ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

基幹システムや実在庫の流れを追うシステム
現場がきちんと正しく、タイムリーにデータ計上をする

ERPは在庫管理の要

ERPは、Enterprise Resource Planningの略で「統合基幹システム」と訳されます。プランニングという名称がついていますが、実態はプランニングシステムではなく、製造指図管理や購買指図管理と実績収集、会計情報のデータベースです。生産管理の3本柱である、計画、実行、実績収集のなかの実行指示と実績管理を担います。データが統合されているという点で非常に優れています。

ERPは、ものの流れを伝票で追いかけます。出庫指図で出庫し、製造指図で製造し、原価を積算します。製造が終われば、倉庫に受け入れ、入庫が計上されます。在庫の受け払いと原価積算をする仕組みとして、重要な役割を担います。ERPの運用がきちんとできていれば、在庫台帳管理は正確になりますし、仕掛品や製品の原価計算もスピードアップします。

ERPでBPRはできない

かつては、ERPを導入すればBPR(Business Process Re-Engineering)という劇的な業務改革ができるなどといわれましたが、それは幻想です。

そもそも、実行指示、実績収集に付加価値はなく、統制管理と迅速な実績集計以外の価値はないのです。業務の標準化をBPRなどといってはいけません。

ERPとMRPの関係

生産管理のシステムとしてMRP(Material Requirement Planning)があります。MRPは「資材所要量計算」のことで、製造時の正味所要量を計算する仕組みです。
正味所要量を計算するためには、在庫管理が必要になり、在庫の受け払い情報を受け取って、在庫管理を行ないます。また、所要量計算をするために需要数を仕入計画、生産計画として受け取ります。所要量計算後、製造指図や購買指図を発行します。

MRPの機能は、まさに在庫管理と在庫受け払い管理、指図管理でERPに似ています。というよりも、実はERPがMRPの機能をとり込んだのであって、在庫管理に関しては同じものと考えてもいいでしょう。
ERPもMRPも、在庫管理をするにあたって、実績管理の要になります。かつて紙の上で行なわれていた在庫の台帳管理が、システム化したものなのです。

ERPやMRPが管理する業務は「実行系業務」と呼ばれます。この実行系業務の管理がきちんとして、ERPやMRPに計上されている在庫データが実態と正しく合っていることが重要です。計画業務はERPやMRPの在庫データ、発注残データを加味して計画立案をします。ERPやMRPのデータがくるっていると、計画までくるってしまいます。

ERPやMRPを導入する際は、システム機能の重要性よりも現場がきちんと正しく、タイムリーにデータ計上をしないといけないのです。

製造現場のERPともいえる製造実行システムMES

MESとは、Manufacturing Execution Systemの略で、製造現場に製造指示を出し、実績収集を行なう「製造実行システム」のことです。

MESは、MRPやERPからの製造指図を受けて、現場への作業指示を発行します。作業指示は作業現場ごとに発行されるので、一般にMESには所要量展開と工程展開(作業展開)の機能が搭載されています。この点でMRPと機能的にはダブっているようにみえますが、MRPとMESでは管理する工程の「細かさ」でちがいがあります。
MESは製造指示に対する実績も収集します。製造現場ではMESを通じて、投入された資材数、出来高、作業時間、作業条件などを製造記録として登録します。製造現場の在庫の受け払いを担うのがMESなのです。

また、作業実績や作業状態に関する情報を収集するMESは、作業実績のデータベースになり、作業時間や投入人員などの原価計算の原単位情報のデータソースになるのです。

倉庫管理システムWMS

「倉庫管理システム」のことをWMS(Warehouse Management System)といいます。倉庫管理システムは、生産管理にとって、現品管理の土台になる重要なシステムです。単に保管物管理をするだけでなく、さまざまな機能をもっています。

WMSの機能の1つは「在庫のステータス管理」です。保管されている在庫の入庫日、ロットナンバー、荷姿、容積、重量、使用期限などのステータス情報を管理します。

2つ目の機能は「出庫・引当機能」です。出庫指示をかけた際、引当て順序ロジックをもって出庫します。先入先出で出庫するFIFO機能や、すでに出荷したロットナンバーよりも古いロットナンバーを引き当てない「ロット逆転防止引当」などの引当ルールを保持し、適切な在庫を引当て、出庫します。WMSはそのほかに入庫登録機能、ロケーション管理機能などの機能ももち合わせています。WMSは、まさに在庫の現品管理の要なのです。

物流在庫をトラッキングするLMS

在庫の積送状況を追いかけるシステムがLMS(Logistics Management System)です。自社倉庫を出荷後、いま在庫がどこにあるのかを追いかけ、納期回答や入庫作業準備に使ったりします。
LMSがあれば、自社から出荷した途端に「在庫が消える」ということもなくなりますし、在庫ひっ迫時に正確な入庫タイミングがわかり、緊急出荷の可否が判断できます。

しかし、LMSを導入しても、通関情報や船舶スケジュールは外部の業者からの情報を取得しなければ、積送在庫状況の「見える化」はできません。外部とのデータのインターフェースの構築が大変ですが、一方でこうした情報管理をアウトソースしてくれる企業もあるので、もしLMSが必要なときには活用することも考えられるでしょう。

著者
石川和幸(経営コンサルタント)
2014年10月末現在の法令等に基づいています。