ビジネスわかったランド (総務・庶務)

商取引の法律

継続的売買契約書の作成ポイントは
 継続的に取引を行なう場合は、取引数量や金額も大きくなる。したがって、契約に当たっては、担保として不動産への根抵当権設定、保証金の差入れ等を買主側に要求するケースが多い。こうした点を契約書にきちんと盛り込んでおくことが大切である。

継続的売買契約とは
継続的売買契約とは、1年間といった一定の期間、あるいは「需要が継続している間」というような不定の期間、特定の物または一定の種類・品質を有する物を、一定の代金で継続的に供給する契約のことである。
継続的売買契約は1個の売買契約であるが、企業間において継続的に取引が行なわれる場合には、個々の取引に共通する基本的事項についてはあらかじめ約定をしておき、取引の代金、数量など取引ごとに変化する項目についてはそのつど決定する方式がとられている。この基本的約定が「売買基本契約」といわれるものである。
売買基本契約には、継続的取引に関する基本的事項が定められているとともに、「甲は○○を継続的に売り渡すことを約し、乙はこれを買い受けることを約した」という趣旨の条項が設けられることが多い。
この条項により、売主は継続的商品供給の義務を負い、買主には商品の継続的買受けないし義務が生ずることになる。
継続的売買契約書の書式を示すと、次のとおり。


継続的売買契約書の必要事項
継続的売買契約においては、売主は買主の代金支払債務の担保として、不動産に根抵当権を設定したり、保証人を求めたり、また、保証金の差入れを要求するケースが多い。
これは、継続的に取引を行なう場合、取引数量もかなりのものとなり、代金総額が大きなものになるため、売主としては代金支払いの確保が最大の関心事になってくるからである。
保証金を入れさせる場合には、契約書の文言の第5条の部分を次のような条項にする。
「乙は本契約から生ずる債務および損害賠償債務の履行を担保するため、金1,000万円を取引に基づく保証金として、甲に預託する。この保証金には金利をつけず、本契約が終了した際は、債務および損害賠償金があればこれを控除した後、乙に返還する」

継続的売買契約は簡単に契約解除できない
継続的な取引関係においては、買主は売主から順調に商品が流れてくることを前提に商売しているケースが多い。
このような状況下で、買主の信用に不安を感じたからといって、直ちに契約解除をしたり、出荷を停止するのは問題である。
継続的商品供給契約においては、契約関係の安定継続に基礎を置いているので、単発の売買と異なり、簡単に契約を終了させることはできない。つまり相互の信頼関係を著しく破壊するような不信行為があるときにのみ契約を解除することができる、というのが一般的な考え方である。
したがって、軽微な契約違反を理由に解除すると、逆に損害賠償の請求を受けることにもなりかねない。

出荷停止ができるのは支払いが滞ったとき
では、重大な契約違反とは何かというと、売買契約における買主の最大の義務は代金支払債務であるから、これを怠ることは信頼関係を破壊するに足る契約違反といえる。買主に代金不払いがあった以上、売主は対抗上、以後の出荷を全面的に停止できる。

いきなり全面停止は行き過ぎ
また、両者の信頼関係を維持するうえで、売主が買主の信用に疑問を感ずるについて合理的な理由があった場合、売主は買主に対しその財務内容の調査を要求できると考えられている。
したがって、契約解除の前に、買主に対する財務内容の開示と、納得できる説明を求めることも必要で、買主が正当な理由なく拒絶するときに出荷停止を決断するといった配慮が望まれる。いきなり全面的に出荷停止するのは避け、除々に取引量を減じていくのも1つの方法である。

著者
堀越 董(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。