ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

PSI分析:需要と供給のバランスを見る
在庫のマネジメントとコントロールに不可欠

PSIバランスを「見える化」する

管理指標として、期間を区切って測定するのではなく、長い期間の変動を「見える化」して管理する方法の1つが、PSIバランスの「見える化」です。

この方法は、仕販在計画と実績、生販在計画と実績をグラフの形で「見える化」します。販売と仕入れ・生産と在庫を関連づけて、時間軸に沿って見ることができる点で、PSIバランスの「見える化」は優れています。

しかし、PSIバランスを「見える化」していない企業が多く、販売や生産が分断して管理されており、PSIバランスを見ながら先読みして手を打つことが困難になっています。
私は、プロジェクトのスタート時点で、PSIバランスを確認するようにしますが、こうした組織横断で実績情報と未来の計画情報を時系列で把握している企業の少なさに驚きます。PSIバランスなど見たことがないという企業が多いのです。

しかし、PSIバランスを見ないで、どうやって未来の販売見込みや在庫見込みをチェックするのでしょうか。足の長い原料や部品を購入する際に、販売の見込みや滞留のリスクをどうやって判断しているのでしょう。
結局、いままでの多くの日本企業は、現場の個人個人のオペレーションに依存した業務を営んでいただけで、ものを扱う企業であるにもかかわらず、もののマネジメントができる体制ではなかったのです。ややかげりがみえていますが、世界中の市場を席巻しているあるグローバル企業グループの元役員に、次のようなことを言われたことがあります。

「我々は、日本企業の弱点を3つ突き止め、そこを徹底的に突きました。その1つがサプライチェーンマネジメントです。日本企業はサプライチェーンマネジメントがまったくできていません」
この言葉は私の印象とそのまま同じです。日本企業は、ほとんどマネジメントの枠組みとしてのサプライチェーンマネジメントはできていません。世界中の在庫をコントロールし、売上を最大化すると同時に在庫を極小化する努力は、マネジメントの対象ではなくなってしまっているのです。

ものを扱う流通業や製造業で、もののマネジメントとコントロールがぜい弱では、早晩市場から退場する事態に陥るでしょう。
サプライチェーンマネジメントは、未来のリスクを読んで、収益を最大化し、資産効率を最大化する仕組みです。PSIバランスを見ず、計画と実績差異や未来の見込みが見合わないなかで、日本企業はいったい何を意思決定しているのでしょう。

今日明日の製造指示と発注だけを決めているとするなら、あまりにも短期志向で処理的なレベルにとどまってしまいます。
PSIバランスの見える化は必須です。

入庫-出庫分析:在庫が滞留しているかを「見える化」する

PSIバランスに近い見える化ですが、入庫タイミング・数量と出庫タイミング・数量を関連づけ、滞留期間を「見える化」する手法が「入庫-出庫分析」です。

入庫-出庫の数量差異と入庫タイミングのずれの面積部分が、滞留を表現しています。この面積を小さくするほど、入庫と出庫が同期していることになり、うまく在庫が転がっていることになります。

累積販売計画変動履歴

累積販売計画履歴を見ることで、今後の販売の予測ができます。たとえば、累積グラフが下降傾向であれば、今後の生産や部品・原料調達への影響を予測でき、最悪、打ち切るなどのリスクも読むことができます。
累積販売計画変動履歴は、顧客が提示した内示と同じように累積変動履歴にすると、顧客の内示のリスクも読むことができます。

著者
石川和幸(経営コンサルタント)
2014年10月末現在の法令等に基づいています。