ビジネスわかったランド (総務・庶務)
賃借に関する法律
地代・家賃の改定で意見が一致しないときは
地代や家賃の改定額については、次のように代表的な算式等をもとに算出した「相当な金額」を提示して話し合うが、話合いがつかなければ、調停、訴訟ということになる。
まずはとにかく契約書に返る
賃貸借に関するトラブルが起こったときは、とにかくまずは契約書に返って、そこにどう記載されているか確かめてみる。
不合理な請求は契約書にあっても拒否できる
もし、契約書に、「地主が一方的に通知することによって地代は増額される」などという条項が盛り込まれており、それを盾に地主や貸主が増額を求めてきたら、借主は従わなければならないのだろうか。
結論からいえば、そんな不合理な地代(賃料)増額は、最終的には無効とされるのがほとんどであるから、それほど心配することはない。
しかし、調停の手続きをする手間がかかるなど、何かと面倒なので、できれば最初から、そのような条項は契約書から排除しておくようにすべきだろう。
増額に関して有効な特約もある
では、契約書に盛り込まれた地代や賃料に関する特約事項はすべて無効かといえばそうでもない。当事者が、特約で将来の値上げ幅を定めた場合でも、有効と判断されることもある。
判例では、賃料の値上げをあらかじめ合意する約定は、旧借家法7条の規定の趣旨を逸脱してその約定の内容が著しく不合理でない限りは有効としている。
したがって、たとえば、増額の幅について、「従前家賃に消費者物価指数の増加率を乗じたものとする」などと、客観的基準に基づいた増減率が定めてある場合は、有効になることがある。
通常は双方の協議で増額幅が決まる
一般的な契約書なら、地代ないし賃料の変更の欄には、多分、次のように記載されているはずである。
「地代(賃料)の金額が経済情勢等の変遷により近隣の相場に比較して著しく不相当になったときには、双方協議のうえ、地代(賃料)を変更することができる」
つまり、どちらか一方が勝手に地代や家賃を変更することは、不可能なのである。
ここで問題になるのが、果していまの金額が「著しく不相当かどうか」であり、その根拠となる「相当な金額」はいくらなのか、ということだろう。
「相当な金額」をどう算出するか
そこで、地代や家賃を算出するためのいくつかの方法を紹介する。
1.スライド方式
(現行賃料-諸経費)×変動率+諸経費
変動率については、建物または地価の上昇率、固定資産税評価証明額の上昇率、地代・家賃指数の上昇率、消費者物価指数の上昇率などがあり、これを併用する場合もあるが、判例は消費者物価指数にスライドするものが多い。
諸経費は、地代なら固定資産税と都市計画税であり、家賃なら地代相当額、建物の減価償却費、および修繕費である。
2.利回り方式
・地代の場合
現行地代+(底地価格+期待利回り+諸経費-現行地代)×一定割合
・家賃の場合
現行家賃+[(借地権価格+建物価格-借家権価格)×期待利回り+必要諸経費等-現行家賃]×一定割合
期待利回りは、民事または商事法定利率もしくは慣行利回りによって設定されるものが多い。
一定割合というのは、賃貸借契約個々の実情に応じ、2分の1ないし3分の1とされる。
3.差額配分方式
現行賃料+(正常賃料-現行賃料)×一定割合
正常賃料とは、原則として新規賃料をいう。
一定割合は、2分の1なり3分の1であり、賃貸借の実情を考慮して決定するものとされている。
4.賃貸事例比較法
近隣の賃料に準じて増額する方法であるが、契約の個別性に応じて、事情修正や時点修正を加える。
5.倍率方式(地代のみ)
(固定資産税+都市計画税)×一定倍率
一定倍率は、住宅地では2ないし2・3倍、商業地域では2ないし3倍が相場である。
地代の場合は、最も簡便なこの倍率方式によってあらかじめ地代を求め、これを実際の地代の多寡を判断する際の、1つの資料とするとよいであろう。
複合的に判断する
以上のように、地代や家賃の算出方法は多岐にわたるため、どれか1つの方式のみに頼るのは妥当ではない。複数の方式を併用することによって、客観性が担保されるのである。
最終的には調停、訴訟となる
これらの算出方法をもとに話し合った結果、地代・家賃について紛争が生じ、当事者間で話がつかなかった場合は、いきなり訴えを提起することはできない定めになっている。
借地借家法では、調停前置主義が採用されており、訴訟に先立ってまず調停の申立てを行なうべきであるとされている。したがって、当事者間で話がまとまらず紛争が生じたときは、調停の申立てに基づいて裁判所で第三者(調停委員)を交えて話し合いが持たれることになる。
さらに、調停が不調に終わった場合は、訴訟が可能となり、最終的には裁判で決められることになるわけである。
著者
當山 泰雄(弁護士)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
まずはとにかく契約書に返る
賃貸借に関するトラブルが起こったときは、とにかくまずは契約書に返って、そこにどう記載されているか確かめてみる。
不合理な請求は契約書にあっても拒否できる
もし、契約書に、「地主が一方的に通知することによって地代は増額される」などという条項が盛り込まれており、それを盾に地主や貸主が増額を求めてきたら、借主は従わなければならないのだろうか。
結論からいえば、そんな不合理な地代(賃料)増額は、最終的には無効とされるのがほとんどであるから、それほど心配することはない。
しかし、調停の手続きをする手間がかかるなど、何かと面倒なので、できれば最初から、そのような条項は契約書から排除しておくようにすべきだろう。
増額に関して有効な特約もある
では、契約書に盛り込まれた地代や賃料に関する特約事項はすべて無効かといえばそうでもない。当事者が、特約で将来の値上げ幅を定めた場合でも、有効と判断されることもある。
判例では、賃料の値上げをあらかじめ合意する約定は、旧借家法7条の規定の趣旨を逸脱してその約定の内容が著しく不合理でない限りは有効としている。
したがって、たとえば、増額の幅について、「従前家賃に消費者物価指数の増加率を乗じたものとする」などと、客観的基準に基づいた増減率が定めてある場合は、有効になることがある。
通常は双方の協議で増額幅が決まる
一般的な契約書なら、地代ないし賃料の変更の欄には、多分、次のように記載されているはずである。
「地代(賃料)の金額が経済情勢等の変遷により近隣の相場に比較して著しく不相当になったときには、双方協議のうえ、地代(賃料)を変更することができる」
つまり、どちらか一方が勝手に地代や家賃を変更することは、不可能なのである。
ここで問題になるのが、果していまの金額が「著しく不相当かどうか」であり、その根拠となる「相当な金額」はいくらなのか、ということだろう。
「相当な金額」をどう算出するか
そこで、地代や家賃を算出するためのいくつかの方法を紹介する。
1.スライド方式
(現行賃料-諸経費)×変動率+諸経費
変動率については、建物または地価の上昇率、固定資産税評価証明額の上昇率、地代・家賃指数の上昇率、消費者物価指数の上昇率などがあり、これを併用する場合もあるが、判例は消費者物価指数にスライドするものが多い。
諸経費は、地代なら固定資産税と都市計画税であり、家賃なら地代相当額、建物の減価償却費、および修繕費である。
2.利回り方式
・地代の場合
現行地代+(底地価格+期待利回り+諸経費-現行地代)×一定割合
・家賃の場合
現行家賃+[(借地権価格+建物価格-借家権価格)×期待利回り+必要諸経費等-現行家賃]×一定割合
期待利回りは、民事または商事法定利率もしくは慣行利回りによって設定されるものが多い。
一定割合というのは、賃貸借契約個々の実情に応じ、2分の1ないし3分の1とされる。
3.差額配分方式
現行賃料+(正常賃料-現行賃料)×一定割合
正常賃料とは、原則として新規賃料をいう。
一定割合は、2分の1なり3分の1であり、賃貸借の実情を考慮して決定するものとされている。
4.賃貸事例比較法
近隣の賃料に準じて増額する方法であるが、契約の個別性に応じて、事情修正や時点修正を加える。
5.倍率方式(地代のみ)
(固定資産税+都市計画税)×一定倍率
一定倍率は、住宅地では2ないし2・3倍、商業地域では2ないし3倍が相場である。
地代の場合は、最も簡便なこの倍率方式によってあらかじめ地代を求め、これを実際の地代の多寡を判断する際の、1つの資料とするとよいであろう。
複合的に判断する
以上のように、地代や家賃の算出方法は多岐にわたるため、どれか1つの方式のみに頼るのは妥当ではない。複数の方式を併用することによって、客観性が担保されるのである。
最終的には調停、訴訟となる
これらの算出方法をもとに話し合った結果、地代・家賃について紛争が生じ、当事者間で話がつかなかった場合は、いきなり訴えを提起することはできない定めになっている。
借地借家法では、調停前置主義が採用されており、訴訟に先立ってまず調停の申立てを行なうべきであるとされている。したがって、当事者間で話がまとまらず紛争が生じたときは、調停の申立てに基づいて裁判所で第三者(調停委員)を交えて話し合いが持たれることになる。
さらに、調停が不調に終わった場合は、訴訟が可能となり、最終的には裁判で決められることになるわけである。
著者
當山 泰雄(弁護士)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
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