ビジネスわかったランド (総務・庶務)

商取引の法律

相手が契約に違反したときの対応は
 相手が契約を履行しないときは、債務の履行を命じた判決に基づく強制執行、契約の解除といった対抗手段がある。

相手が契約を履行しないときの債権者の権利
契約によって、債権者は債務者に対して一定の行為を要求する権利をもつことになる。債務者が契約を履行しない場合は、具体的に次のような権利を行使できる。


損害賠償の範囲は
相手方に契約違反があるとき、それによって受けた損害を賠償することを請求できる。
ここで、問題になるのは、賠償すべき損害がいかなる範囲のものであるか、ということである。
契約違反によって生じた損害といえば、その契約違反との間に因果関係がなければならない。この因果関係のある損害、つまり債務者が契約の本旨に従った履行をしたならば、この損害は生じなかったであろうという関係に立つ損害は無限に拡大していく。

民法の規定
そこで、民法では、損害賠償の範囲と損害請求ができるケースについて、次のように規定している。
「債務不履行(契約違反)によって生ずべき損害の範囲内で賠償させる」
「特別の事情によって生じた損害については、当事者がその事情を予見しまたは予見することができたはずであるというときにのみ、賠償請求ができる」

契約解除による実益
契約の解除とは、契約が初めから存在しなかったことにする意思表示である。
解除の実益は、当事者の一方が債務を履行しない場合に、相手方も自己の債務を免れるというところにある。
つまり、売主が目的物を引き渡さないときには、買主はその履行を求めることも損害賠償の請求もでき、しかもこれらを強制執行によって実現することも可能である。
しかしその際には、買主は自己の債務を履行する義務を負っている。相手方に目的物の引渡しを請求する以上、自己も代金支払債務を履行しなければならないのは当然である。
契約を解除してしまえば、自己の債務は消滅し、また代金を支払っていなければその義務は免れ、すでに支払っていれば返還を求めることができる。

自己の債務消滅と損害賠償の2つのメリット
期限までに目的物を引き渡さない売主に、いくら債務の履行を求めても、いつ実現するかわからない。それよりは、契約解除によって代金支払債務を消滅させ、他から同一の物を買い受けることによって本来の目的を達成するほうが適切といえるのである。
契約違反を理由として契約を解除すると、自己の債務が消滅するうえに、相手方の不履行によって生じた損害については賠償請求権を行使できるわけで、契約解除の実益は大きいものがある。

条件を付けるときの留意点
契約解除と損害賠償請求を同時に行なう場合の通知文例を示すと、次のとおり。

解除権は相手方に対する意思表示によって行使される。解除権の行使に当たっては、相手方を不当に不利益な状態にする条件を付けることは許されないが、相手方にとって不利益でない条件は認められる。
たとえば2週間以内に履行してくれなければ契約を解除する場合、「2週間以内に履行しなければ」というのは条件のようにみえるが、これが付いているからといって相手方に不利益はないので、このような条件は当然有効とされ、日常数多く行なわれている。

著者
堀越 董(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。