ビジネスわかったランド (総務・庶務)

商取引の法律

土地を購入するときの注意点は
 土地の購入時には、まず登記簿謄本で、売主に所有権登記がされているかどうかを調べる。さらに、仮差押え・仮処分登記や仮登記の有無、抵当権や借地権などに関する記載がないかを確認する。このほか、都市計画法や建築基準法などの規制を受ける土地かどうかの確認も必要である。


<< 土地の所有権者は本当に売主か >>

まずは登記簿謄本で確認
まず、はじめに確認しなければいけないことは、登記簿謄本を取り寄せて、売主に所有権登記がなされているかどうか、つまりその土地は本当に売主が所有しているものなのかという点だ。なかには所有権もないのに偽って土地を売ろうとする者もいるからである。
登記簿謄本は「表題部」「甲区」「乙区」に分かれているが、土地の所有権に関する記載があるのは甲区なので、まずこれをチェックする。
ここで、最後の所有者欄に売主の名前が記載されていれば、とりあえずは売主が現所有者ということになる。
万が一だまされた場合は、裁判に訴えることもできるが、できればトラブルは未然に防ぎたい。購入前にしっかり登記簿謄本をチェックしておくのがいちばんである。

登記簿を過信するなかれ
ただし、登記簿に記載されていることは絶対ではない。売主が登記されていても、真の所有者は別にいるというケースもあり、そのような場合、買主の権利は保護されず、売買契約が無効になってしまうこともある。
たとえば、次のようなケースである。
売主Aが、土地の真の所有者Cがいるにもかかわらず、書類を偽造してA名義の所有権登記をし、買主Bに土地を売ろうとするような場合である。買主Bは、Cの存在を知らず、Aの登記を信頼して土地を買い、所有権登記をした。その後、真の所有者であるCがその事実を知り、所有権に基づいて、買主Bに対して登記抹消請求をしてきたら、Bはそれに応じざるを得ないのである。
現行の法律では、登記を信じて取引を行なった善意の第三者を保護する効力(公信力)が認められていないからである。
しかし、売主が二重に土地を売ったようなケースでは、先に所有権の移転登記をしたほうが優先される。これは、登記には、登記をしたものを権利者と見なす効力(対抗力)があるからである。

場合によっては実地調査も必要
したがって、場合によっては、登記簿謄本だけをあてにするのではなく、それを参考にしながら、自ら実地調査を行なう必要もあるだろう。
登記簿謄本の甲区欄には、これまでの所有権の流れが番号順に記載されているので、現在の登記者(売主)の直前に書かれている所有者から、所有権移転の事実確認やその経緯などを聞き出せば、さらに確実に真の所有権者を特定できるだろう。

<< 仮差押え・仮処分登記や仮登記がなされていないか >>

所有権者とともに、登記簿の甲区欄でもう1つチェックすべきなのが、仮差押え・仮処分登記と仮登記の有無である。
仮差押え・仮処分登記というのは、土地所有者が裁判上のトラブルに巻きこまれ、その土地の処分に制限がついていることを意味するので、こうした土地は避けたほうが無難だろう。
また仮登記とは、現状では本登記をするための要件が満たされていない場合に、後日行なう本登記の順位を確保するために行なうものである。売主が仮登記権利者となっている仮登記がついている土地は、売主に本登記をするように促して、それが済んでから購入すべきである。第三者が仮登記権利者となっている場合は購入しないほうが無難。

<< 抵当権などの担保関係 >>

登記簿謄本の乙区欄は、抵当権、借地権、地上権、質権、永小作権など、所有権以外の第三者による土地の権利関係が記載されている。このような権利が記載されている土地は、所有権が制限されている土地である。
だから、乙区欄に登記があるような土地を買う場合は、所有権の移転登記を受けるのと同時に、乙区欄に記載されている権利を抹消してもらうようにしないと、後々のトラブルの種となってしまう。

<< 都市計画法による規制はあるか >>

土地は、権利関係のほかに、公法上の様々な規制が施されていることがある。買おうとしている土地にどのような規制があるのかを把握していないと、買ったはいいが何の役にも立たない、という事態にもなりかねない。この点もチェックが必要である。
まずは、「都市計画法」による規制を調べる。この都市計画法というのは、都市計画を定める対象となる地域を、都市計画区域として規定する法律。都市計画区域とされていると、土地の利用法がある程度制限されるので、注意が必要だ。
また、都市計画区域をさらに、市街化区域と市街化調整区域に区分することもある。
市街化区域は、市街地を形成している地域、および、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域で、用途地域など土地利用を前提とした都市計画が定められている。また市街化調整区域は、反対に市街化を抑制すべき区域のことで、土地利用は大きく制限されている。

<< 建築基準法による規制はどうか >>

土地を規制する法律で、もう1つ代表的なものが「建築基準法」だ。これは、建築物の敷地、構造、設備等について、安全上の観点から基準を設けた法律である。

敷地と道路の関係
都市計画区域内では、建築物の敷地は、安全上支障のない場合を除き、道路に2メートル以上接していなければならない。
また、建築基準法でいう道路とは、原則として幅4メートル以上で、次のいずれかに該当するものをいう。
1.道路法、都市計画法、土地区画整理法等による道路
2.法が適用された際すでにあった道路
3.公道として2年以内につくられる予定のもので、特定行政庁が指定した道路
4.一定の技術的基準に適合する私道で、特定行政庁から位置の指定を受けた道路
なお、以上に該当しなくても、法が適用されたときに現に建築物が建ち並んでいる幅4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものは道路と見なされる。
ただし、その際には、原則として道路の中心線から2メートル後退した線を道路境界線と見なされ、この後退部分は、容積率や建ぺい率を計算する際に敷地面積に含むことはできなくなる。

用途地域内の建築物の用途制限
建築基準法では、用途地域が分類されており、それぞれの地域によって、建築できる建物に制限がある。
たとえば、第一種低層住宅専用地域では、建物の高さは、地域により、12メートルまたは10メートル以下のものしか建てられない、などである。
土地を取得しようとする際には、こうした規制関係にも十二分に配慮しなければならない。

著者
當山 泰雄(弁護士)
2010年1月末現在の法令等に基づいています。