ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

需要予測システムは、統計的需要予測を行なう
高度な統計モデルが必要かどうかを検証することが大切

需要予測システムの機能

「需要予測システム」は、販売や出荷の予測を行なうシステムです。主要な機能は、販売(出荷)実績にもとづき、統計モデルによる統計予測を行ないます。

統計予測を使うにあたっては、実績の異常値を排除する機能が必要です。実績値には、ビジネス上で生じた突発的な需要や異常値、偶然による異常値があるので、これを排除しないと、おかしな予測になる可能性があるからです。しかし、実際は異常値がシステム上で排除できず、データを読み込む前に加工する必要がある「需要予測パッケージ」もあります。統計モデルも複数搭載されています。パッケージシステムがカバーする統計モデルは、簡易なものから複雑なものまで、さまざまです。

また、統計予測だけでは不十分で、予測後、人為的に数字を補正する必要性が生じます。マーケティングなどのビジネス活動にともない、拡販が起きたり、あるいは人為的に出荷止めが起きたりする可能性があり、こうした特殊需要を反映する機能がほしいのです。
統計モデルの選択に関しては、自動でパッケージシステムが選択してくれるものと、人間が選択し、パラメーター調整まで行なう必要があるものもあります。どちらが優れているとはいえませんが、モデリングで楽をしたいのであれば、統計モデルの自動選択機能が便利です。

また、統計モデルが使えない予測の場合は、人的予測になります。この人的予測の入力を一切受けつけないパッケージシステムもあれば、人的予測が入力でき、統計予測と同じレベルで「見える化」できるパッケージシステムもあります。
統計モデル自体も、メンテナンスが容易でなければなりません。いつまでも同じ統計式で、現実に合わなくなって使わなくなる例が多いからです。

需要予測システムとして販売されているパッケージシステムはかなり多くあります。しかし、当然、スタンドアロンでそのまま使うことは困難で、データを受け渡すインターフェースの開発が必要です。

統計解析システムの利用

需要予測システムとして販売されていない統計解析システムを、需要予測システムとして援用する例もあります。ただし、統計解析ソフトは当然、統計解析用なので、需要予測システムとして使うためには追加開発が必要になります。

簡易な予測なら表計算ソフトでも十分できる

簡易な予測モデルであれば、表計算ソフトでも十分対応できます。実際に、多くの企業では表計算ソフトで需要予測を行なっています。表計算ソフトのよい点は、安価で、ユーザーが自由にいじれるところです。手軽さという意味で表計算ソフトには利点があります。しかし、フォーマットのメンテナンスにムダに工数がかかったり、予測業務がブラックボックス化して業務品質が維持できなくなったりするリスクもあります。

需要予測システムの注意点

在庫管理の実務で必要とされる需要予測システムに、あまり高度な統計モデルを使うかどうかは議論が必要です。あまり高度な統計モデルを使うと、予測結果が解釈できず、統計モデルの維持や運用も大変になります。
本当に自社の需要予測業務に高度な統計モデルが必要か、運用し続けていけるのか、きちんと検証が必要です。

需要予測はあたらないと思っていたほうが無難

「予測精度さえ上がればすべてうまくいく」という人がまれにいますが、神様でもないかぎり予測が100%あたることはありません。100%“予測あて”に走ると不毛な作業になりかねません。前述のように、それよりも、予測が外れたときに備えて、俊敏な対応力をつけるほうが先決です。

著者
石川和幸(経営コンサルタント)
2014年10月末現在の法令等に基づいています。