ビジネスわかったランド (総務・庶務)

文書・通信事項

印章の種類と使い分け方は
 ハンコに関して、「印鑑」という言葉が使われるが、本来はハンコそのものは「印章」という。印鑑は、2つの印影を照らし合わせ、それが本当の印章によって押されたものであるかどうか、その真否を照合できるように、あらかじめ官公庁や銀行などに届けておく印影のことである。

実印と認印の違いは
「実印」とは、官公庁にその印影が登録されている印鑑のこと。これに対して「認印」は、実印以外のすべての印鑑をいう。
この違いについて、一般には誤解があるようである。
認印は文房具店などで売られている三文判のこと、と思われているようだが、このような三文判であっても、登録されれば実印になる。
一方、どんなに高価な材質に技巧をほどこした印鑑であっても、官公庁に登録されていなければ、認印にすぎないのである。

実印は自らを公的に証明するもの
ではなぜ、印鑑を実印にするのか。
それは、印影を登録した官公庁に「印鑑証明書」を発行してもらうことによって、その印影が確かに本人のものであることを公的に証明できるからである。
そこで、本人自身の意思に基づくものと確認する必要のある重要な文書を作成する場合、たとえば不動産所有権移転登記、公正証書の作成、自動車登録申請の各手続きなどには、実印の押印が要求されるのである。

銀行印は銀行に登録された印鑑
銀行取引(預金取引、当座取引など)をする場合は、その銀行に特定の印鑑を届け出て登録しておき、それ以外の印鑑を使用させない方法がとられている。この銀行に登録された印鑑が「銀行印」である。
銀行印はもともと、不正な取引を防止するために用いられるものだが、実情は、多数の顧客を相手にする銀行が、たとえ別人であっても登録印の押された用紙を本人作成のものと信じて預金を払い戻しても、責任を負わないという利用のされ方になっている。

代表者印は会社の実印
「代表者印」は、法務局に登録された印鑑で、いわば会社の実印である。これは、会社の代表者(株式会社では代表取締役)が、対外的に会社を代表して取引を行なう際に使用される。
代表者印の印影は「○○株式会社代表取締役之印」と彫られており、円形のものが通例である。

代表者印は使いすぎないように
会社の実印である代表者印は、やたらと使わないようにしたい。代表者印を押す必要のない文書にまで捺印すると、その文書が第三者の手に渡り、代表者印の印影をまねた印鑑が偽造されるおそれがある。
また、代表者印と会社名義の銀行口座の銀行印を同じものにしているところがあるようだが、これも避けるべきである。銀行印と代表者印が同じだと、日常的な銀行取引で印鑑を取り扱う経理・財務部員に代表者印の不正使用の機会を与え、犯罪行為を誘発することにもなりかねないからである。

会社の認印が会社印
会社の実印が「代表者印」なら、会社の認印は「会社印(社印)」である。これは、会社自体を表示する印で、たとえば納品書、請求書、社内文書などに押捺される。
会社印の印影は、「○○株式会社之印」と彫られたものが多く、角形が一般的なので「角印」と呼ばれる。
代表社印をやたらと使わないようにするためにも、代表者印とは別に会社印をつくっておくようにしたい。

職務上の権限を示す部課長印
「部課長印」は、部課長職にある者が、職務上の権限として対外的な取引をする場合や、社内的な職務に関連する文書に押す印鑑である。

拇印が押された手形は無効か
時には、印鑑に代えて、いわゆる「拇印」が使われることもある。
人の指紋は同じものが2つとないとされているので、本人であるかどうかの識別には、拇印が最も適した方法であるといえる。しかし、その識別は、専門的な技術者が特別の機械を使用して初めてできるもので、必ずしも有効な方法とはいえない。
たとえば、手形や小切手に拇印が押されていた場合、その指紋が本人のものであるかどうか、簡単には識別できない。専門家に委託して指紋の同一性を鑑定してもらってから、手形や小切手を受け取ることになる。これでは、正常な取引が阻害されてしまう。
そのため、現にビジネス界では、振出人欄に拇印が押されている手形や小切手は無効とされている。

拇印にはまったく意味がないのか
このように拇印には、捺印と同じ効果があるとはいえないが、だからといって、拇印がまったく無意味であるともいえない。
たとえば、緊急に文書の交換をしなければならないときに印鑑を持参していないようなケースでは、署名と拇印を併用し、その拇印が相手方の面前で押されるのであれば、本人の意思との同一性を確認する方法としては十分だといえよう。

著者
堀越 董(弁護士)
2011年4月末現在の法令等に基づいています。