ビジネスわかったランド (総務・庶務)
トラブル処理事項
和解をするときの心得は
和解は、当事者が互いに譲歩することによって、当事者間にある紛争を終結させる契約である。たとえば、売主が商品代金100万円の支払いを請求し、買主が商品の欠陥を理由にそれを拒否したとする。ここで、双方の話し合いにより、売主が10万円値引きし、買主が90万円を分割払いする、という合意ができれば、そこで和解契約が成立したことになる。
このように和解は、相手に一歩譲ることであり、その辺を考慮してかかる必要がある。
裁判上の和解には2種類ある
裁判上の和解には、通常の訴訟上の和解と、訴訟前の和解の2種類がある。
通常の訴訟上の和解は、すでに係属中の事件について、裁判所において当事者間に和解が成立することである。
訴訟前の和解は、裁判係属前に当事者間で和解契約が成立した場合に、その旨を簡易裁判所に申し立てて、裁判官の面前で和解することである。これは、即決和解ともいう。
いずれの和解も、その効力に違いはない。
裁判上の和解は確定判決と同効力
裁判上の和解には、確定判決と同一の効力がある。これは、裁判上の和解に基づいて、直ちに強制執行ができるということである。これを執行力という。
たとえば、被告が和解に定める支払義務を履行しない場合、原告は、別にその支払いを求める裁判を起こす必要はなく、和解調書に基づいて、直ちに被告の財産に強制執行ができる。
この場合、もし被告側が和解の効力を争おうと思うなら、和解無効の裁判を提起しなければならない。そのうえ、和解無効が認められるのは、稀有である。
和解の執行力はオールマイティ
強制執行の効力ならば、公正証書にもある。しかし、公正証書が執行力をもつのは、金銭債務に限られる。
しかし、和解には、そのような制限がない。土地家屋の明渡し、登記、機械類の引渡しなど、強制執行が可能なあらゆる義務について執行力がある。この意味で、和解はオールマイティだといえる。
和解の効力がマイナスに作用することも
ただし、和解の強力な効力が、ときには、逆に自分の首を絞めることもある。
たとえば、冒頭の売買契約の具体例にならえば、買主がいったん10万円の値引きで和解した以上、商品の欠陥による損害がもっと大きかったとしても、それを主張することができなくなってしまう。したがって、何でもすぐに和解すればよいわけではないという点は、留意しておくべきであろう。
和解は相手に一歩譲ることでもある
また、和解をするということは、自分の権利を100%貫徹することができないということである。つまり、表面的には相手に一歩譲ることで、これは覚悟しておかなければいけない、和解のデメリットだとはいえる。
しかし、大きな目で見れば、そのほうが得だったいうことも少なくない。それは、和解には下記のようなメリットがあるからである。
裁判上の和解のメリットは
1.紛争の早期解決
裁判には時間がかかるし、一審判決が出ても控訴や上告によって更に時間がかかる。その点、和解なら即時に解決する。
2.任意履行の可能性が高い
判決に基づく強制執行は、労多くして得るところが少ないという例がまれではない。しかし、和解で解決した場合は、判決に比べて債務者が任意に債務を履行することが多い。
3.不意打ち判決を避けられる
100%勝つと思っていた裁判が、思いもよらない理由で負かされることがある。しかし、和解なら、このような万が一の事態を避けることができる。
和解を検討するのはどんな場合か
上記のような和解のメリットを考えてみると、和解という選択肢を検討するに値するのは、次のような場合だといえるだろう。
1.権利の有無に確信がもてない場合
2.権利があることは明らかだが、金額が不確定な場合
3.権利は確実だが、相手方の弁済能力や強制執行の実効性に不安がある場合
即決和解は安く簡単なのが最大の利点
和解のうちでも即決和解は、手続きが簡単で、しかも費用が大してかからないというところに最大のメリットがある。
即決和解は、当事者が和解が成立した旨を簡易裁判所に申し立て、裁判官の前で和解をすれば、それで確定判決と同一の効力をもつのである。しかも、即決和解申立ての裁判所手数料は、目的物の金額にかかわらず、一律2,000円なのである。
即決和解の乱用には要注意
即決和解は、上記のように安くて簡単にできるため、かつては乱用と考えられるようなものも少なくなかった。
和解は本来、当事者間に紛争があることが前提なのに、即決和解では「紛争」概念が広く解釈され、現在の紛争がなくても、将来の紛争の発生を未然に防ぐという目的があれば、「紛争」があるとして、簡易裁判所で安易に即決和解を成立させることがあった。
そのために、明渡しをめぐる紛争発生のおそれがあるとして、賃貸マンションの経営者が、すべての賃貸契約を即決和解によって行なうというような例も出てきた。あるいは、当事者間には別段紛争がないのに、紛争があると偽って即決和解の申立てをする例もないとはいえない状況となっていた。
最近では、簡易裁判所の事前チェックが厳しくなり、以前のような極端な例は少なくなったが、それでもまだまったくないとはいえない。
現在の紛争がなく、将来の紛争も単に抽象的、一般的危険にすぎない場合(極端にいえば、すべての契約には将来紛争が生じる危険はある)は、即決和解はその前提を欠くので、無効である。つまり、何でも即決和解にすればよいというわけではないのである。
著者
華学 昭博(弁護士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。
このように和解は、相手に一歩譲ることであり、その辺を考慮してかかる必要がある。
裁判上の和解には2種類ある
裁判上の和解には、通常の訴訟上の和解と、訴訟前の和解の2種類がある。
通常の訴訟上の和解は、すでに係属中の事件について、裁判所において当事者間に和解が成立することである。
訴訟前の和解は、裁判係属前に当事者間で和解契約が成立した場合に、その旨を簡易裁判所に申し立てて、裁判官の面前で和解することである。これは、即決和解ともいう。
いずれの和解も、その効力に違いはない。
裁判上の和解は確定判決と同効力
裁判上の和解には、確定判決と同一の効力がある。これは、裁判上の和解に基づいて、直ちに強制執行ができるということである。これを執行力という。
たとえば、被告が和解に定める支払義務を履行しない場合、原告は、別にその支払いを求める裁判を起こす必要はなく、和解調書に基づいて、直ちに被告の財産に強制執行ができる。
この場合、もし被告側が和解の効力を争おうと思うなら、和解無効の裁判を提起しなければならない。そのうえ、和解無効が認められるのは、稀有である。
和解の執行力はオールマイティ
強制執行の効力ならば、公正証書にもある。しかし、公正証書が執行力をもつのは、金銭債務に限られる。
しかし、和解には、そのような制限がない。土地家屋の明渡し、登記、機械類の引渡しなど、強制執行が可能なあらゆる義務について執行力がある。この意味で、和解はオールマイティだといえる。
和解の効力がマイナスに作用することも
ただし、和解の強力な効力が、ときには、逆に自分の首を絞めることもある。
たとえば、冒頭の売買契約の具体例にならえば、買主がいったん10万円の値引きで和解した以上、商品の欠陥による損害がもっと大きかったとしても、それを主張することができなくなってしまう。したがって、何でもすぐに和解すればよいわけではないという点は、留意しておくべきであろう。
和解は相手に一歩譲ることでもある
また、和解をするということは、自分の権利を100%貫徹することができないということである。つまり、表面的には相手に一歩譲ることで、これは覚悟しておかなければいけない、和解のデメリットだとはいえる。
しかし、大きな目で見れば、そのほうが得だったいうことも少なくない。それは、和解には下記のようなメリットがあるからである。
裁判上の和解のメリットは
1.紛争の早期解決
裁判には時間がかかるし、一審判決が出ても控訴や上告によって更に時間がかかる。その点、和解なら即時に解決する。
2.任意履行の可能性が高い
判決に基づく強制執行は、労多くして得るところが少ないという例がまれではない。しかし、和解で解決した場合は、判決に比べて債務者が任意に債務を履行することが多い。
3.不意打ち判決を避けられる
100%勝つと思っていた裁判が、思いもよらない理由で負かされることがある。しかし、和解なら、このような万が一の事態を避けることができる。
和解を検討するのはどんな場合か
上記のような和解のメリットを考えてみると、和解という選択肢を検討するに値するのは、次のような場合だといえるだろう。
1.権利の有無に確信がもてない場合
2.権利があることは明らかだが、金額が不確定な場合
3.権利は確実だが、相手方の弁済能力や強制執行の実効性に不安がある場合
即決和解は安く簡単なのが最大の利点
和解のうちでも即決和解は、手続きが簡単で、しかも費用が大してかからないというところに最大のメリットがある。
即決和解は、当事者が和解が成立した旨を簡易裁判所に申し立て、裁判官の前で和解をすれば、それで確定判決と同一の効力をもつのである。しかも、即決和解申立ての裁判所手数料は、目的物の金額にかかわらず、一律2,000円なのである。
即決和解の乱用には要注意
即決和解は、上記のように安くて簡単にできるため、かつては乱用と考えられるようなものも少なくなかった。
和解は本来、当事者間に紛争があることが前提なのに、即決和解では「紛争」概念が広く解釈され、現在の紛争がなくても、将来の紛争の発生を未然に防ぐという目的があれば、「紛争」があるとして、簡易裁判所で安易に即決和解を成立させることがあった。
そのために、明渡しをめぐる紛争発生のおそれがあるとして、賃貸マンションの経営者が、すべての賃貸契約を即決和解によって行なうというような例も出てきた。あるいは、当事者間には別段紛争がないのに、紛争があると偽って即決和解の申立てをする例もないとはいえない状況となっていた。
最近では、簡易裁判所の事前チェックが厳しくなり、以前のような極端な例は少なくなったが、それでもまだまったくないとはいえない。
現在の紛争がなく、将来の紛争も単に抽象的、一般的危険にすぎない場合(極端にいえば、すべての契約には将来紛争が生じる危険はある)は、即決和解はその前提を欠くので、無効である。つまり、何でも即決和解にすればよいというわけではないのである。
著者
華学 昭博(弁護士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。
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