弔辞は、故人のためであると同時に、また遺された者のためにもある。キリスト教の葬儀では、弔辞が霊前に向かってではなく、喪主・遺族に向かって読み上げられるのも、そういう意味が含まれている。
遺族を慰め励ますという意味でも、故人の生前の功徳を誉めたたえることを第一と考えるべきであろう。

重ね言葉は使わない
弔辞では、不幸が重なることを嫌って、「重ね重ね」「返す返すも」「またまた」「なおまた」「いろいろ」「再び」といったような重ね言葉は使わないようにするのがマナーである。
なお、弔辞の中で「死去」という言葉が、いかにも粗末に感じられるようなら、「永眠」「明幽境を異にし」「他界」「ご逝去」などを使い、長命でなくなったならば「天寿を全うし」などという言葉にすればよいであろう。なお、「逝去」は死去の尊敬語だから、身内には使わない。

弔辞は霊前に供える
読み終えた弔辞は、霊前に供えられるのが一般的だ。弔辞を読み上げたのち、上包みして、霊前に表書きを向けて卓上に供え置くのである。
関係先の葬儀に際しての弔辞には、次のようなものが考えられる。

弔辞例
○○株式会社会長○○殿の社葬を営まれるに際し、衷心より哀悼の意を捧げます。
この夏、体調を損なわれご静養中とは伺っておりましたが、あまりにも突然の訃報に接し、わが耳を疑う思いをいたしております。
○○殿は、厳父であり創業者であった故○○前会長の気宇壮大な気概と名声をよく継承され、類をみない独創力と果敢な決断力により、貴社を今日に見られる業界有数の大会社に育て上げる見事な業績を成し遂げられました。
貴社の一取引業者として当社も、○○会長には永年にわたり親しくご指導を受けて参りましたが、永眠されましたいま、故人の冷静な視野の広さと柔軟な経営姿勢のご指導は、環境激変の今日におきまして、一段と含蓄のあるお教えであったと脳裏に深く染みわたる感動に震えております。
その偉大な経営者を失われました貴社幹部をはじめ全社員各位のお悲しみはいかばかりかと、拝察申し上げております。
しかし、故人となられた○○会長の高邁な経営理念と壮大な足跡は、貴社全社員各位の胸に永久に生き続け、貴社の着実な前進の原動力となるでありましょう。
このうえは、どうか、○○会長殿の生前死後の隔てなく、私どもをお見守りいただけますよう、お願い申し上げます。
敬愛する故○○会長のご冥福を心から祈念申し上げて、弔辞といたします。

著者
伊藤 治男(作法研究会代表)