ビジネスわかったランド (経理)

年次決算

赤字社員と黒字社員、決算書の覚え方はこう違う
決算書は、まず全体像を把握し、それから気になる箇所を見ていこう。

赤字社員は木を必死で覚えて、森に興味をもたない

赤字社員とは「会社の利益を減らす人」、黒字社員とは「会社の利益を増やす人」のことです。
赤字社員の決算書の覚え方の特徴は「木を覚えることに必死で、森の美しさに興味がない」ということです。決算書の世界で言う「木」は各勘定科目であり、「森」は決算書全体を指します。

とくに、公認会計士や税理士をめざしている人、簿記検定を取得しようとする人に多く見られる傾向ですが、各勘定科目(木)ばかりを覚えようとしてしまい、決算書全体(森)の景色を眺める余裕がまったくありません。
このような人たちは、どういう決算書(森)が美しいのかを覚えようとしないし、そもそも興味すらもっていません。

決算書が読めない人たちにとって、興味があるのは、

・この決算書(森)は果たして美しいのか?
・難があるとすれば、どういったところなのか?

と、せいぜいこれくらいなのです。ここに、決算書が読めない人との間に大きなギャップが生じており、「決算書は細かく読めるけれども、仕事では評価されない赤字社員」となってしまうのです。

黒字社員は、まず森を覚え、その後に気になる木を覚える

逆に黒字社員は決算書を「まず森を覚え、その後に気になる木を追いかける」ように覚えます。細かい勘定科目(木)を覚えるよりも先に、「美しい決算書(森)、あるいは難のある決算書(森)には、一体どんな特徴があるのだろうか?」ということを覚えるのです。

そして、決算書(森)は使う目的によって、どんな状態をよしとするかが変わってきますので、次に覚えるのは「決算書(森)を使う目的ごとのチェックポイント」です。
このスタンスで決算書を覚えていると、決算書が読めない人の関心事をピンポイントで解説できるので、「赤字社員よりも会計の知識は少なかったとしても、仕事では高い評価を得られる黒字社員」となるのです。

森の見方のポイントは3つ!

黒字社員がマスターしている「森の見方」のポイントは、3つの決算書の大科目をまず押さえ、それぞれどういった状態が理想なのか(あるいは問題なのか)という、それぞれの決算書(森)のパターンを押さえることです。
【貸借対照表】
 ・純資産の割合はどれくらいか?
 ・流動資産と流動負債はどちらが大きいか?

【損益計算書】
 ・売上高と経常利益の3期推移はどうなっているか?
 ・売上総利益率の3期推移はどうなっているか?
 ・人件費や主要な経費の3期推移はどうなっているか?

【キャッシュ・フロー計算書】
 ・営業活動によるキャッシュ・フローはプラスになっているか?
 ・利益とキャッシュ・フローが連動していない場合、おもな要因は何か?
これらの項目を押さえているだけで、どんな決算書(森)がよいのか、あるいは問題があるのかがわかるようになります。

著者
香川晋平(公認会計士・税理士)