ビジネスわかったランド (総務・庶務)

トラブル処理事項

民暴への対処の仕方は
 民暴とは、民事介入暴力の略で、暴力を背景に、民事・商事の紛争に介入し、健全な企業活動や市民生活を脅かし、不正・不法な利益を得ようとすることである。こうした民暴には、断固拒否の態度で臨むことがポイント。さらに、警察とも連携をとりながら、仮処分命令を活用する。

<< 民暴にはどんなものがあるか >>

民暴とひと口にいっても、内容は様々だが、代表的なものとしては次のようなものがある。

取立屋
売掛金や貸金等の債権者から頼まれ、あるいは債権を譲り受けたと称して、債務者のところに押し掛け、脅迫その他の暴力的手段を用いて、債務の支払いを強要し、強引に債権の取立てをするもの。債務者は、債務の弁済を怠っているという弱みがあるので、付け込まれやすい。

示談屋
交通事故や労災事故等の被害者から依頼を受け、法外な賠償金を請求するもの。被害者からは多額の謝礼金を取る。傷害を大げさに偽装することも多い。

整理屋
企業倒産にからんで、債権者と称し、あるいは倒産企業の依頼を受けて倒産整理に介入し、財産を都合のいいように処分して、代金を着服する等により不当な利益を得るもの。

総会屋・会社ゴロ
一般に知られていない取締役のスキャンダルや些細な違法行為、事業上の失敗等をネタに会社を脅して不当な利益を得るのが会社ゴロ。上場企業の場合は、株主総会を円滑に進めたいという会社の心理に付け込んで、様々な形態で不当な利益を得る総会屋がある。

えせ同和・えせ右翼
同和団体を標榜して、社会活動を仮装し、あるいは政治団体を称して街宣車により不当な圧力をかけることにより、会社を困惑させて不当な利益を得るもの。示談屋が、えせ同和やえせ右翼と結びつくこともよくある。

占有屋
第三者が土地建物を占有している場合には、競売価格が低下し、あるいは競売自体が困難になることにつけ込んで、競売物件を不法占有し、立退料等の名目で不当な利益を得るもの。バブル期には、借地人・借家人を嫌がらせや脅迫によって追い出すことを請け負う地上げ屋が横行していたが、バブル崩壊後は、占有屋による執行妨害が目立つようになった。

<< 民暴トラブルにはどう対処すればよいか >>

断固拒絶の姿勢を貫くのがいちばん
民暴は、経済的利益の追求を目的としている。つまり、コストに見合う収益の見込みがなければ手を出さない。
脅迫等があったとき、それを拒否すれば、脅迫の程度は次第にエスカレートしていくであろう。しかし、それでも効果がないとわかれば、諦めて手を引くものである。
また民暴は、激しい脅迫はしても、実際の暴力に訴えることはほとんどないといっていい。傷害事件になったら警察がすぐに動くことを知っているから、そんな不経済なことは決してしないのだ。
したがって、怖くてもじっと耐えて、断固拒否の姿勢を貫けば、民暴は去っていくものだ。

警察との協力も不可欠
民暴からの接触があった場合は、初期の段階で警察に届け出て、相談しておくことも大切である。
かつて警察は、民事紛争や商事紛争の外観があると、民事不介入の原則を楯にして、紛争への介入を回避していた。しかし、暴力団対策法ができてからは、民暴にも積極的に介入するようになっているのである。
届け出た時点では脅迫の程度が軽く、警察が取り上げてくれなくても、事情を話しておけば、脅迫がエスカレートしてきた段階で警察が動きやすい。
それに何より、警察が後ろにいてくれるという安心感が、断固拒否の姿勢を貫く支えにもなる。

仮処分をうまく利用する
本裁判は、判決までに長時間を要し、緊急事態に有効に対応することができない。その間に回復不可能な損害が発生する危険もある。このような事態に対処するため、判決までの暫定措置として、一定の行為を命じたり、反対に禁止したりするのが、仮処分命令である。
民暴対策に、この仮処分を上手に活用するのである。
民暴に有効な仮処分には、まず、面会強要禁止の仮処分や、電話禁止の仮処分がある。しつこく面会を求めたり、深夜早朝その他に頻繁に電話をかけてくるのを禁止する仮処分である。もし、相手が仮処分命令に違反して面会を強要すれば、強要罪として刑事事件の立件が容易になる。
また、街宣車による宣伝に対しては業務妨害禁止の仮処分が、占有屋に対しては建物明渡断行の仮処分等がそれぞれ考えられる。

著者
華学 昭博(弁護士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。