ビジネスわかったランド (総務・庶務)
車両、什器備品管理事項
マイカー通勤を認めるときの注意点は
社員がマイカーで通勤しているときに起こした交通事故でも、場合によっては会社側に損害賠償責任が課せられることがある。やむを得ずマイカー通勤を許すにしても、次のように管理体制は万全を期しておきたい。
マイカーの利用状況の把握が大前提
社員のマイカー利用管理の大前提は、マイカーの利用を会社が的確に把握していることである。会社の知らぬ間に、社員がマイカーを使い事故を起こしてしまうのが、最も避けなければいけない事態である。
そのためには、通勤や業務に会社に無断でマイカーを利用して事故を発生させた場合には、処罰や社内の処分をされるおそれがあることを、社内に周知徹底させておくことも重要である。
マイカーは通勤だけに許可するのがよい
マイカーを自宅と会社の行き帰りのみに利用し、業務との関連性がない場合には、通勤途上の自動車事故に、会社の損害賠償責任は問われない。したがって、社員にマイカー使用を許可するにしても、可能な限り、それを通勤のみに限定しておいたほうがよい。
そして大事なことは、そうした規定をきちんと作成しておくことである。いくら口頭で通勤以外の使用禁止をうたっても、明文化された規定がないと、暗黙の了解があったのではないかと思われることもあるからである。
<< 従業員車両管理規定の中身は >>
通勤にマイカー使用を許可する場合の、従業員車両管理規定を整備する場合は、次のような条項を盛り込むことが必要だ。
許可基準、資格
運転経験年数や車種、マイカー通勤の必要性等により、マイカー通勤を認めるうえで一定の基準を設けることが大切で、誰にでも許可するのは避けるべきである。
禁止事項
通常、次のようなことは、はっきりと禁止事項としてあげておくべきである。
1.業務上使用の禁止(業務上の使用を認めるのは特殊な場合に限る)
2.道路交通法違反その他危険運転の禁止
3.許可事項以外の使用禁止
4.飲酒運転の禁止(飲酒することが予想される場合も含む)
5.過労、疾病の際の運転の禁止(長時間の残業、深夜勤務が見込まれる場合等を含む)
6.許可車両以外の車両使用禁止
7.自己以外の使用禁止
許可取消基準
次のような、許可取消の基準も明記しておくべきである。
1.使用の必要性が消滅したとき
2.道路交通法違反その他危険運転をしたとき
3.自己の過失に基づく交通事故を発生させたとき
4.その他許可基準に違反したとき
5.許可申込みの基準に該当しないことが判明したとき
任意保険の加入義務
マイカーを通勤に使用させる際には、必ず任意保険に加入させ、加入していない者は使用を許可すべきではない。
事故発生時の処理手順
万一事故が発生した際に社員がすべき次のような項目を、規定の中で明記し、しっかりと把握させておく必要がある。
1.事故発生の際の届出
2.事故発生のてん末書作成義務
3.事故発生に伴い会社が損害賠償義務を負った場合の求償等
4.その他
使用許可期間
許可期間についても、3か月~1年程度の期間に限定し、必要があれば更新させるようにする。そうすれば、更新時に再びチェックすることができる。
誓約書の提出
本許可規定や交通法規を遵守する旨の誓約書を提出させるようにしたい。
<< どうしても業務にマイカーを利用するときは >>
基本的には、マイカーは通勤のみに利用を許可すべきだが、状況によっては、業務用に利用せざるを得ない場合もあるだろう。そのような場合には、次のようにより細心の管理が必要になる。
使用許可申請書等の作成
マイカーがどのような状況で使用されているのかを、会社が把握しておくためにも、マイカー使用許可申請書などの定型的な書式を作成し、上司や総務部等に提出させ、上司の許可を得るようにする。これに、使用目的、日時、経路、同乗者の有無等を記載させるのである。
なお、恒常的にマイカーを業務に使用する場合と、単発的に使用する場合とがあり得るので、それぞれ異なる書式を用いるなどの工夫をすれば、より管理しやすくなるだろう。
また、接待その他の目的で遠方で使用したり、休日、時間外で使用する場合もあるので、それらも的確に把握できるようにしておきたい。
運行日誌、日報等の作成、提出
事前の許可申請と同時に、使用後にも運行日誌や日報などの報告書を提出させる。事前の申請だけでは、ともすれば申請書を出しさえすればよいという考えになりがちだからである。
日誌や日報を提出させれば、使用に対しても慎重になり、事後に使用状況をチェックすることもできる。
運転者を所有者である社員に限定する
これは、通勤利用の場合も同じだが、マイカーは、会社の所有車に比べ、管理や整備状況にばらつきがある。マイカーの癖を最も知っているのは当然その所有者であり、愛着もあり、運転には慎重になるであろう。したがって、たとえ業務に使用するとしても、運転者はその所有者である従業員に限るべきである。
また、所有者以外の者に使用させることは、従業員間のトラブルのもとともなる。
任意保険の加入義務
これも通勤利用の場合と同じで、やはり何らかの処置を講じておくべきである。場合によっては、会社が保険契約者となって、任意保険を締結するまでの配慮も必要である。
規定の作成
以上のような点も含めて、しっかりした管理規定を定めておく必要がある。基本的な内容は通勤利用の場合と同じだが、業務に使用するという点での特記事項などにも工夫しておくべきである。
著者
榎本 哲也(弁護士)
マイカーの利用状況の把握が大前提
社員のマイカー利用管理の大前提は、マイカーの利用を会社が的確に把握していることである。会社の知らぬ間に、社員がマイカーを使い事故を起こしてしまうのが、最も避けなければいけない事態である。
そのためには、通勤や業務に会社に無断でマイカーを利用して事故を発生させた場合には、処罰や社内の処分をされるおそれがあることを、社内に周知徹底させておくことも重要である。
マイカーは通勤だけに許可するのがよい
マイカーを自宅と会社の行き帰りのみに利用し、業務との関連性がない場合には、通勤途上の自動車事故に、会社の損害賠償責任は問われない。したがって、社員にマイカー使用を許可するにしても、可能な限り、それを通勤のみに限定しておいたほうがよい。
そして大事なことは、そうした規定をきちんと作成しておくことである。いくら口頭で通勤以外の使用禁止をうたっても、明文化された規定がないと、暗黙の了解があったのではないかと思われることもあるからである。
<< 従業員車両管理規定の中身は >>
通勤にマイカー使用を許可する場合の、従業員車両管理規定を整備する場合は、次のような条項を盛り込むことが必要だ。
許可基準、資格
運転経験年数や車種、マイカー通勤の必要性等により、マイカー通勤を認めるうえで一定の基準を設けることが大切で、誰にでも許可するのは避けるべきである。
禁止事項
通常、次のようなことは、はっきりと禁止事項としてあげておくべきである。
1.業務上使用の禁止(業務上の使用を認めるのは特殊な場合に限る)
2.道路交通法違反その他危険運転の禁止
3.許可事項以外の使用禁止
4.飲酒運転の禁止(飲酒することが予想される場合も含む)
5.過労、疾病の際の運転の禁止(長時間の残業、深夜勤務が見込まれる場合等を含む)
6.許可車両以外の車両使用禁止
7.自己以外の使用禁止
許可取消基準
次のような、許可取消の基準も明記しておくべきである。
1.使用の必要性が消滅したとき
2.道路交通法違反その他危険運転をしたとき
3.自己の過失に基づく交通事故を発生させたとき
4.その他許可基準に違反したとき
5.許可申込みの基準に該当しないことが判明したとき
任意保険の加入義務
マイカーを通勤に使用させる際には、必ず任意保険に加入させ、加入していない者は使用を許可すべきではない。
事故発生時の処理手順
万一事故が発生した際に社員がすべき次のような項目を、規定の中で明記し、しっかりと把握させておく必要がある。
1.事故発生の際の届出
2.事故発生のてん末書作成義務
3.事故発生に伴い会社が損害賠償義務を負った場合の求償等
4.その他
使用許可期間
許可期間についても、3か月~1年程度の期間に限定し、必要があれば更新させるようにする。そうすれば、更新時に再びチェックすることができる。
誓約書の提出
本許可規定や交通法規を遵守する旨の誓約書を提出させるようにしたい。
<< どうしても業務にマイカーを利用するときは >>
基本的には、マイカーは通勤のみに利用を許可すべきだが、状況によっては、業務用に利用せざるを得ない場合もあるだろう。そのような場合には、次のようにより細心の管理が必要になる。
使用許可申請書等の作成
マイカーがどのような状況で使用されているのかを、会社が把握しておくためにも、マイカー使用許可申請書などの定型的な書式を作成し、上司や総務部等に提出させ、上司の許可を得るようにする。これに、使用目的、日時、経路、同乗者の有無等を記載させるのである。
なお、恒常的にマイカーを業務に使用する場合と、単発的に使用する場合とがあり得るので、それぞれ異なる書式を用いるなどの工夫をすれば、より管理しやすくなるだろう。
また、接待その他の目的で遠方で使用したり、休日、時間外で使用する場合もあるので、それらも的確に把握できるようにしておきたい。
運行日誌、日報等の作成、提出
事前の許可申請と同時に、使用後にも運行日誌や日報などの報告書を提出させる。事前の申請だけでは、ともすれば申請書を出しさえすればよいという考えになりがちだからである。
日誌や日報を提出させれば、使用に対しても慎重になり、事後に使用状況をチェックすることもできる。
運転者を所有者である社員に限定する
これは、通勤利用の場合も同じだが、マイカーは、会社の所有車に比べ、管理や整備状況にばらつきがある。マイカーの癖を最も知っているのは当然その所有者であり、愛着もあり、運転には慎重になるであろう。したがって、たとえ業務に使用するとしても、運転者はその所有者である従業員に限るべきである。
また、所有者以外の者に使用させることは、従業員間のトラブルのもとともなる。
任意保険の加入義務
これも通勤利用の場合と同じで、やはり何らかの処置を講じておくべきである。場合によっては、会社が保険契約者となって、任意保険を締結するまでの配慮も必要である。
規定の作成
以上のような点も含めて、しっかりした管理規定を定めておく必要がある。基本的な内容は通勤利用の場合と同じだが、業務に使用するという点での特記事項などにも工夫しておくべきである。
著者
榎本 哲也(弁護士)
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