ビジネスわかったランド (総務・庶務)

トラブル処理事項

裁判に訴えるときの心得は
 大きな紛争はないにこしたことはない。しかし、相手に義務不履行や違法行為があり、どうしても話し合いに応じるような気配が見えないようなときは、泣き寝入りせず、毅然として裁判を起こすことも必要になる。それに際しては、自社にとって便利な裁判所を選ぶとともに、弁護士費用も念頭に入れて提訴する。

<< どこの裁判所に申し立てればいいか >>

裁判は、その事件を審理する権限のある裁判所に申し立てることが必要である。この権限のある裁判所を、管轄裁判所という。

地方裁判所か簡易裁判所か
裁判管轄には、事物管轄と土地管轄というものがある。そのうち事物管轄は、簡易裁判所と地方裁判所の配分である。
この違いは、訴額の多寡による。訴額140万円以下の事件は簡易裁判所の管轄に属し、140万円超の事件は地方裁判所で取り扱うのである。

どこの裁判所に訴えればいいか
一方、土地管轄は、どの地域の裁判所の管轄になるかというと、原則、被告の住所地の裁判所ということになっている。
しかし、不動産事件では不動産の所在地、金銭請求事件では支払義務履行地(通常は債権者の住所地となる)、不法行為の事件では不法行為地の裁判所もまた、管轄裁判所となる。
たとえば、被告の不法行為に基づく損害賠償請求事件では、被告の住所地、不法行為地、義務履行地である原告の住所地と、3か所の裁判所が管轄裁判所となるのだ。


複数の管轄裁判所がある場合は
上記のように、管轄裁判所が複数ある場合は、原告側にとって最も有利な裁判所を選べばよい。たとえば、上記の例で、原告は札幌に、被告は大阪に住んでおり、東京において不法行為があった場合、札幌の裁判所に申立てをすれば、原告は交通の便などで最も有利になる。

<< 裁判を行なうのは誰か >>

本人が裁判を遂行することもできる
では、裁判を起こす人、つまり原告は誰になるのか。
個人ならば被害を受けた本人だが、会社の場合の本人は代表取締役になる。
もちろん、この本人が訴訟を起こし、その後の裁判を遂行することもできる。これを本人訴訟という。

簡易裁判所なら代理人は誰でもなれる
しかし、ほとんどの場合は、訴訟代理人によって裁判が進められるのが常である。訴訟代理人といえばイコール弁護士というふうに思われがちだが、簡易裁判所で争われる裁判の場合は、訴訟代理人に制限はない。
したがって、総務部長や担当重役など、社内の当該事件に詳しい者を訴訟代理人とすることもできる。
また、簡易裁判所では、司法書士にも法廷代理権が認められている。

地方裁判所では代理人は弁護士だけ
しかし、地方裁判所で争われる裁判の場合は、弁護士以外の者には訴訟代理権が認められていない。したがって、社長が自ら裁判を進めるというのであれば別だが、それ以外は、結局弁護士に依頼することになる。

<< 提起はどのようにして行なうか >>

裁判の提起は口頭でもできる
裁判の提起は、訴状を裁判所に提出することによって行なう。ただし、簡易裁判所の場合は、口頭による訴えの提起も認められている。

訴状に記載しなければならない内容は
訴状には、請求の趣旨、請求の原因等を記載しなければならない。
請求の趣旨は、裁判で求める結論である。たとえば、「被告は原告に対し金○○万円を支払え」とか、「被告は原告に対し別紙目録記載の土地を明け渡せ」などということである。
請求原因とは、請求権が発生する根拠となる事実である。これは、できるだけ具体的に記載し、関連する証拠を示さなければならない。

最低限、裁判にかかるお金は
なお、訴提起時に、訴額に応じた手数料を納付する必要がある。これは、訴状の受付窓口の指導に従えばよい。
また、不法行為による損害賠償請求以外の訴訟では、弁護士費用を相手方に請求できない建前なので、これを裁判コストと考えておく必要がある。

著者
華学 昭博(弁護士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。