ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

設計段階と購買段階でのVA/VE
在庫単価だけでなく、付帯費用の増減にも目を配る

設計段階のVA/VEが長く原価を決める

自社で製造する製品の単価を下げる方法はさまざまありますが、最も効果が大きいのは「設計段階で原価低減を織り込むこと」です。

製造原価の8割、もしくは9割は設計段階で決まるといわれます。これは、設計段階で原材料費や人件費、経費が決まってしまうということを意味しています。
原材料費でいえば、製造に使う原材料や部品が設計段階で決まることにより、原材料単価が決まってしまうのです。高価な原料、部品を使うことにしてしまえば、製造が続く間、高い原材料費が確定してしまいます。
人件費や経費も同様です。たとえば、複雑な製造工程を経ないとできないものとして設計すれば、加工費もかかり、特殊設備の設備費や、その他管理費も必要になります。

また、加工を複雑にし、いくつもの工程を経ないとできないような設計をしてしまうと、長い工程が必要になり、それだけ加工費がかかります。
複雑な工程、長い工程を設計段階で承認してしまうと、製造が続く間、高い加工費と経費が確定してしまうのです。
したがって、設計初期の段階からいかに安い原材料を使うかを意識し、設計段階で原材料を選定するときに、VA(Value Analysis)またはVE(Value Engineering)という手法を使い、同じ機能であれば安価な原料や部品を選ぶようにします。部品の共通化も効果があります。

また、部品設計、製品設計、製造設計(工程設計)の各段階で原価低減を視野に入れ、デザインレビューでゲートを設けながらコストダウンを永続化することが必要です。

量産後も購買段階のVA/VEで原価を下げる

設計段階で原価の大部分は決まりますが、量産段階でも使われている原料や部品を見直すことでコストダウンが可能です。量産段階でVA/VEを行ない、代替品を探し、原価を下げていくのです。

ただし、やみくもに安価な原材料や部品を選び、かえって製造がむずかしくなってコストが上がるような事態は避けなければなりません。製造設計との関連で、製造コストが上がらないように気をつけながら、より安価な代替品に切り替えていくことが必要です。

また、安価だからといって単純に切り替えると、切り替え前の在庫が残って廃棄になったり、切り替えまで旧品を使い、使い切ってから切り替えるなど、消化切り替え管理が必要になったり、顧客に原材料や包装材等の切り替え案内を出したりと、かえってコストがかかることもあります。
在庫単価が安くなるからといって、在庫単価だけに目を奪われず、付帯費用の増減にも目を配ってコストダウンをしなければ、在庫単価低減がムダになりかねないので、注意が必要です。

著者
石川和幸(経営コンサルタント)
2014年10月末現在の法令等に基づいています。