ビジネスわかったランド (総務・庶務)

トラブル処理事項

商品トラブル発生時の上手な対応法は
 商品トラブルとは、商人間の売買(商事売買)において生じるトラブルのこと。具体的には売主の引渡遅延、買主の受領拒絶、商品の品質性能不良(欠陥商品)、数量不足が問題になる。それぞれ、次のような対応がポイントとなる。

<< 期限までに商品が引き渡されなかった場合 >>

履行請求と損害賠償を
売主は、売買契約で定めた期限までに、売買の目的物を買主に引き渡さなければならない。もし、この引渡しが遅れた場合、買主は売主に対して、履行請求と遅延による損害賠償請求をすることができる。

即契約解除は一般的でない
しかし、引渡しが遅れたからといって、すぐにその売買契約を解除するのは、きわめてむずかしい。一般的には、相当の期間を定めた履行請求(催告)をし、それでもその催告期限までに履行がなかった場合に、はじめて契約解除権が発生すると考えられている。

契約によっては直ちに解除できる場合もある
ただし、売買契約の性質上、あるいは当事者の意思表示によって、一定の日時までに引渡しがないと契約の目的を達することができない場合には、売主がその期日までに引き渡さなかった段階で、履行の催告をせずに直ちに契約を解除できる。この場合は、期限後に引き渡されても、無意味だからである。
買主が契約解除をすれば、当然、買主の代金支払義務はなくなり、同時に売主に対して損害賠償の請求ができる。

<< 買主が商品の受取りを拒否した場合 >>

まずは目的物を供託する
買主が、目的物の受領を拒否した場合は、売主は、目的物を供託することができる。商人間の売買では、相当の期間を定めて催告した後、供託した目的物を競売にかけ、そこで得た金額を売買代金に充当することもできる。
なお、供託をしなくても、売主は引渡遅延の責を負うことはない。

受領拒絶を理由に契約を解除できるか
買主の受領拒絶を理由に、契約解除ができるかどうかは、考え方が分かれている。したがって、契約解除をする場合は、買主に売買代金の支払いを催告し、その支払遅滞を理由に解除の手続きをとるようにするのが無難であろう。

<< 商品に欠陥があったら >>

商品の欠陥があるかどうかの判断は
引き渡された商品の品質性能の欠陥(瑕疵)をめぐるトラブルは、商事売買で最も多い紛争である。品質性能に欠陥があると判断されるのは、大きく分けて次の3つの場合がある。
1.明示の品質保証に反する場合
売買契約で、商品が一定の品質性能を有することが、明示的に合意もしくは保証されている場合は、欠陥の有無は、商品がその合意された品質性能を有するか否かで判断される。つまり、一般的な基準からすれば欠陥とはいえなくても、合意された性能を備えていなければ、それは欠陥商品となる。
2.見本品に適合していない場合
見本品によって、商品の品質性能が定められた見本売買の場合は、欠陥の有無は、商品が見本品と同等の品質性能を有するかどうかが決め手となる。したがってこの場合も、一般的な基準からすれば欠陥とはみなされなくても、それが見本品と同等の性能を有していなければ、欠陥品となる。
3.明示の品質保証はないが商品に欠陥がある場合
売買契約においてとくに商品の品質保証に関する合意がない場合でも、商品が通常の用途に適合しなければ、その商品には欠陥があるといえる。商品が、その銘柄表示に適合する平均的品質を備えていない場合も同様である。
ただし、見切り売買等の特価販売の場合には、欠陥ではないとされる。

目的物受領後はすぐに検査を
商事売買では、買主は売買目的物を受領したら、遅滞なく検査を行ない、もし欠陥(瑕疵)を発見した場合は、直ちに売主に通知しなければならない。
買主が検査・通知を怠った場合は、目的物の欠陥を理由に、契約解除や損害賠償請求をすることができなくなるので、注意したい。

欠陥を通知する期限は6か月
直ちに発見できないような欠陥(隠れた瑕疵)があった場合には、受領後6か月以内に発見したら通知すればよい。しかし、その間に発見できなければ、損害賠償請求等はできないことになる。
ただ、隠れた瑕疵の6か月の期間は、特約によって延長することができる。したがって、買主としては、期間延長の特約を考えるべきであろう。
なお、検査は合理的と考えられる程度・方法でよい。大量取引の場合は、すべてを検査することは事実上不可能だから、抜取り検査で十分である。

欠陥があった際に売主に追及できる責任は
商品に欠陥があり、検査通知義務を尽くした買主は、売主に対して瑕疵担保責任を追及できる。
この瑕疵担保責任の第一は、適合品の給付請求もしくは補修請求である。つまり、契約条件をクリアした商品を引き渡すか、欠陥を補修するように求めるわけである。ただし、この請求は、引渡し後1年以内に行なわなければならない。
次には、契約解除権がある。もし、相当の期間を定めた催告(適合品の給付または補修請求)をしても、売主がそれに応じなかった場合には、買主は契約解除権を持つことになる。
また、これ以外にも、損害賠償請求も可能である。

<< 商品の数量が足りなかったら >>

引き渡された商品の数量不足も、法律上は瑕疵担保責任の問題となる。

数量不足もすぐに通知を
買主は、数量不足についても、検査通知義務を負い、遅滞なく検査し、数量不足が発見されたら直ちに通知しなければならない。それを怠ると、瑕疵担保責任を追及できなくなる。

契約解除できるのは不足部分だけか
数量不足の際の買主の救済としては、まず不足部分の引渡請求権がある。そして、売主が不足分の引渡しに応じなければ、買主は売買契約を解除することができる。その場合は、契約全体ではなく、不足部分のみの解除となる。
ただし、数量不足のために契約の目的を達成できなかったようなケースでは、契約全体を解除することもできる。
また、いずれの場合においても、損害賠償の請求はできる。

著者
華学 昭博(弁護士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。