ビジネスわかったランド (経理)
経営分析
黒字倒産はなぜ起こるのか
黒字倒産のことを「勘定あって銭足らず」といいますが、「勘定あって銭足らず」となるのは、仕入れや商品の販売は信用取引(仕入れと売上を掛で行うこと)で行われるからです。
信用取引が行われると利益が計上されてから、その利益が実際の現金になるまでに時間がかかります。足りなくなった資金を銀行から借りることができれば問題はありませんが、銀行からお金を借りることができなければ、黒字であっても倒産してしまいます。
ではなぜ、会計上の利益と手元にある現金の残高がズレてしまうのか、事例を用いて説明しましょう。
以上をまとめると、利益の数字は商品の販売が行われた(3)の時点で売上200万円から商品の購入代金の100万円を差し引いた100万円と認識されますが、現金は実際に売掛金を回収した(4)の時点ではじめて100万円増加します。
このように、売掛金の回収よりも商品の代金の支払いの方が先行するため、ビジネスを行っていくためには運転資金が必要となります。必要な運転資金の金額は買掛金の支払い時点では100万円、商品の販売時点では200万円となっており、図1の利益と現金の差の数字と一致していることがわかります(図2)。
信用取引が行われると利益が計上されてから、その利益が実際の現金になるまでに時間がかかります。足りなくなった資金を銀行から借りることができれば問題はありませんが、銀行からお金を借りることができなければ、黒字であっても倒産してしまいます。
ではなぜ、会計上の利益と手元にある現金の残高がズレてしまうのか、事例を用いて説明しましょう。
(1) A社から100万円の商品を掛で仕入れる
(2) A社に対して商品の代金100万円を支払う
(3) この商品をB社に対して200万円で掛で販売する
(4) B社から回収条件に従い売掛金を回収する
図1:会計上の利益と現金残高の関係
(単位:万円)
(1)商品の 購入 |
(2)買掛金の 支払い |
(3)商品の 販売 |
(4)売掛金の 回収 |
|
現金 | 0 | ▲100 | ▲100 | 100 |
利益 | 0 | 0 | 100 | 100 |
利益と現金の差 | 0 | ▲100 | ▲200 | 0 |
(1) 掛で商品を購入したため商品の購入時点では現金の支払は行われず、利益も計上されていないため、この時点では利益と現金残高の差はありません。
(2) 買掛金を100万円支払ったため、会社のお金は100万円減少しました。しかしながらこの時点では、商品の販売を行っていないため、まだ利益は上がっていません。この時点の利益と現金の差は▲100万円となります。
(3) 商品を販売した時点では、売上金額200万円から商品の購入代金の100万円を差し引いた100万円が利益として計上されます。しかし、この時点ではいまだ入金がないため、会社のお金はまったく増えていません。この時点の利益と現金の差は▲200万円となります。
(4) 売掛金を回収した時点で、商品の販売代金200万円から購入代金100万円を差し引いた100万円の現金が増加し、利益と現金の残高が一致します。
このように、売掛金の回収よりも商品の代金の支払いの方が先行するため、ビジネスを行っていくためには運転資金が必要となります。必要な運転資金の金額は買掛金の支払い時点では100万円、商品の販売時点では200万円となっており、図1の利益と現金の差の数字と一致していることがわかります(図2)。
図2:運転資金の動き
(単位:万円)
(1)商品の 購入 |
(2)買掛金の 支払い |
(3)商品の 販売 |
(4)売掛金の 回収 |
|
売上債権 | 0 | 0 | 200 | 0 |
商品 | 100 | 100 | 0 | 0 |
支払債務 | 100 | 0 | 0 | 0 |
必要とする運転資金 | 0 | 100 | 200 | 0 |
※運転資金=売上債権+商品-支払債務
つまり、信用取引が行われると利益の方が手元現金残高よりも早いタイミングで増加するため、利益はあっても資金がないという黒字倒産が起こることがあるのです。著者
望月 実(公認会計士)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。
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