ビジネスわかったランド (総務・庶務)

取引先付合いの心得

水引・上書きの常識は
 水引の結び方は、結婚や弔事の場合は2度とないことを願って結び切りにし、喜びが重なることを願う慶事は蝶結びにすることなど次のような常識は、ぜひとも知っておくべきである。

<< 懸紙と水引のつけ方 >>

最低限の心得がないと恥をかくことに
通常一般には、市販品の金包みで済ませたり、贈答品の調達先で包ませてしまう場合が多いのだが、その場合でも、依頼する側に一応の心得がないと、無知をさらけ出すことになり、大恥をかくことにもなりかねない。

贈答金品の折形は、約600年前に将軍足利義満が定めたもの
贈答金品の折形は、約600年前に足利義満将軍が、伊勢、小笠原、今川の三家に研究させて制定した礼法に基づいており、正式な折形は、それを見ただけで中身がわかるほどである。

自分で包む場合の最低限の心得は
しかし、一般にはこれほど厳密な折形をする必要はないだろう。市販の出来合いのもので済めばそれでよいが、ここでは自分で包む場合に最低限心得ておくべき折形を説明しよう。

懸紙のかけ方
懸紙のかけ方については、まず次の図表を見ていただきたい。

正式な懸紙は、奉書、杉原紙で、慶事には喜びが重なるのを願って2枚重ねにする。一方、弔事においては、これっきりの不幸で済むのを願って1枚だけを使う。
品物の表を下に、紙の真ん中に置き、着物の襟を重ねる要領で、左から折り、右に重ねる。
なお、慶事の場合に限り、品物が小さいときは、1枚の紙を2つ折りにして、折り目が手前になるようにして包んでもよい。

水引の掛け方と熨斗(のし)のつけ方
水引の掛け方については、次の図表をごらんいただきたい。

水引は、慶事用の紅白、金銀、弔事用の黒白、黄白など種々あるが、結ぶときはいずれも色の濃いほうを右にする。

結婚と弔事は結び切り、喜びが重なることを願う慶事は蝶結び
結び方は、将来2度とないように願う結婚と弔事は結び切りにし、長すぎても切り捨てず、輪にして先をからませる。喜びが重なることを願う種類の慶事は蝶結びとする。

海産物には「熨斗」はつけない
熨斗は、先方が「伸びる」ことを願ってつけるが、これはあわびの代用だから慶事でも海産物や鳥類の贈答品にはつけない。

病気見舞いにも「熨斗」はつけない
弔事は生臭さを嫌うところから一切「熨斗」をつけない。また、病気見舞いにも「熨斗」はつけずに済ませる。

<< 現金の包み方と上書きの作法 >>

現金を贈るときの心得
現金を贈るのは、原則として同輩か年少者。ただし、お祝いや香典、見舞いの場合には、目上に対してでもかまわない。

現金の包み方(正式の場合)
現金の包み方は、中包みと外包みに分かれるが、それぞれの折り方を図表で示そう。


正式には半紙で中包みをし、さらに奉書紙で外包みをして、水引をかけ、必要なら「熨斗」をつける。中包みは慶事と弔事で包み方が異なるので注意が必要である。

現金の包み方(略式の場合)
略式では、市販のもので、中包み用の封筒と熨斗袋がついたもの、中包み用の封筒に熨斗と水引をつけたものなどがあるが、贈る額や相手によって適当なものを選ぶ。

上書きと名前の書き方
上書きは、折形の中央上段にやや大きめに書き、贈る側の名前は折形の中央下段か、そのやや左寄りの位置に、フルネームをやや小さめに、すべて筆書きする。
次に、書き方見本を図で示したので、ごらんいただきたい。


贈る先が連名の場合と送り主が連名の場合
贈る先が連名の場合は、上部左側から上位の順に書く。また、贈り主が連名の場合は、下段右側から上位より下位に書くか、あるいは下段中央に代表者の人の名前を1名だけ書き、「ほか一同」と、その左側に小さく添え書きする。

肩書きを書くときは
贈り主の肩書きを書くときは、名前を下段中央に書き、肩書きはその右上にくるようにやや小さめに書く。

弔事の場合は、墨をお茶ですり、薄墨色で書く
略式では名刺を用いることもあるが、その場合、名刺は左下に貼り付ける。
なお、表書きは筆を使うが、弔事の場合は、墨をお茶ですり、薄墨色で書く。最近では、弔事用の薄墨も市販されている。

著者
伊藤 治男(作法研究会代表)