ビジネスわかったランド (総務・庶務)

賃借に関する法律

土地を借りるときの注意点は
 土地を借りて、そこに事務所や店舗などを建てようとするときは、貸主の権限のほか、種々の条件等について、次のような事項に細心の上にも細心の注意が必要である。

<< 貸主の権限は大丈夫か >>

土地を借りる際にまず注意することは、貸主にその土地を他人に貸す権限が本当にあるかどうかのチェックである。

土地登記簿謄本で確認を
土地の貸主は、地主(つまり土地の所有者)と一致しているのが普通である。しかし、賃貸借契約は債権契約なので、必ずしも土地所有者と貸主が同一とは限らない。したがって、土地を借りるときは、事前に土地登記簿謄本を取り寄せて、貸主と土地所有者が一致しているかどうかを確認する必要がある。

貸主と所有者が異なる場合はさらに調査を
一致していればほとんど問題はないが、一致していない場合は、さらに調査が必要。
つまり、土地所有者は貸主に本件土地を第三者に貸す権限を与えているか、あるいは貸すことを承諾しているか、といったことを確認するのである。この確認をしないで、後日、本当の土地所有者から無断で土地を占有していることを理由に土地の明渡しを要求されると、それに従わなければならない可能性が高くなる。

<< 借りる土地のチェック >>

現地と登記簿で二重の確認を
土地を借りる前には、その土地の状況を念には念を入れて確認しておくことである。事前に現地に行って調査するのはもちろん、登記簿や公図で、その土地の位置や範囲をしっかり確認しておく。

土地にどんな規制があるかも調べる
同時に、その土地にどんな法規制があるかどうかも確認しておく必要がある。
都市計画法や建築基準法の規制によっては、考えていたような建物を建てられないということもあるので、慎重に検討したい。

<< 借地契約を結ぶ際のポイント >>

実際に土地の賃貸借契約を結ぶ際にも、いくつか注意しておきたい点がある。
次の「土地賃貸借契約書」のモデルをもとにして、具体的に説明していこう。


契約目的物の特定を
契約の対象となっている土地を、きちんと特定しておくことは、当然ながら絶対に必要である。土地に関するトラブルが発生し、裁判になって契約書を証拠として提出したものの、相手方から土地の特定について難癖をつけられ、種々弁明しなければいけなくなるというのでは、契約書の意味をなさない。
土地の特定は、土地登記簿謄本どおりに記載する。図表の契約書例の一番下の「物件目録」である。さらに、土地の表示に図面を添付できればベターである。

目的の明示も大切
借地借家法の適用を受ける借地契約は「建物所有目的」でなければならない。したがって、借地借家法の適用の有無を明らかにするためにも、「目的」の表示は不可欠である。

地代ももちろんしっかり明示
地代の額はもちろん、支払方法もしっかり記載しておく必要がある。また、地代が将来、世間相場からみて不相当になった場合の処置のも決めておきたい。
中には「地主が一方的に通知することによって地代は増額される」などという極端な条項が盛り込まれた契約書も存在するようである。このような条項に基づく不合理な地代増額は、最終的には無効とされることが多いが、借地人にとっては煩わしい限りである。はじめから「地代が不相当と思われるときは双方が協議する」旨の条項を入れておくに越したことはないのである。

権利金の意味づけもしっかりと
借地契約に際しては、借地人から地主に権利金が支払われるのが一般的である。この権利金は、その法的性質が法律で定まっているものではなく、様々な解釈がなされている。
いちばんのポイントは、地主が将来、全部もしくは一部を返す必要があるかどうかなので、この点をきちんと明示しておくことが、トラブルを未然に防ぐことにつながる。

更新料もあらかじめ明記しておく
更新料は法律で定められたものではないが、慣行としてほぼ定着している。この更新料も後々のトラブルの原因になりやすいので、合理的な基準を決めておくようにしたい。

<< 借地権の種類で借地期間も異なる >>

借地の契約期間ももちろん、契約書に明記しておくべき重要な事項である。ただ、この借地期間は、平成8年に施行された借地借家法によって、いくつかの選択肢ができたので、ここで簡単に説明しておく。

基本の契約期間は最低30年
新法では、借地期間を最低30年間と定めている。旧借地法では、建物の種類や構造によって期間に差があったが、新法ではその区別は廃止された。
また、更新後の期間は、基本的には最初の更新は20年、その後の更新は10年となる。ただし、当事者がこれよりも長い期間と定めたときは、その期間によるるものとした。
期間満了に当たって、建物が存続しているときは、借地人は地主に契約の更新を求めることができる。これに対し、地主が更新拒絶の通知をしなかったとき、あるいは通知をしても正当理由がないときは、更新したものとして扱われる。

借地借家法で創設された3つの借地権
また、借地借家法では、様々な需要に応えるため、次のような更新を予定しない「定期借地権」の3つの新しいタイプの借地権が創設された。借りた土地をどのように利用していくのかに応じて、この3つ借地権を取捨選択することもできる。

「定期借地権」は契約期間50年以上
定期借地権契約では、契約期間を50年以上としなければならない。これだけ長い契約期間があると、かなり幅のある事業計画も可能になるであろう。
しかし、一方では、地主を保護する条項も盛り込まれている。1つは、契約時に、「契約期間満了後更新をしない」という特約を設けることができること。もう1つは、同じく契約時に「契約更新をしないとき借地人は地主に対して買取請求権を行使しない」と定めることができることである。このことによって地主は、契約が満了すれば元の状態で必ず土地が戻ってくるという安心感が得られるわけである。

建物を地主に売れる「建物譲渡特約付借地権」
建物譲渡特約付借地権契約は、借地契約を消滅させるために、契約後30年以上が経過した時点で、借地上の建物を地主に買ってもらうことをあらかじめ定めた契約である。もちろん、このことは、当初の契約時点で明示しておく必要がある。
買取価格は、買い取る時点での協議ということになるが、それが調わない場合は最終的に裁判所が決めることになる。

期限を確定した「事業用借地権」
事業用借地権契約は、事業用地として、確定期限を付した借地契約である。期間は10年以上30年未満で、更新は認められていない。
この契約は、ロードサイドのレストランや安売り店など、借地上に簡易な建物を建てて商売をし、比較的短期間で投下資本を回収する事業に適しているといえるであろう。
ただし、この契約は、必ず公正証書にしなければならず、この要式をとらないと無効となる。

著者
當山 泰雄(弁護士)
2010年1月末現在の法令等に基づいています。